月への階段
手慰みのようなものです。
また海に来ていた。
寄せては返す波の音を聞き、自然のリズムと同調する。
夜空を眺め、星空に吸い込まれる錯覚に陥る。
あの時ここに来ないことは決めていたのに、また来てしまった。また足が向いてしまった。また帰ってきてしまっていた。
進まなければいけないはずなのに。
あの子は今どこにいるのだろう。彼女もどこかで空を眺めてはいないだろうか。
そんな妄想は徒労にしかなりえず、けれど止むことのないもので。
くるくると回り続ける踊り子のようで。
気付けば月からの光の道が海に映し出されていた。それはかぐや姫の通った月への階段のようだった。
どうしてあの子の手を掴み、止められなかったのだろうか。
どうして、命を懸けてでも守るべきものを手放したのだろうか。
そんな砂浜に足音が一つ近づいてきていた。
有難うございました。