スミラの鍛治屋!
短編ですが、人気があれば
連載するかもしれません。
「スミラ…来てくれてありがとう」
突然パーティーリーダーに呼び出され、
急いで来てみれば神妙な顔をしたリーダーと
パーティーのみんなが宿屋のテーブルを囲んでいた。
「ヴァース、急に呼び出してどうしたの?」
「あぁ…ちょっと話があってな。
非常に聞きづらいんだが…スミラ、
最近休んだのはいつだ?」
「最近…一月前くらいかな」
「「………」」
「もうひとつ聞く。いつ寝てるんだ?」
「ここ一週間は寝てないかな」
「「「………」」」
その答えにみんなが沈黙する。
「…もういいわぁ!」
沈黙に耐えきれなくなったのか、
パーティーメンバーのドラヴが叫ぶ。
「お前さぁ!どうしてそうも休まねぇんだ!
もうちっとばかし体に気ィ使え!」
「え、だってそんなやわな体してないよ?」
私は吸血鬼だ。昼間は日焼け止めを塗って
魔法を多少使えば日光で死ぬなんてことはない。
夜眠る必要もない、血もちょっとパーティーの
みんなに分けてもらってるからそんなにいらない。
しかも、吸血鬼なんてクラフターに向いていない
という評価を受けている種族にも関わらず
ポーションなどの消耗品の作製や
道具の手入れ、剣などの武器や防具の鍛治仕事を
任せてもらえるだけでも大満足なのだ。
どうしてそんなことを言うのだろうか。
もう一人のパーティーメンバーの
ニャコさんが口を開いた。
「スミー…私たちは心配なんだよ。
いつか体を壊してばったり
倒れちゃうんじゃないかと心配なんだ」
それにヴァースも頷き、
「ニャコの言う通りだ。
お前は身を粉にして働きすぎだ。
そもそも、お前の夢はどうした?
店を持つ夢。パーティーを作った時に
聞かせてくれたじゃないか」
そうだ。私はクラフターとして
店を開きたいと思っていた。
その資金を貯めるため、このパーティーに
加入していた。
「そろそろ金も溜まって来ただろう。
もう店を開いてみたらどうだ?」
どうしたのだろう。みんな、
今日は異様に私に優しい。
みんなはいつも優しいのだが、
いつにも増して優しい。
「そうだけど…それならみんなについて行って
もっと素材を手に入れてからにしたいかな、
まだまだお店を開いた後の商品になる素材が
あんまりないし」
お金に関しては開業資金と内装費、その他諸々の
費用が3ヶ月ほどは赤字でも維持出来る程度のお
金が溜まっている。
しかし、武器や消耗品の素材に関しては
まだまだ足りないので、もう少しはこのパーティーで
やって行こうと思っていたのだが…
「なら俺達が用意して店に運ぶ。
何が欲しいんだ?」
本当にどうしたのだろう、
みんなが優しすぎて怖い。こんな、
パーティーを辞めさせられるような…あ
「もしかして、私もういらない子?」
「「「違う!」」」
みんなが大きな声で否定した。
ではどう言うことだろう。
「俺たちはお前に休んでもらいたいだけだ!
俺たちの為に身を粉にし過ぎてるお前が
夢を叶える手助けをしてぇだけだよ!」
「そうだよ!スミラちゃんいっつも
私たちのことを考えてポーションを
作ってくれたり防具の手入れを
してくれたでしょう!?
いらない子なわけない!」
「そうだ!お前があんまりにも働くから
俺たちは心配なんだ!
お前はもう少し体を労われ!」
みんながこんなに心配している…
私は気の毒になるほど仕事をしていたのだろう。
これは改善しなくては…
「分かった。みんなありがとう!
今日からはもっと休むようにするよ。
でも、もう少しだけ素材は貯めたいから
もうちょっとだけ一緒に冒険していいかな?」
「あぁ、それなら構わない。
…だが最後に一つ聞いていいか?」
なんだろう?
「『もっと休む』とは言ったが、
お前はどのくらいのペースで休むつもりだ?」
「えーと、三日に一回二時間は寝て、
休みは十五日に一回ペース…かな」
「「「もっと休んでいいから!!」」」
「えぇ…」
そんなこんなで、妙に沈んだ雰囲気で始まった
話し合いは幕を閉じたのだった。
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