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ヘイト・マジックの副作用ですか?

「ユーイチさん」

「セブンス、また頼むよ…………」

「了解しました」


 とにかく面倒くささの極みみたいなお貴族様から逃げ切った俺は、セブンスに昨日に引き続きヘイト・マジックをかけてもらう。




 ああ、次々にワーマンがやって来る。


 お花畑の中に放り込まれ、ムチやら花粉やらが飛んで来る。そしてセブンスはサッと逃げ、市村たちを呼ぶ。


「上田君の力があればあっと言う間、と言いたい所でありますが」

「わかるだろう、数が……」


 しかし見た所三十五、六匹ぐらいしかいない。


 まさか時間差で来るわけでもないだろうが、八十三と言う数からすると明らかに少数だ。


「セブンス」

「どうもおかしいんです確かに……ああいけません、ヘイト・マジックを唱えるために探知魔法を切ってました!」


 魔法の同時使用は無理って事か……まあそんな簡単にも行かないよな。



 まあとりあえずこの連中だけでも片しておくかと思い俺も剣を振っていると、すぐさま固い何かの感触を得た。


「兄上……!」

「お前はやっていい事とよくない事の区別も付かないのか……!?それ以上の無礼にはこの槍をもって報いねばなるまい!」

「魔物と同じことをするんじゃねえよ……」


 本当にもうしょうがねえアニキだ。


 魔物に斬りかかれよ、魔物を倒せよ。


「ったく、誰も彼も生意気に強そうなやつだ!おいトロベ、何だその目線は!」

「魔物に対する目線だが」

「嘘吐け、お前は見てるんだよ、あいつをな!」


 一匹また一匹とワーマンが塵になって行く中、トロベの視線についてさえイツミは干渉してくる。


 どこを向こうが勝手だろ、と言うかこの戦闘の最中に敵以外に視線を向ける必要ってあるのか?


 まあそんなのを無視して俺が猪突して来たワーマンを二匹ほど刈り取ると、イツミが分厚い槍で殴りかかって来た。

「四対二だぞ……」

 何の関係もない数字をつぶやいて、真っ白な目でこっちをにらみつけている。


「あのさ、こちとらこのワーマンを全滅させるのが最優先なんだよ、話なら全てが終わってからにしてくれる?」

「黙れ、貴様のようなどこの馬の骨ともわからん奴にトロベを持って行かれる訳に行くか!」

「だから俺はあくまでも修行仲間であり!」

「ああそうかわかった!じゃあこの手でトロベの迷いを断ち切ってやるよ、お前のような奴と一緒にいても修行になんぞならんとな!」




 ヘイト・マジックの副作用でもないだろうが、イツミはものすごい勢いで迫って来る。

 市村や赤井、オユキやトロベがワーマンを斬りまくる中、俺をまるでワーマンかのように斬り込んで来る。なんなんだこの気迫は。


「兄上、そのような事をする暇はない、今はまずこのワーマンを!と言うか村人の危機を無視して己が意志にかまけるその姿、はっきり言って醜悪だぞ!」

「何だと!私は兄としてだな、妹が道をたがえたのを!」

「父上は認めてくれたであろう!まさか父上に抗うのか!」

「長兄が許さぬのだ、お前だって知っているだろう!」

「上の兄は武勇の人だ、私が弱いと見たから認めなかったのだろう。だが今の私は強い」


 お貴族様の家庭事情ってもよくわからないが、まあ日本だって戦国乱世、と言うかほんの五十年ぐらい前まではある程度婚姻相手は限られるもんだった。

 もし仮にトロベが本物の血を引くお貴族様だとして、あるいは下手すりゃ生まれた時からそう言う存在がいたのかもしれねえ。でも仮にそんな血がなくとも槍を取っているだけで十分にお貴族様足りえる気品を見せまくっている彼女に合うような男ってのは、相当な人物じゃないと無理だろうな。



「とりあえず最後の一匹であります!」


 ああその間にも赤井の杖によりワーマンが殴り倒され、とりあえずは全滅となった訳でありますが、それでもなおイツミだけは手を止めておりません!ああ、まったく!




「兄上!こんな戦いに何の意味があるのです!

「やかましい、お前は黙って兄の言う事を聞け!」

「だから兄上、彼には攻撃は当たらぬのだ!」

「何だと、そんなふざけた話があるのか!」

「見ていなかったのか兄上、あれほどのワーマンに囲まれておきながら無傷のユーイチ殿を!」

「たまたまだ!そんな程度の腕自慢お前は山と見て来ただろうが!」

「ユーイチ殿はそれを自慢としない。あくまでも自分の力ではないと認めている、それがいいのだ!そしてその友人たちもな!」




 友人、か……俺にはそんなもんいなかったが、トロベにもいなかったのかもしれねえ。


 貴族ってのはややこしい権力争いとかあるってのは日本史の平安時代の授業でも学んだし、この世界でもきっと同じなんだろう。

 下手に友情を結んだところで、余計に別れが悲しくなったり利用されたりするのかもしれねえ。

 

「よかったー、ユーイチが唯一ゆういちの友人じゃなくってー」

「ほら見ろ、兄上……かような、ハハハ、楽しいいや、訓練してく……アハハハハハ!」

「その弱点を修行してどう補う気だ……?」




 まあ、普段はあんなに引き締まっているのにダジャレ一発でこうなるんだから、それはそれで友人はできそうなもんだけどな……。

オユキ「ユウジ君の友人(ユウジン)囚人(シュウジン)?」

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