チケット
マホさんは、パートのオバサンです。なので、お仕事がある日は出勤します。
職場には、まずは自宅近くのバス停からバスに乗ってJRの駅に向かいます。
利用しているバス会社では、ICカードだと現金より何円か安いのですが、累計で一定の金額になると更に割引されます。
バスから降りる時にタッチすると、次に乗った時に割引になる時は『チケットが付きました』、割引された時は『チケットを使いました』と音声アナウンスが入ります。
ある日、終点の駅に着き乗客が次々に降りていく時に、なんとも面白い現象にマホさんは出くわしました。
チケット
チケットを
チケッ
チケッ
チケット
チケットを使いました
バスは、子供からお年寄りまで誰もが使う、公共の交通機関です。
運賃の支払い方法だって、ICカードや現金、定期を使用したりと様々。ICカードの割引アナウンスもそれぞれ個人の累計なので、入ったり入らなかったり。
そんな中、複数人が連続でICカード利用の上にチケットが付くか利用する。
更に、普段ならいくら終点でゾロゾロと列になって降りていってもタッチするペースはまちまちなのに、なぜかこの時だけリズムを取ったような速さでタッチしていく。
そして、締めの人だけアナウンスが最後まで入る(アナウンス中に次の人がタッチすると途中で止まる仕様)。
偶然に偶然が重なって、さながらラップ状態。
もう何年も毎日のようにバスに乗っているマホさんでも初めての現象です。
なので、ラップみたいだと認識してしまったマホさんは、笑いたくて仕方が無い。
しかし、バスの車内でいきなり笑う訳にはいかないと、一生懸命堪えます。
口元なんか歪みまくっているので手で押さえて下を向いて、でも、続々降りていく前方から時折聞こえる『チケット』のせいで笑いの波がなかなか収まってくれないのです。
マホさんだって降りなくてはいけないのですが、腹筋が痛くて座席から立ち上がれない。
そんな事をしている内に、結局一番最後まで残ってしまいました。
いやはや、朝から面白い経験したわ~。絶対仕事中に思い出し笑いしそう。なんて思いながら、一番後ろに並びます。
そして、常道というか王道というかやっぱりというか、マホさんの数人前から再びラップ開始。
チケ
チケッ
チケットが
チケット
なんで皆、そんな急いでタッチするの?!
すごくリズムに乗っていてやっと収まった笑いの波が込み上げちゃうじゃん!
チケット
チケッ
チケットが
とうとうマホさんのすぐ前の人もアナウンスが入ります。
締めは最後の乗客のマホさんです。
もはや表情筋と腹筋は崩壊寸前。
ここまでくるとお約束。半分諦めの境地でリズムに遅れぬようにタッチするしかありません。
さあ、どうなるか!!
チケットが付きました
マホさん、ラッパーの仲間入り。