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ネコミミ

マホさんの旦那さんは、オタクな人です。

家に居る時は大抵、アニメを観ているかゲームをしているかパソコンをいじっているかです。

マホさんの事はほったらかしです。

でも、マホさんも本を読んだり音楽聴いたりお酒呑んだりして、旦那さん放置状態。


大丈夫。何も問題ない。



今日も旦那さんはパソコンでゲームをしています。

マホさんは夕飯の支度までちょっと時間があるので、スマホをいじったりしながらお茶飲んで一服中。


パソコンだと旦那さんの身体に遮られて画面は見えないので、マホさんには音声だけしか分かりません。まあ、別に構わないのですが。

何人かのチームを組んで戦わせるゲームのようですが、女の子ばかりのキャラクターらしい…どうやら画面の向こう側で一大ハーレムが築かれている模様。

その中で、レベル上げなのか最近のお気に入りなのか、必ずメンバーに入れる娘さんがいます。ムービーは無いゲームみたいだが、戦闘中やらその前後やらでとにかくキャラクター達が喋る事喋る事。なので、その娘さんのセリフも頻繁に聞こえます。


「頑張るピョン」

「大丈夫だピョン」

「誉めて欲しいピョン」


他のキャラのセリフも聞こえてます。ですが、マホさんは彼女の《ピョン》が気になって仕方が無いのです。

正直言うと、ウザい。


なぜ、語尾に《ピョン》が付くのか。

一体彼女は何なのか。

そんなマホさんの問い掛けに、旦那さんからの返答は。


彼女の名前に《兎》が入っている。

ウサギだから《ピョン》と言っている。


………全くもって納得出来ない!

ピョンピョン言うならカエルでもバッタでもいいじゃん!

跳ねるからピョンと言うなら、他にも跳ねる生き物がいるんだから《ウサギだから》はおかしいとマホさんは主張します。


負けじと旦那さんも反論。

カエルは《ケロケロ》だよ!

イヌは《ワン》だしネコは《ニャン》じゃん。

だからウサギは《ピョン》なの!


さすがにバッタはやめてくれと言うのにはマホさんも同意。

しかし、他は鳴き声なんだから、ウサギだけ跳ねるからってヘンだよと、どうにも納得いきません。

キツネだって《コン》だしさぁと首をかしげるマホさん。


ゲームをしながら話している旦那さんは、そろそろ話を切り上げたい。

ウサギは鳴かないんだから、ピョンでいいじゃん。

そう言って背中を向けます。


マホさんビックリ。

ウサギ、鳴くよ?


……え?!ウサギって鳴くの?!


再びグリンと振り返って、その上イスから立ち上がって叫ぶ旦那さんに、マホさん更にビックリです。

ウサギが鳴く事知らなかったの?!

イヌやネコ程しょっちゅう鳴く訳ではないけれど、ごくたまにキュッとかキュキュッて鳴きます、ウサギ。


知らなかったとは知らなかった。野生のウサギとまでは言わないが、マホさんや旦那さんの年代なら小学校でウサギやニワトリ飼ってたりしたし、動物園の触れ合い広場やペットとして飼っていたりと身近にいる範疇なので知っていると思っていたのです。


同じ県内出身でも、都市部で生まれ育った人と野生の動物を見かける事もある超ド田舎育ちではここまで違うのか、これが地域格差かと見当外れな事を考えるマホさんの横で旦那さんはつぶやきます。


その鳴き声じゃ、萌えない。


……そっちかよ!!


うん、まあ、一応、オタクな人の嫁だもの。

マホさんだってそれなりに嗜んでいますよ。弁えていますよ。既に《ウサギはピョン》は世界的に確定なのです。

単に今日はピョンピョン言うのが耳についてウザかっただけなのです。そのゲームをプレイするなとかそのキャラを使うなと言う訳じゃないから気にするなと言い置いて、マホさんは夕飯の支度の時間です。

そんなマホさんの背中に旦那さんのつぶやきは続く。


ウザいとか、無いでしょ。萌えだよ、萌え。


いかにも判ってないなぁという口調。

……ホホ~ン?では、実験してみましょうか。



今日の夕飯は、旦那さんは豚のしょうが焼き、マホさんは厚揚げの煮物ともやしとササミのマヨサラダがツマミです。


ご飯、出来たニャー


マホさん、実験開始です。

晩酌しながら。


いただきますニャン

ご飯おかわりかニャ?

美味しいニャー


とにかくひたすらニャーニャー言い続けます。

ご飯の時は、ゲームやパソコンはやめて食卓に付くのが決まりなので、大抵テレビを観ながら食事します。

まあ、そうなると旦那さんは録画していたアニメを観ているのですが。


あ、こニャいだの続き?

ニャんかお約束な展開なのニャー


ニャんだかニャーニャー言うのが楽しくなってきた頃に、旦那さんが限界です。


マァちゃん、ニャーニャー言うのウザい。

(旦那さんはマホさんをマァちゃんと呼びます。旦那さんはイサムという名前なので、マホさんはイッちゃんと呼んでいます。)


そう!そこなのだよイッちゃん!

いくら萌えだといっても、本人の意思ではなく聞かされるとウザいのだよ!

萌えれば何でも許される訳ではないのだ!


旦那さんも、この為に言ってたのかと納得。

最初はいきなり何やってんだコイツって思ったよ~と笑います。

マホさんも、途中からなんだか面白くなってきちゃったんだけどねと笑いながらお酒を一口。


マホさん、それ、酔っ払ってるだけなのでは?

まあ、とにかく実験大成功です。


……と、思いきや。


でも、人がニャーニャー言うのと、ゲームやアニメでニャーニャー言ってるのを聞くのとは、全然違う。

旦那さんが謎な事を言ってます。

なんでよ?!

何が違うというのか。


二次元と三次元の違い…かな?


リアル嫁が二次元嫁に負けた瞬間です。

いや、勝負してないけど。


一体何が敗因なのか。

もしや耳か?ケモ耳か?


次はネコミミ付けてニャーニャー言ってやる~!


なんだか一大決心のように宣言しているマホさんですが、別に勝負してないですよ?

っていうか、やっぱり酔っ払ってますよね?


後日、冷静に思い返して、《ネコミミのオバサン》なんて需要が全く無い事に気付くマホさん。

残念ニャーとか言ってますが、《ニャーニャー言うオバサン》も需要無いのです。


かくして、ネコミミは日の目を見る事もなく、封印されたのでした。



………え?ネコミミ、既に準備されてたの?!











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