第二話 そうだ、異世界に行こう(前編)
「危ない、避けて!!」
異世界に来てから出会った、うさぎの耳と尻尾を持った[兎人族]の女の子 アイリが叫ぶ。
「大丈夫だ!それよりも詠唱を!!」
僕のことを心配してくれたが、僕の剣技だけでは悔しくも奴を倒すことができない。アイリが得意とする呪術で、倒すしか方法は無さそうだ。
「輝羅人離れていて!仏説摩訶般若波羅蜜多心経......」
―――「いや、なんで異世界の詠唱が般若心経なんだよ!」
「良く効きそうじゃね?」
「成仏させるということは、敵はゴースト等ですか?」
「いや?フェンリルだけど...」
「「... ... ...」」
まったく、何に問題があるのだろうか。訳がわからないよ。
「ていうか、カラットって何?きらとじゃなかったっけ?」
「ああ、僕もそれ気になりました。」
「きらとのことに決まってるじゃん。異世界に行ったら、主人公名前変えがちじゃない?」
「まぁ、そう言われたらそうですけど...」
「確かにな...
って、それよりもまず、今の状況の打開策を考えろよぉ!」
目下、今考えるべきなのはガトーの言う通りこの地下牢から如何にして出るかだろう。
――― ガトーside
「ジーク!!?」
鏡に触れた途端、ジークが引っ張られて鏡に消えてった。もっと早く警戒してれば、あいつの手を掴めたのに...
「これはまずいですね。優司君は、鏡の中に入ってしまったとみて間違いないでしょう。」
「おい、どうすんだこれ!?」
「皆目、見当がつきません...」
「そんな...」
あいつがいなくなっちまうなんて、そんなのだめだ。ふと、タロウを見るとこっちを見てうなづいてきた。どうやら考えは一緒らしい。
「よし、行くか。」
そうして、俺とタロウが鏡に触れようとしたとき。
「「っ!!?」」
鏡から、指がいきなり出てきたと思ったら、すでに目の前にジークが平然と立っていた。
「ガトー、タロウ、あっちの世界は凄いよ!!」
―――その後、一回落ち着くために近くのファミレスに寄ってジークの話を聞くことにした。
「それで、あっちの世界って何なんだ?」
「うーん。何て言うんだろう、大半はこっちの世界と変わらないんだけど、ただ一つ気づいた点は。」
「「点は?」」
「モンスターがいた。」
「「... はあぁ!!?」」
「マジだよマジ、ほらこれ見てみそ。」
そう言って、おもむろにスマホを取り出し俺たちに写真を見せてきた。
「確かに、これはアルビノや突然変異などではなく、モンスターですね。」
その写真に写っていたものは、俺の身長はあるんじゃないかと思わせるぐらいの、巨大で真っ白い狼が倒れている姿だった。その上ありえないのが、青い粒子みたいな物が、その狼の体から出ていることだ。
「そして、近くにいたからなのかこの粒々が、俺の体に入ってきたんだよね。」
「なっ!大丈夫なのですか!?」
「うん。へーきへーき、むしろ体が軽い気がする。」
「そうなのか...」
こいつは、なんでいつも通りなんだろうか。頭のネジじゃなくてパーツが足りないと思う。
しかし、これはどうするべきなのか。先生に相談すべきか?それとも警察は取り扱ってくれるのか?
「それでさ、次は二人も一緒に行こうぜ!」
「「え??」」
「だってあっちの世界楽しそうだし、二人もいこうよ、楽しいよ、新発見だよ。」
「うーん。確かに、未知の世界は気になりますね。しかし、いつ行けばいいのでしょうか?僕達は学生で、忙しい時期ですし。」
「あぁ、それなら大丈夫。俺、あっちに二日いたし。」
「「二日いた!?」」
「うん、だから時間は気にしなくてもいいんじゃね?」
「そうですか、それならば...」
チラリと俺の方を見るタロウとジーク、まぁ俺も、異世界は気になるしなぁ。
「よし!明日の放課後、あっちの世界とやらに行こう!」
「「了解だぜ(です)!!」」
さて、明日は濃い一日になりそうだな。