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河野の「めっ!」

「フフ、ククク……ああ、とにかく、残る、ワーマンを倒さねば、それであと……ハハハ……」

「五十ほどのはずです」


 笑いを必死にこらえるトロベの方を見ないようにしながら、俺はややこしいお貴族様に背を向けた。

 ワーマンをいけにえにして話から逃げて来たけど、正直関わらない方がいい人種だよあれは……。


「おいお前、その白い女は何だ」

「何だとは何ですか」

「あまりにも不自然な肌の色なんでな、人間にはとても思えんのでな」

「私は雪女のオユキだよ!ってちょっと!」



「落ち着け、むやみやたらに目に付く物を斬るのが騎士のやる事か!」

「邪魔をするなそこのパラディン!」


 何せ雪女ってのがこの世界でも妖怪、と言うか魔物・怪物の類として認識されてるからと言って、いきなり斬りかかるんだからな。


 しかも「誰」じゃなく「何」と来た。人間扱いしてねえよ、まあ実際に人間じゃねえけどさ……でも銀髪で、真っ白な手足で、白いワンピース。氷の力がなければただの人畜無害なダジャレ大好きギャルじゃないか。

 ああトロベを見る限り人畜無害ってのはちょっと待ってもらいたいが、いずれにせよその力でどうこうしているとかは別にない。


 今だってあくまでもシギョナツの村の住人を脅かすワーマンをその氷の力でやっつけただけだ、ああそれからあの花の種を蒔きまくっていた坊やも。市村がオユキの前に立って剣で槍を受け止めたのは当たり前だ。


「なああんた、結局何がしたいんだよ」

「話を聞いてないのか!?兄としてだな、妹を守ろうとしているだけだ!」

「守りたいんならまずワーマンを片付けろ!」

「まず、まずそうだな!だがその後には貴様ら妹に張り付く害虫を」

「ユーイチ殿を害虫とは……、兄上は一体……クク……何を食べたのだ?」



 肝心要のはずの妹からもこの言い草だってのに、もう訳が分からねえ。


 笑いの発作が収まらないうちにここまでボロカス言われれば普通は心が折れるはずだろ、だってのにイツミってお方は市村を力任せに押し込むとあっという間に離れ、そのまま俺に斬りかかって来た。



「トロベ、目を覚ませ!!」



 鏡を見ろと言いたくなるような眼をして、俺に槍を向けて来る。もちろん当たらない。


 当たらないってのに、何かに取り付かれたかのように振りまくる。

 もちろんヘイト・マジックのせいでもあるのだが、だとしてもあまりにも平常心を失っている。


「そんな乱れた槍先で何が斬れるんだよ!」

「お前が斬れる、いやお前など百人いても斬れる!」

「オユキ、氷魔法をかけてくれ、少しこいつの頭を冷やさせろ!」

「ムーリー、加熱しすぎてて私自身が溶けちゃうからー。それよりセブンスと一緒にあのキモい花狩って来るからー」


 オユキも匙を投げて俺を置き去りにしてワーマン狩りに行った、と言うか赤井たちも処置なしと見たのか、俺をほっぽってワーマン狩りに行っちまった。


 そんなぼっちな俺、ああトロベさえも兄に対して、いや兄に対して……愛想を尽かしたのか無言で何の意味もない決闘もどきをやってる俺から離れ、市村やオユキたちの方へと向かった。


 ったく、本当に貧乏くじだよ!


「お前さ、今妹が何やっているのかわかってるのか?」

「勝利を確信したんだろう、私の勝利をな!」

「バカも休み休み言え!トロベだってあきれてるんだよ!」

「そうかそうか、どうしてもトロベを娶りたいか!ならばこの私を」

「だからなんでそうなるんだよ、ああもう面倒くさい!これでしまいにしてやる!」



「めっ!」


 違う国の言葉を話している奴の相手はもううんざりと言う気分で、俺がチート異能任せに飛びかかって剣を振り下ろしてやろうとすると、いきなりお貴族様の体が倒れ込み畑に半分埋まった。



「めっ、ってお前河野……」

「ったくもう、本当に人の話を聞かない子って困るわよねー裕一。ほらほら、そんな危ない物は早く仕舞って帰りましょう、ねえ」

「まだワーマンがいる限りできねえよ、と言うか今まで何やってたんだ河野」

「ちょっとワーマンってのをね。さあさあ、速くそのワーマンってのを狩らなきゃ。ああ裕一は見てるだけでいいから、おねえちゃんと約束だぞ?」


 いつの間にかイツミの位置に立っていた河野は、俺が振り上げた剣をゆっくりと下ろし、そして口元に人差し指を当てて来た。

 その上に十何年前と同じ口上で俺を制したつもりになり、おねえちゃんだなんてたかが数日のアドバンテージを行かして来る。と言うかキスまでしようとしてくる。



「あのさ、実はファーストキッス、大川としたんだけど」

「それいつ?」

「ペルエ市、と言うかナナナカジノの戦いの後」

「なーんだそれってさ、数日前の事じゃない。赤井君が言ってたわよ、裕一もいろいろあったみたいで大変だね。でも私は裕一がこーんな小さかった時に、寝てる隙にもらっちゃったんだから!」


 目の前で自分の胴の当たりに手のひらを置いて、昔話に明け暮れている。

 本当、こいつは十五歳かよ。親戚のおばちゃん、って言うか婆さんだぜ。



「おい何をやっている!」

「ああすんません、今はワーマンを斬らなきゃならないんで!」

「そうじゃない、おいそこの娘!」

「は?」

「コーノとか言ったな、貴様何とも思わんのか!」

「何?」

「貴様のように好いてくれる女もいると言うのになお他の女を囲おうとするやり方!」

「……ごめん、私が止めるわこの人」




 付ける薬がねえってこの事だよな、本当……。

オユキ「その()にめっ!」

上田「いい加減ネタ切れか作者……」

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