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第五話 神魔皇、目覚めさせる


 しばらくゴブリンとリーエルを戦わせて経験を積ませることにした。

 その結果は上々だ。


 剣術において、リーエルは稀有な才能を持っていた。

 それには獣人の特性が大きく影響しているのだろう。

 抜群の運動神経と直感が剣術を究めるのにとても有利に働いているのだ。


 それに、魔物の霊力を吸収しなければ、本来どんなスキルも身につかないはずなのだ。

 しかし、リーエルは鍛錬だけで剣術スキルを会得していた。


 だからセラはリーエルの剣術に才を見出した訳だ。


 セラの予感だが、現在のリーエルはドラゴンの群れくらいの相手なら余裕で殲滅できるくらいの実力を有している。


「エルちゃん流石だね~! この森の魔物も倒し尽くしたし、そろそろ街まで行く?」


「はいっ、わかりました!」


 元気に返事をしてリーエルはキラキラとした笑顔を浮かべる。

 よほど魔剣と鎧をもらったことがうれしいのか、狐のしっぽをぶんぶんと振っている。


 セラはそんなリーエルの前に杖に腰掛けたまま、すっと浮遊魔法で移動してきた。


「ふふっ……ほら、飛んでいきましょう?」


 両手を広げてセラはリーエルを誘う。

 ごくり、とリーエルは生唾を飲み込むと、高鳴る胸の鼓動を感じながら、おずおずとセラに抱き着いた。


 ちなみに、リーエルはすでに次元収納を使いこなしている。

 抱き着く前に瞬時に装備を外し、普段着へと戻っていた。


「セラさんっ///」


 リーエルを優しく抱きしめると、少し上ずった声が上がる。


「甘えんぼさんだね♪ いいよ……着くまでそうしてて」


「~~~~っ///」


 耳元でささやいてあげると、もうたまらないといった風にリーエルがセラに思い切り抱き着き、胸の谷間に顔を埋めた。


 それに応えてセラはリーエルの頭を撫でてやり、浮遊魔法を再開する。


 音もなく飛び立った二人は、抱きしめあったまま街の近くまで飛んで行った。



――――――――――


「心配だな……」


 【リドル】と書かれた街の門番はそわそわしていた。

 三日ほど前に出て行った狐獣人の女冒険者のことを思い出していたのだ。


 彼女はパーティーも組まずに街を出て行ってしまった。


 当然引き留めたのだが、彼女は『皆さんがパーティーを組んでくれないので、嘆きの森に一人で行くんです。邪魔をしないでください』と言っていた。


 冒険者を数多く見送ってきたその街の騎士は、ある嫌な予感がしたのだ。

 今まで経験した嫌な予感が当たっていたからこそ、心配なのだ。


 過去の三人パーティーの冒険者を見送った時と同じ嫌な予感がした。

 その結果、パーティーはダンジョンの罠にかかり死んでしまった。


 腕の立つBランク冒険者を見送ったこともあったが、その時も同じだ。

 災厄級の魔物が現れ、不運にもそのBランク冒険者は死んでしまった。


 だから、彼は危惧していた。

 あのかわいい獣人の女の子は、今頃『嘆きの森』でひどい目にあっているんじゃないかと。


 当然、匿名で冒険者ギルドに依頼をだしたが、嘆きの森は最近グリムベアーの目撃証言が多数あり、冒険者ギルドも準備ができるまでは動けないという返答だったのだ。


「……あの子、大丈夫かな」


 思わず独り言が漏れるが、それを聞いていた相方の男は、またか、と言って息を吐く。


「心配してもどうにもならねぇよ。その女が好みだったんならなんで一緒に行って守ってやんなかったんだ? 死んじまったんならもういい加減に諦めて、次を探せ次を。そんなんだから結婚できねぇんだよ。レオン」


 心配していた門番の青年レオンは、その言葉を放ってきた相方に言い返す。


「結婚どうこうは関係ないだろ。ケビン。守ってあげたかったさ……でも、僕はこの町の騎士団に所属してるんだ……。集団での戦とかならともかく、個人の冒険者と職務中にパーティーを組んで手を貸すのは、騎士団の掟に反してるから……」


 ぎゅっと握った手をさらに握りこむ。

 言い訳に過ぎないことは自分でもわかっているが、それでもあきらめられない。


 あの金色の髪の毛、神のごとき整った容姿。

 聞き込みの結果によると、彼女とパーティーを組むものがいなかったのは、明らかに初心者だったという理由が大半だった。


 当然だ。

 冒険者はリスクを嫌う。


 熟練の冒険者になればなるほど安定した収入を確保できるパーティーを望む。

 初心者を雇うなんてことは、収入が減ることを意味するし、何よりその初心者は何のとりえもない少女だった。


 冒険者の掟に守られているが故に、冒険者は冒険者に悪さを働けない。

 美人をパーティーに入れて強姦なんてしようものなら、今後一切、パーティーとして活動ができなくなるのだ。


 ギルドカードに自分の足跡はすぐに登録されてしまうが故に、冒険者は犯罪行為を行えない。


 初心者は初心者同士で組むしかないのだ。


「くそっ……僕がもう少し勇気を出していれば……」


 今になって後悔しているレオン。


「お、おい……レオン。お前あれ見えるか!? 人が空を飛んでるっ!」


「ケビン。君は優しいんだな。でもそんなくだらない冗談……笑えないぞ」


「馬鹿野郎! そんな冗談言うもんか! 見てみろって!」


 やれやれ、とレオンは首を振る。

 一体何を言っているんだと思い、レオンはケビンがすさまじい形相で指をさしている先を見た。




 ――そこに居たのは、まぎれもなく宙に浮いている露出過多な魔法使いの女と、それに抱き着いている狐獣人少女だった。



 

 彼女たちはレオンたちより数メートルほど前まで下りてきた。

 しかし、杖のようなものに腰掛けているのは変わらず、魔法使いのような女は獣人の少女に何事かささやいていた。


 何か頷いた獣人の少女はその魔法使いから離れ、地面に降り立った。

 間違いなく例の獣人の少女だということを確認したレオンは、安堵する。


「……お前は何者だ!?」


 しかし油断はしていない。

 顔がわかる獣人の少女はともかく、この魔法使いの顔は知らない。

 しかも失われた古代魔法と名高い『浮遊魔法』を行使しているのだ。


 ただものではない。


「レディに向かって何者とは失礼ね。私はセラ。冒険者よ」


 人形のような美しさ――まさに完璧といってもいいほどの美しさを湛えたその魔法使いは、そう言って妖艶に微笑んだ。格好も相まって、すさまじい破壊力を発揮している。


 レオンはそのあふれ出る色香に心臓が高鳴る。

 ケビンも同様だったようで、武器を構えることもせずに魔法使いの胸を凝視していた。


(くそっ、なんて格好をしてるんだ……! もう少しで乳首が見えそうじゃないかっ)


 飛びそうになる理性を保ち、すでに反応している下半身がばれないように前かがみになる。


「門番さん。セラさんは私のパーティーに入りました。よって、この街に入る権利があります」


 挙動不審なレオンを見ながら、狐獣人の少女ははっきりと言った。


「ぎ、ギルドカードを見せてもらおう」


「分かりました」


 ギルドカードを確認すれば彼女の言が本当かどうかがわかる。

 そこにはきっちり、パーティー:二人 リーエル セラ という表示があった。


 なぜ浮遊魔法を使えるか、などと聞くべきことは山ほどある。

 だがもうそんなことはどうでもよくなりつつある。


 レオンとケビンの頭の中は、街の娼婦を買って、この性欲を吐き出してしまいたいという欲求だけになりつつあった。


「と、通ってよし! 無事で何よりだ冒険者達」


 この文言は定型文である。

 依頼から帰ってきた冒険者をねぎらう為に、騎士団はその言葉をかけるのだ。


「あら、ありがとう……。ふふっ、二人ともまだまだ若いわね?」


 レオンは魔法使いの女に微笑まれた瞬間、暴発しそうになった。

 こちらの股間を見られたのだ。


 しかも魔法使いは両手を大きな胸の下で組んで、胸を強調してきたのだ。

 ――今すぐ押し倒したい。


 ケビンはすでに暴発しており、呆然自失。

 なんとか耐えたレオンも、魔法使いの言葉に返せなかった。


 彼らの間を彼女たちは悠然と歩く。

 レオンは感じた。ふわり、と娼婦たちとはまた違う、清潔で清純な匂いを。


 それはまさしく魔法使いと獣人の少女のもので。

 レオンはもう獣人の少女のおしりと、魔法使いの女性の胸と体のラインの虜になってしまっていた。


 特に魔法使いが本当にすごかった。

 肩まで露出している薄い服装、胸を申し訳ない程度に隠している布や、スリットから覗く白い生足。

 極めつけはロングスカートなのだが深いスリットの為、下着をつけているのならば布が見えるはずなのだが――そのような下着をつけていないように見えるところだ。


「ま、まってください! お二方、こここ今夜僕と一緒におしょくz」


 食事に誘おうとレオンが決心して勇気を振り絞った。

 だが、それは最後まで言い切ることは叶わない。


「ごめんなさい。私、女だけど女の子にしか興味ないの」


 頭が一瞬理解を拒み、衝動的に動き出しそうな体を何とか踏みとどまらせる。

 そうした後、魔法使いの女性が微笑むのを見て、レオンは崩れ落ちた。


「えっ、セラさんって///」

「あれ? どうしたのエルちゃん。早く冒険者ギルドに行こ?」

「えっ、えっ……でも、あの」

「ふふっ…………今日も一緒にお風呂入ろ?」

「は……はい……///」


 そんな声を聴きながら、暴発した二人の男は賢者タイムを迎えていた。



「聞いたか? ……あんないい女が、女同士で……俺、目覚めちまいそうになった」


「ケビン甘いな……僕はもう、女性同士でしか燃えなくなったよ……」


 夕焼けになりつつある空を見上げながら、レオンとケビンは湿ったズボンのまま職務をこなしたという。


ひぇぇ……。

更新できてませぬ。

近いうちに更新したいと思っておりますので、今しばらくお待ちを。

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