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間違いメール①

ある朝、マホさんがお仕事に行く為にバス停でバスを待っていると、メール着信が。

見ると『来月頭に空いている日はありますか?久しぶりにご飯行きましょう!』


………はて?

マホさんに、食事のお誘いをする人に心当たりはありません。

ましてや久しぶりとか、パート先の同僚以外知人や友人と呼べる人は近辺にはいない、基本ボッチなマホさんです。あり得ません。

アドレスも登録されていないし、見覚えもありません。


間違いメールか。


それにしても、最近では珍しいタイプの間違いです。

大抵の間違いメールは、いわゆる誤爆というか、携帯の電話帳の行間違えだったりするのですが、全く知らない他人からのメール。


そういう間違いを装っての詐欺を働く話を聞いた事もあるし、どうしたモノかと考えているとバスが来るのが見えたので、一旦スマホはバッグの中に放り込みます。

バスや電車の中で座席に座らずに立っている時は、マホさんは基本的にスマホを触りません。

路線の途中から乗るので大抵座席は埋まっており、そうなるとここから先は仕事が終わるまで手にも持たないのです。


ところが、珍しくバス車内が空いていて、座席に座る事が出来たのです。

なので、スマホを取り出して先ほどのメールを開く。


詐欺だとかは冗談として、この人はこのメアドが正しいと思っていて返事を待っているんだろうなぁ…

座れなかったら問答無用で何時間も放置ですが、運良く座れたのです。


待ちぼうけは可哀想かな。間違いだと判れば本人も対処しやすいだろう。

そう考えたマホさん、お返事を送ります。


『どちら様ですか?アドレス間違ってると思います』


名前も書いてなかった為、例えマホさんの知り合いだとしても誰だか判らないのです。

まあ、誰であったとしても、違うよと教えておけばこちらにはもうメールは来ないだろうし。

そんな事を思いながら送信し、スマホもしまって職場に向かう。

仕事中はロッカーに突っ込んでスマホ自体が手元に無い状態なので、マホさんは朝の事などすっかり忘れていました。


………ところが。

『あ、ごめんなさい、真宮です。たっちゃんは元気でしたか?』


真宮って、たっちゃんって、誰?


少々残業をしたので、急いで買い物して帰宅してからスマホを見ると、朝の間違いメールの相手からの返信が仕事中に来ていました。

確かに《どちら様ですか?》とは書いたが、どちらかというと間違っているという方に重点を置いていると取ってもらえるハズである。返信が来ても《間違えました、スミマセン》程度だと思っていたのに、まさかの未だに本来の相手だと思っているような内容。

《真宮》なんて、マホさんの知人どころか実家の近所や同級生にすらいないし、《たっちゃん》とか、フルネーム及び旧姓に掠りもしない。

まあ、数十分後にもう1通来ていて、

『あれ?たっちゃんじゃないですか?』

やっと間違いだと気付いてくれたらしい。


着信時間はマホさんがお仕事開始した辺り。

既に5時間以上経っているし、それ以降のメールは来ていないし、返事はしなくてもいいか。

真宮さんがたっちゃんさんとやらとちゃんと連絡取れているといいなぁと思いながら、マホさんはツマミを作って晩酌したのでした。



まさか、翌日もメールが来るとは思いもしませんでしたが。


『真宮です。昨日はスミマセンでした。これからこのメアドを教えてくれた同期に連絡してみます』


しかも、間違いメールに至った経緯の報告されるなんて。


どうやら《たっちゃん》本人ではなく第三者からアドレスを教えてもらったらしい。そうなると、その同期の人がマホさんの知り合いの可能性があります。


『私は気にしていませんので、同期の方を責めないで下さいね』

知り合いだろうからという訳ではなく、実際マホさんは怒ってもいません。

なんだか面白い展開になってきたなぁと思っている程度です。

というか、晩酌中にメールが来たので、完全に酒の肴扱い。実況系の動画感覚。


真宮さん!時間帯のチョイス間違ってますよ!そして《これから》連絡ではなく、そういう事を終わらせてからメールするべきです!

マホさんも、当事者なんですから『知ってる人だと笑える~カンパ~イ』なんてササミとキュウリの塩昆布和え食べながらお酒呑んでどうするのさ!


事の経緯としては、真宮さんがたっちゃんさんに連絡を取りたいがアドレスを知らない→同期さんに教えてもらおうとする→その時酔っ払ってた同期さん、快く応じるも、違うアドレスを真宮さんに教える→それがマホさんのアドレスだった…という事らしい。


そんな報告を受けたマホさん、同期さんの心当たりも無い。

メールからの印象で真宮さんは随分と若い感じがするのです。その彼の同期という事は、同期さんも若い。

自分のアドレスを知っていて自分より遙かに若い知り合いなんて、マホさんには親戚以外いません。

そして、その親戚の子達なら、真宮さんが確認の連絡をしてマホさんのアドレスを教えてしまった事を知れば、こちらに連絡をよこすハズ。

それがないという事は、同期さんがアドレスを教えた時に更に間違っていて、それが偶然にもマホさんのアドレスだった…?


とんでもなく低い確率で起こった間違いメールのようです。


『何とも不思議な事ですねぇ』

お互いそんな事を言って、間違いメール騒動は終わり……かと思ったら。


『この後も、メールしてもいいですか?』

一体何が真宮さんの興味を惹いたのか、この後もメールのやり取りを続けたいらしい。

まあ、一時的なものだろう。しばらくすれば飽きるんじゃないかなぁとマホさんは思います。


『時間帯によっては返事が出来ない事もありますが、それでもよければいいですよ』

マホさんの方から連絡する気は無く、彼の話を聞いていれば満足するだろうと、軽い気持ちで了承します。

ほろ酔い気分で気が大きくなっていたともいう。


これからよろしくと、お互い軽く自己紹介。

といっても、マホさんは自分の名前と、お酒が生き甲斐のどこにでもいるパートのオバサンとしか言わなかったのですが。



『真宮アキヨシです!芸能活動をしています!』



……………はい?



マホさん、芸能人のメル友が出来ました。













直後のマホさんと旦那さんの会話

マホ「メル友出来た~」

旦那「へ~」

マホ「芸能人だって~」

旦那「ほ~」


………お互いほったらかしにも程があるだろ…

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