表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
100/631

三田川エリカの無双 その3

外伝最終話です。

 まあ、剣崎寿一ってのは元から剣道部の部員で、それこそ剣道を何よりも楽しむような男だった。

 それこそあのウドの大木女が柔道一筋になるのと同じ方向で剣道大好きで、休みでさえも道場に通ったり素振りをしたりするような奴だった。


 あのニート予備軍(赤井勇人)に言わせれば昭和の男だとかなるけど、私に言わせれば昭和どころか明治慶応、いや元亀天正の男よ。







「ずいぶん楽しそうね、そんな剣なんか持っちゃって」

「あんた強そうだな、俺と勝負したいのか?」

「勝負?まあね、勝ったらひとつだけ言う事聞いてもらおうかしら?二人っきりでしばらく会うって言うね」

「おいおい。じゃあ負けたらどうする気だ?」

「これ全部あげるから、ああ勝手に拾わないでね」


 剣崎に向かって、袋の中身を全部ぶちまけてやる。


 金貨ばかり五〇〇枚、それこそおよそ一〇〇〇〇〇〇〇〇円、つまり一億円。


 まあ全財産の数分の一に過ぎないけど、それでも庶民からすれば一生モノの大金よね。


「なんだ、俺のが圧倒的に得じゃねえか、でお前の名前は」

「サンタセンよ」

「よしサンタセン、勝負、勝負だ!」


 本当にいちいちちょろいんだから。っつーかやけに長い刀をこんな建物で振りかざそうだなんて、本当に常識がないわね。

 たったひと月で何もかも常識を忘れちゃった訳でもあるまいし、本当これだから嫌ね。







 まあとにかくそれに対しては無言で背を向けて外に出る事により答えを示してやったけど、実際疲れるわバカの相手って。



「腕力には自信があるみたいだがな、それだけで勝てるかな!」

「さっき何か聞こえなかったの?」

「何の事だか、とにかく行くぜ!」


 さっき何とか抑え込んだはずなのにずいぶん派手に地面を焦がしちゃって、その焼け跡がまだ残ってるのに全然気にしてない。人生楽しそうで何よりね……。




 まあ、面倒くさいからとっとと終わらせるけど。ギャラリーの前で派手にやるのもいいと思ったけど、それほど余裕もないしね。




 と言う訳で大地魔法を使い、岩の拳を作ってやった。




「はっ……?」


 私の生み出した岩の拳のスピードにも力にも対抗できるすべもなく、何もしないうちに岩の拳によって剣崎は空へと持ち上げられ、足をばたつかせ出した。

 あーあ、みっともないったらありゃしない。


「おいおい、ジュイチさんが!」

「力自慢かと思ったらとんでもない魔術師だったのかよ!」

「もう勝負は付いたと思うけどー」


 子分たちがおろおろしまくる中、剣崎は必死に刀を振って拳を斬りまくってる。


 ったく、そんな攻撃で斬れるわけがないのに、本当に往生際が悪いんだから。



「もうあきらめなっての、ねえ」

「うるさい、まだ勝負は付いてねえぞオラオラァ!」

「ふぁ~い……」 


 面倒くさいけどゆっくりと下ろし、そして拘束を解いてやったってのにまだ向かって来る、力の差は決定的だってのにウザいなあ!


 そういう訳であくびをしながら氷の壁を作ってやった。



 で、正面衝突鼻血ブー。



 ダッサ、マジダサすぎ……。




「じゃあもう勝負は付いたからこれもらってくね」

「へ、へえ……!」


 子分たちを置き去りにして気絶までしたこの男を抱え、少し西へと行く。ったく、いつもこうなら本当に楽なのに……。










「目を覚ましなさいよ」


 適当に治癒魔法を使ってやると、剣崎はようやく目を覚ました。ったく、本当に世話が焼ける!


「おいお前、本当に強いな……!」

「当たり前よ、って言うか気づかないかな普通?」

「見ただけじゃ強弱はわからねえよ、残念だけど」

「そんな事言ってるんじゃないんだけど、ほら」

「いいっ、三田川!?」


 んで、変身魔法を解いて元の三田川恵梨香に戻ってやると、もうあからさまなほど大口を開けた。

 仮にも一学期の間毎日顔を合わせてたのに気づかないもんかしらね、程度が低いわね本当……!


「三田川、お前も苦労してたんだな……」

「一応ね。剣崎こそ」

「俺はもう、剣術の才能をもらったらしくてそれを生かしてバンバンやってたらいつのまにかここまで来ちまってさ、ぶっちゃけ今の生活のが高校生活より楽しいぐらいでさ」




 実に予想通り。


 もし戦国時代だったら一流の足軽(出世はしないわよ)として、江戸時代だったら剣豪として名を上げてたかもしれないってずっと思ってたの。



 私はわかるのよ、人の性質って奴が。この剣崎が好きなのは、相手に勝つ事、特に面だなんてそれこそ相手の頭の上に刀を落とすような物。文字通りの人斬りじゃない。


 胴だって突きだってまた同じ、剣道なんて結局は人斬りをスポーツに落とし込んだだけ。緊張感を味わうとか言うけど、それはルールに守られているからこそ。


(むやみやたらにガッツポーズすると判定を取り消されるとか言うけど、本当はものすごくはしゃぎたい。わかるのよ、それがね……)


 あの女は柔道で勝っても平然としている、心底から平然としているけど、この男は無理。無理をして気持ちを抑え込み、ずっと今まで生きて来た。


 だからね、気の緩んだ下校時に抑えきれなくなったテンションをむき出しにして歩くもんだからすぐわかっちゃうのよ結果が。こんなにわかりやすい男もいないってぐらいバレバレ。




「ねえ剣崎」

「何だよ」

「あなた、他の奴らに目に物見せたいと思わない?」

「他のって……」

「他の連中よ、一年五組の」

「ここにいるのか?」

「いるわよ、私らと同じように黒い頭をして」



 こいつは使える。そんな結論に私が至ったのはまったく自然なお話。



 あのムカつく連中をぶった斬らせればそれだけでも留飲は下がるし、私の力も間接的に証明できる。我ながらナイスアイディアじゃない!




「じゃあね、これをあげるから」

「俺にアクセサリーなんぞ付ける趣味はないぞ」

「強くなるんだけどなー」

「それを先に言え!」


 そういう訳で、私はすぐさまデカい宝石付きの指輪を取り出した。私が付けてるのと同じデザインで、宝石の色だけが違うのを。




「じゃ行くよ」

「……うお、何だこれ!力が湧いて来るぜ!」


 実に分かりやすく震え出し、こっちが指を通しきるのに面倒をかけさせた。

 ったく、使い捨てのザコの分際で手間をかけさせないでよ!



「デメリットは何もないから、自由に使ってね」

「ありがとよ三田川、お前いい奴だな!」

「ああ私から贈られたって事は絶対に秘密ね、いい?」

「おうとも、よしこれでもっと強くなってやるぜ!」

「ああそれからこれも。顔とか見えるとまずいからこの大きな兜もあげる」



 剣崎ジュイチ

 職業:剣士

 HP:150

 MP:0/0

 物理攻撃力:300(デフォルトは150)

 物理防御力:99+40

 魔法防御力:50

 素早さ:100

 使用可能魔法属性:なし




 まあ、強くなったと言ってもザコはザコ。せいぜい、他の連中を消すだけの手駒になってくれれば十分なのよ。


 そんな事と共もつゆ知らず浮かれ上がっちゃって、まったく本当にみんなバカばっかり。ああ早く仮住まいに帰って孤独で打ち震えていたり、この地で震えていたりする弱虫毛虫どもに程度の差ってのを教えてやんなきゃ、ああ忙しい忙しい……!



 ああ、あのモテ男ぐらいは生かしてもいいかあ、もちろん私だけになびく事前提だけど……。

三田川恵梨香の本編の出番はまだ後です。明日からの本編もよろしくお願いします!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ