マスターステータス
「で、ステータスは見れたか?」
「見えるけど、高いのか低いのかわからない」
「貸せ」
ついっとステータスボードを取り上げられた。それに異を唱えられる雰囲気でも無いノアールの気配にふぅ、と溜め息を吐く。
よくわからなかった、というのは決して嘘では無い、けれども、間違いなく幼女であのステータスはおかしいと思う。
「…………祝福とダンジョンコアの性能だな、それを引けるのはお前の運か?」
投げやりに私の手に返ってきたステータスボードを眺めて、私はやっぱりこの性能はおかしいと思った。
マスターステータス
ダンジョン系統:闇、瘴気系(ランク7)
ダンジョンマスター:アカネ(ランク7)
生命力:700?
知力:700?
攻撃力:700?
魔攻:700?
耐久力:700?
魔力均衡値:700?
ラック値:7?
スキル
痛みの祝福、ランク7の祝福、コピー、ラック7の祝福
コピー
武器の祝福、英知の祝福、素質の祝福
称号
魔王の娘
「さて、質問は?」
眉間に皺を寄せて見ていたからか、ノアールは私が顔を上げたのを見計らってそう切り出した。聞きたいことは山程ある、一般的なステータスはどのくらいなのかとか、ノアールのステータスとか、なんで?マーク付いてるのとか、祝福ってなんなのとか、よくわからないスキルとか、瘴気系ダンジョンとか、それを矢継ぎ早に、片っ端からノアールに聞いた。
「ステータスとしては一般幼女のおおよそ100倍、パパはわたしより更に上で、?マークについては謎、祝福はダンジョンを発足した時に行われるオプションダイスにてアタリを引いたから付いてきたもので、何に祝福が付くかは運で、スキルはダンジョンコアの性能+わたしが引いた祝福の一つがコピーだった故にパパからコピーしたもの。ダンジョンはマスターの深層心理を反映したもの、ってこと?」
「そうだ」
つまり、一言で言えばノアールのスキルをコピーすることの出来たダンジョンコアの性能と、祝福でコピーを引けたラック値のおかげ。
「このランク7の祝福ってな、最高ランクの10より高い祝福とされるんだ」
「というと?」
「マスターのラックに祝福が内部的に起こっていて、それはステータスボードに反映されることが無い。けれどランク7の祝福持ちは総じて悪運だったり幸運だったり、偶然を呼び寄せる確率が目に見える程高い」
へえ、と相槌を打った。
それだけか?と言いたげな視線が送られて来るけれど、そもそも一度死んでこれはラッキーボーナスの夢の世界的なモノだと認識してる私はそんな程度の反応だ。
例えるならばなんとなくインストールしてみたゲームでたまたま強いキャラを引いたからやってみよう、的な感覚に近い。言ってもそりゃ伝わらないだろうけども。
「わたしのダンジョンは何処にあるの?」
「まだ解放されて無いから存在してる訳じゃない、ダンジョン協会が保持する異空間のうちの一つにあるはずだ…………そうだな、ダンジョンコアに指示を飛ばせば行ける」
そのダンジョンコアは何処にあるの、と尋ね掛けて思い留まる。全てを聞いて知識を得て許されるのは子供だけで、自分は見た目幼女でも中身は健全な大人な訳で、ノアールが許しても自分を甘やかしてはいけない。見た目に引き摺られて考えまでも幼くなってるのか、と諌める。
「どうした?」
「………………いや、なんでもないよ。ちょっと行ってきます」
探し当てたダンジョンコアのメニューはステータスボードのマスターステータスが載ってる所にあった。メニューをタップしてそれっぽい言葉を選べば景色は移ろぎ、コンクリートに似た空間に囲まれる。次に目を引くのは黒と赤の線が螺旋に絡み合って守られ、その中でも透き通るような輝きは失わないダンジョンコア。
『おかえりなさいませマスター、ダンジョンの整備を行いますか?』
「そうだね、折角だからしようかな」
『かしこまりました。以下メニューから整える項目をタップしてください。』
ダンジョン整備(ダンジョン形態、フロア拡張、罠設置)
モンスター(購入、製造、配置、合成)
ダンジョンコア(ルーム)
解放
手元に表れたそれはステータスボードに良く似ている物だった。パパパッと並んだ項目を中までざっと目を通して、とりあえず一番上から手を付けることにした。
「んん、手持ちのダンジョンポイントが7777……ここまで7ばっかりだと最早作為的な何かを感じる。というかダンジョンポイントってなんだ?買うのにも売るのにも使える辺り通貨的なモノなのかしら?」
ぶつぶつと呟いて頭の中を整理していく。とりあえずフロア拡張するのもモンスターを買うのもルーム……自分の部屋らしきものを作るのも何かするにもこのダンジョンポイントが必要らしい。
まずは、とこのコンクリートの空間しか無いダンジョンにフロアを設置、ワンフロア500ポイント使うそうなので二階層まで。ダンジョン形態は……洞窟、塔、城、特殊、なんとなく洞窟を選択して、このダンジョンポイントが貯まったら特殊にしたい。何気にダンジョン形態を選択するのに1000ポイント使ったので特殊にはちょっとまだ手が出せない。
「最下層がこの部屋になるのね、瘴気系ってあるから下層へ向かえば向かう程瘴気が溜まっていく気がするけど、それは要観察かな、罠は最後でいいや、モンスター行こう」
人がいなくなった途端独り言が増えていくのは生前の癖なので気にしない、今は新しくもらったオモチャが優先、と見ないフリをした。