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ぼっちを極めた結果、どんな攻撃からもぼっちです。  作者: ウィザード・T
第六章 同級生の恐怖(第一部最終章)
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なんでと言われても!

「いずれにせよ、その盗賊団はこのサンタンセンの町の南に巣食っているという訳だな、なんとか壊滅できないのか」

「だから、ウエダ殿はせっかちすぎる。オユキ殿が負傷し、セブンスもあまり動けない状態、こちらの戦力はそれほど多くはない。ああ無論我々だけでどうこうする訳でもないが、まずはオユキ殿を襲った相手を探すのが最優先だろう」


 トロベは俺に合わせるかのように水を口に含み、ゆっくりと飲み干す。

 その間市村は沈黙を保ち、大川は肩を回し、赤井は聖書を握っていた。

 

「シンミ王国は強い力を持っていたであります。ペルエ市との山道での山賊はおりましたが、ペルエ市は基本的によく治まっていたであります。ゆえに余裕が生まれ、私たちのような見知らぬ存在を受け入れてくれたと考えられるであります」

「アカイ殿、なぜそう考える?」

「第一にエスタ、いやクチカケにも教会の類の施設はなかったであります。エスタもクチカケもぱっと見神の救済を求める人間が多かったようでありますが、その救済を整える体制がなくては……」

「かもしれんな」

「しかしクチカケ村では強引なほどの採掘に勤しませた村長が支持を集め、エスタではマフィア一党と言うべき人間同士の争いに巻き込まれ、そのマフィアたちの勝者が町を治めている状態であり、神の入る隙間はなかった……」

「それもまた現実だな……アカイ殿が言うマフィアとやらの長など、ひとつ間違えずともただの盗賊だろう」


 赤井が言うにはRPGの勇者様は人様の家のタンスでもツボでも漁りまくって中身を頂戴するもんらしいけど、それこそまさしく盗賊じゃねえか。

 それで勇者様とか言いながら時には逃げる事もある。敵を放置する事もある。そりゃ何でもかんでもってのはいかがなものかってご意見もあるよ、でも魔王を討伐するために戦う勇者様が敵に後ろを見せるのは正直カッコ悪いお話だ。


 で、目の前にあるそういう世界では、リオンって言うヤクザの親分様が町を取り仕切る事になったし、それに俺たちも味方したし。




「まあとにかくそういう理由だからハチムラ商会は多数の護衛兵を抱え込んでいるし、そのせいで物価が値上がりしているらしい」

「護衛を抱え込めば人が要る、人件費が要る、それを補うためにどこに行くか」


 単純に個人的に危険なだけじゃなく、経済にそうやって打撃を与えると言う意味で盗賊ってのは厄介だ。


「その盗賊がオユキを襲ったってのか?」

「その可能性はあまりないだろう。このナイフはかなりの上物で、生中な人間が作れる物じゃない。それこそ王侯貴族が抱える鍛冶師レベルの腕前が必要だ」

「しかしそんな人間がこんな悪趣味な絵を掘るか」

「兵器と割り切ればあり得る。まああえてこんなデザインの武器を持つ人間ってのは、一流か三流かのどちらかでしかない」

「ハハハハ」


 市村の笑い声が、場を温める。


 確かに自分の仕事ってのが人殺しだと割り切ってるような一流か、それともただのかっこつけの三流しか持たないだろうなこんなデザイン。

 問題なのは今回間違いなく前者だって事だが、とにかくだとするとそれはそれで頭が痛い。


「盗賊と違う第三の敵がいるって事か……」

「本当、おしゃれも楽しみたいなってオユキが言ってたわ」

「オユキ殿は治療が優先だろう。しかしアカイ殿、まだ傷は治り切っていないのか」

「もちろん魔法は使いましたでありますが、これでも治らないとなると正直傷とは別物のそれの可能性があるかと。とにかくこのナイフの成分をも調べてみる必要があると思われるであります。ああ毒は入っていないようでありますが」


 仲間の敵討ちでもないが、一体誰がなぜこんな真似をしたのか。それを問う機会ぐらいはもらってもいいはずだ。


「とにかくこの短剣は俺が預かる。とりあえずはしばらく気を付けろ」

「了解だ!」




 俺たちは短剣をしまってオユキをセブンスに任せ、宿屋のドアを開けた。




 繊維の町にふさわしい麻や綿花の畑に、桑畑もある。




「きれいだよな、畑を見てる分には」

「そうじゃな、畑だけならな……」




 そんな中で牧場をやっているじいさんが嘆くように、畑だけならばきれいな町だ。


 まあそんで、その畑の製品を加工する工房があるのはまあいいし、それから染料を作っているだろう工房があるのもいい。





「本当なら王侯貴族様のためにあの場所が使われるんじゃがな……しかし現在では冒険者ギルドと言う名の半軍事施設が鎮座しててな……ああ別に冒険者を嫌っとるわけではないのじゃが、ないのじゃがな……」




 よくないのは、やたら悪目立ちしている冒険者ギルドだ。


 緑色と茶色の町に全然似合ってない、真っ赤で毒々しい色の建物。やけに馬鹿でかいその円形の建造物には、見るからにそれっぽい連中が集まっている。


 じいさんも無理矢理に嫌悪感を抑えてる感じで、本当につらそうな顔をしてやがる。


 


「あの連中の中には盗賊を倒してひと花上げてやろうと言う輩が多くてな……わしらから見ると実に短絡的な連中よ」

「それは……」

「ああ言っておくがお主らは違う。お主らはきちんと礼節を守っておる。そこにトロベ殿とか言う騎士様がいるのじゃからな」


 名指しされたトロベは、何も言わないで俺の肩に手を置く。実にゆっくりと、かつ実に冷静な手付きだ。

 安心して後ろを向こうとすると手を素早く引っ込め、俺の視界ににやつく赤井の顔を入り込ませる。


「セブンスには申し訳ないがな」

「セブンスはあれで主張が激しいからね、オユキだってトロベに負けじとまた何か考えてるんじゃない?」

「なんだよそれ」


 トロベも大川も、俺の顔と赤井の後頭部を見ながら笑う。


 本当、どうして俺を前にしてこんな笑顔になれるんだろう。こんな事をするのは今までの人生で河野しかいなかったのに……。







「ぎゃあ!」

「なんだこれ!」


 とか考えてたらいきなり牧草が伸び出し、俺の視界を塞いだ。


 おじいさんが腰を抜かすと共に、俺も声を上げながらとっさに剣に手をかけていた。




「なんで避けるかなぁ!」

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