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ぼっちを極めた結果、どんな攻撃からもぼっちです。  作者: ウィザード・T
第六章 同級生の恐怖(第一部最終章)
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ミワもイトウも

「上田!お前なぜあんな男に味方した!」

「お前こそなんであんな女に味方したんだよ!」




 まあとにかく急に獲物を見つけた犬のように飛び付いて来た遠藤に対し、俺は剣をしまいながら構えを取る。

 遠藤の怪力で剣を壊されたくはないからだが、せっかく作ってくれたり送ってくれたりした小手や鎧についてはあきらめが付いてしまう辺り、やっぱりどこか俺もチート異能に毒されているのかもしれない。


「お前なめてるのかよ!」

「この前だってそうしただろ、同じ手を使って何が悪い!」

「今の俺は違うんだよ!」


 頭巾を付けたり、仮面をかぶったり、剣を変えたり。

 それだけで強くなれるんなら誰も苦労しない。あくまでも装備は装備であり、本人が強くならなきゃしょうがないはずだ。


「今日と言う今日は、お前の目を覚ましてやる!この世界のすべてを変えてやるための仲間となれ!」

「お前は世界征服でもする気か!?」

「人がそんな大それたことをするとでも思ってるのかよこのバカ!」

「思ってるよ、って言うか俺の名前はバカじゃなくて上田裕一だ!」


 相変わらずものすごい気を放つ剣をぼっチート異能に任せて避けながら、俺はした事もないボクシングの構えを取る。

 一気に突っ込み、右手の拳を突き出す。




「きゃあ!」

「うわっと!」




 結果はと言うと、遠藤には避けられたもののトロベとばかり打ち合って俺の方を見ていなかったミワの顔面にヒットした。


 帽子が空を舞い、やけに都合よく大川の顔に飛び込んで行った。


「あのさー、前ばっかり見てるからさー」

「殴るだなんてひどいです……絶対に許さないのです!」

「お前が先に手を出したんだろうが!」

「覚悟するのです!」

「トロベに殺意がない事をありがたく思えよ!」


 ミワもミワで、完全な逆ギレで俺の方に襲い掛かって来た。

 ったくトロベを後ろに回して戦おうだなんて無謀極まる奴だよ、こんな白魔導士がどこにいるんだか……!


「私の望みはお前のやり場のない感情を静める事にある、決して命のやり取りをする事ではない!」

「あんな程度で恩を売ったと思わない事です、私はどうしてもあなたを倒して名を挙げたいのです!」

「功績を挙げれば名など勝手に付いて来る!功績に見合わぬ名は重荷でしかないぞ!」

「さかしら気な物言いをやめるのです!」


 と思いきや、ミワは正面の俺に当たりながらトロベの槍をまるで俺がそうするかのようにかわしまくっている。トロベが逆手に握って柄の方をぶつけようとして手加減しているにしても、白魔導士とは思えないほどの身のこなしだ。


 そしてその度に指輪が嫌らしいぐらい光りまくる。ああ目に毒だ!


「遠藤、異常だと思わないのかこの光景を!」

「俺がこんなに剣を振ってるのに素手で接近してくるお前に言われる筋合いはない!」

「それが俺にくっついた力だよ!お前の怪力と同じな!本当に異常なのはミワって女の挙動だよ、これはあきらかに人体の限界をオーバーしているぞ!」


 幼そうに見えて実はとんでもない能力者とかいうパターンは定番の一つかもしれないが、だとしてもここまで鍛え上げるにはどうすればいいのかわからない。

(もう少し達観してるもんだろ、まともな修験者なら!)

 実は何百歳と生きていてその間ずーっと修練を積んでいたとか言うパターンもなくはないが、そんな人間が目の前の功績に普通こんなに飛び付くだろうか。



「大体の問題としてだ、市村がさっき言ったように俺たちはお前を捕らえてギルドに突き出す理由がある。それをしないのはクラスメイトだからだ、無事に元の世界に帰りたいだけだからだ!」

「何を言うか、俺は知ってるんだぞ、お前こそ賞金首だろ」

「いつの話だ」

「エスタの大親分様に届ければ相当な大金が入ると言うな、もちろん俺はそんな連中ひざを折る気なんかないが」

「お前の情報はいつからアップデートされてないんだ」


 あの後リオンさんからの情報で、俺を賞金首に祀り上げたのはやっぱりダインだって事がわかっている。

 そのダインはもう死んでいるし、下手な事をすればリオンさんに遠藤が殺される。




「あのさー、俺も正直こいつの恩があるからあんたに味方してるけどさー、エンドー、お前さん素直に謝って見逃してもらうべきじゃねえかなあ」

「イトウ!」


 そして三人目の相手のイトウって人はって言うと、自分の背中に風魔法を使って速度を上げて市村と赤井の攻撃をすり抜け、そして風魔法を二人にぶつけている。


 風の刃とかじゃなく純粋な竜巻で、その度に砂塵が舞い上がって視界が悪くなる。まあやっぱり指輪が光りまくっているからイトウさんの姿は見えるけど、それでもやっぱり強い事に変わりはねえ。



「恩を仇で返すは愚の極み、されど恩人の愚を咎めぬもまた愚なり。恩人がもしその恩を貸与物と考えるのであれば、借用と言う自負を負う必要はなし」

「こんな時でも聖書の一節かよ……ったくこれだから坊さんってのはね……」

「あなたも白魔導士の相方であれば聖書の一節や二節そらんじられる様になっているか確認すべきであります」

「実にきれいなご一説だね。だが世の中そんな簡単には行かないもんだよ、わかるかなぁ、わかんねえだろうなあ……」


 そんな中でも「聖書の一節」をそらんじて説き伏せようとする辺り、本当赤井はぶれねえよなあ。


「遠藤、今のを聞いてたか!」

「何をだ!」

「もちろん赤井の話だ!」

「何が何の愚の極みだよ!」




 っておい遠藤、イトウじゃなくてお前に言われたようにしか俺には聞こえなかったんだが……こいつはもう一体何をしたいんだよ……。

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