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ヘイト・マジックの弱点?

「めんどくさいなあ、さっさとお花ちゃんたちにやられちゃえばいいのに~。ああ、魔王様に謝ってもいいけど~」

「バカも休み休み言え!」


 種を振りまくリダンに向けて真正面から振り下ろしているのに当たらない。まるでCGでも斬ってるみたいだ。


(魔物まで回避チートがあるのか……?まさか、こんな力そうそう持ってる訳ねえだろ)


 あるいはこれまで俺と戦って来た敵もそうだったのかもしれない。


 いっそ大きく外れるとか弾き返されるとかなら諦めも付くが、当たっているはずなのに、当たりそうなのにとなるといら立ちはつのりまくる。


「この野郎!」

「どうしたの、作戦変更~?」

「オユキ!吹雪でこいつを包んでくれ!」

「了解だよ~!」



 オユキの声と共に、筒となった吹雪が発生する。決して寒くないはずのシギョナツの農村に吹き荒れる筒状の吹雪。実にシュールな構図だ。


「そんなんでどうやって勝つ気~?ボクちゃんわっかんな~い」

「勘だけどな、お前たぶん弱いだろ」

「へぇー、ほー、ふーん、はぁ……どうしてそう思うの?」


 魔力がどれだかあるのかはわからねえけど、大した武器も持ってねえしその回避能力をたのみに向かって来る様子もなく、すがすがしいほどのお花ちゃん頼みだ。


 ならばそれをぶっ壊してやるまでだった。


「この吹雪はね、触れると凍るよ」

「触れないよーだ!」

「お前は触れないだろうけどな、お前はな」


 吹雪から弾かれて俺の足元に転がった緑色の粒を、思いっきり踏み潰した。


 薄赤い汁がにじみ出し、茶色い土に溶けて消えて行く。


「どうせ種は制限があるんだろ?お前が凍らなくとも種が凍っちまえばワーマンとやらも全滅だ」



 その後も次々とこぼれた緑色の氷————吹雪に包まれたワーマンの種を、俺は踏み潰して行く。

 何個か転がっている奴もあるが、いずれにせよこのまま芽を出す事はないだろう。




「ちょっとはやるんだね~」

「わかったら全部投げ付けて帰れ」

「やだよ~ここまでおいで~」




 わかっちゃいたよ、ああわかっちゃいたとも!




 リダンは俺たちを煽ると、はるか上空にまで飛びやがった。オユキをふくめ空を飛べる奴なんかいるわきゃない。吹雪の柱も、高く伸ばせはしない。


「オユキ、この種を凍らせて無効化させるバリアとか張れないか」

「魔力がマイナスになっちゃうよ!」

「そうだよな、ロキシーみたいにはなりたくねえよな……」

「ロキシー?」

「ああ、魔法を使い過ぎて魔力の最大値がマイナスになっちゃったオバサン………………」


 魔力がマイナスになるって事は、それこそ未来永劫魔法が使えなくなるって事だ、それこそ魔導士にとっては文字通りの詰みでしかないだろう。その事がよくわかってるからオユキだって言葉を濁したんだろう……

「っておい、何ダジャレ考えてるんだ」

「大丈夫だって、あいつをやっつけるまで言わないから~」

「……楽しみに待つ」

 ……とか一瞬思った自分を返してくれ、大川。







「へへーんだ、悔しかったらここまでおいで~」

「うるせえなこのガキ!」


 で、んな事やってる間にリダンははるか上空から煽って来る。

 ああ、オユキにはただまあそうだねーで終わるがこいつは許せねえ!




「ボクちゃんの目的はお前たちを倒す事じゃないもーん、ワーマンに倒させる事だもーん」

「何にも違わねえだろ!」

「大違いだよ、なーんでこんな簡単な事がわからないのかなぁ?」

「自らの手を汚してこそ戦いだろうが」

「あーそーかい、はいはいゴリッパゴリッパ~あーどーもありがとー、またやっちゃうよ~」


 オユキが吹雪を引っ込めたことを確認してか、上空か何かを投げて来た。




「おそらくはワーマンの種!このままでは!」

「セブンス、あれを頼む」

「わかりました!」



 セブンスが魔力を込めた手で俺の背中に手を触れ、直に叩き込む。




 そう、ヘイト・マジックを。




「ふふーん、ボクちゃんを怒らせちゃったね~!」


 弾ではなく魔力を叩き込まれるや、凄まじい速さでリダンが降りて来た。

 風圧で種が転がって来たので、ちょっとだけ踏み潰しておく。


 そんでさっきまでよりは見られる顔になって、俺らの前に右手の小指と薬指を突き付けて来た。



「まあな、これ以上この村を荒らすんなら、本気で死んでもらうから」

「ボクちゃんだってね、お前を本気で殺したくなったよ。じゃあボクちゃんの本気を見せてあげようかな~!」


 リダンが両手のひらを地面に向けると共に、種しかなかったはずの所から一挙にたくさんのワーマンが現れた。


「ワーマンたち、やっちゃえ!」


 増えまくったワーマンが俺に向かって来る。案外足が速い。


「さあ来い!」

「さていつまで耐えられるかな~と言うかずいぶんと痛めつけてくれたね!」

「お前自身で勝負しろよ!」

「やーだね、ボクちゃんの本気ってこれなんだもーん」




 リダンは俺の方を向く視線が茶化すような眼から本気の眼に変わったものの、後は相変わらず種を蒔きまくっている。


「ったくさっき相当な数の種がやられちゃったからね、ここでとどめを刺してやれ!」

「やらせるかよ!」



 俺はいつものように剣を振り、ワーマンを斬りに行く。

 剣がいいのか、敵がザコなのか、一撃で斬れて消えた。だが数はかなり多い。


「この前と同じように!」

「了解!」

「ユーイチ殿!」

「トロベさんもよろしくお願いします!」



 リーダー気取りになり、トロベさんを含めキメ顔を気取ってみたはいいが、肝心要のリダン、数十メートル先にしかいないはずのリダンの姿が見えないのは腹立たしい。


 って言うか何だこいつら、あらためてうねうねして気持ち悪い。きれいなはずの花の色も、茎の緑色も、ただただ目の毒だ。


 斬っても斬っても、なかなか敵が見えて来そうにねえし、突っ込もうにも、この数じゃ無理がある。


「どうしたの~?もっともっと、ボクちゃんはワーマンを増やせるよー」



 リダンはさっきと同じように人を煽りながらも、自分なりに必死になってワーマンを増やそうとしてやがる。


 どうもヘイト・マジックって、敵意があったとしても自ら向かって来ない奴には効きにくいのかもしれねえ……。

オユキ「マジック(まあじっく)も、まあじっくり使わないと……」

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