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魔王の娘はダンジョンマスターです  作者: ゆき
いち、魔王だと知ったのは娘になった後です
6/21

合否とダンジョンコア

「飽きたぞ、勇者」


それもそうだろう、と私は欠伸をする。


立ち向かって来る勇者サマを黒炎で薙いで、聖剣を掲げる勇者サマを蹴飛ばして、魔法を使う為詠唱らしきものを紡ごうとすれば紡ぐ間も与えられずノアールが黒炎で焼き払おうとするのだ。


全く均衡していない戦闘などただのお遊びにしか過ぎない。それにさえ飽きたのなら、勇者サマはもういらないのだ。


「パパ、わたしちゃんと証明してみせたよ?えらい?」

「上出来だ」


勇者を飲み込む黒炎を片隅にノアールへと近付く私はにっこり柔く微笑んで、ノアールが求めていたであろう正解の行動を証明してみせた、と言う。


自分が人間とは対立する存在であると分かってもらう為に勇者サマ達を犠牲にしたのは、心が少し痛むかもしれないけれど。


勇者が来ているのにツヴァイはいなくなった。それはつまり、私は試されているのだろうと考えた。だから、いたいけな幼子を偽って、勇者サマを導いて、ノアールに分かってもらう為だけに、勇者サマ達には死んでもらったの。


「ツヴァイも、納得してくれた?」

「そうですね…………少なくとも、当初よりは」

「そう、今はそれでいいや」


そうツヴァイとの会話は切り上げて、塵さえ残っていない勇者サマがいた所へ足を運ぶ。


勇者サマは残ってない、それの所持品であろうアイテムも残ってない。けれど、何故か一つだけ残っているモノがあるから、気になっていた。


キラキラと輝いても見えるし、ほの暗く光ってるようにも見えるアメジストに似た不思議な宝石が。


「ほう、ダンジョンコアか。それもかなり上位のダンジョンだったのだろう」

「数多の血を吸ってるようですからね、輝きがいい感じにくすんでます」


手を伸ばす前に現れた保護者二人はその宝石を手に取って精査を始め、私はその様子を見上げる。暫くして満足したらしい二人は私を見下ろし、私にも見えるようにそれを差し出してくれた。


「ダンジョンコアだ。これがダンジョンの全ての基盤となり、これを壊されるとダンジョンコアの主と共にダンジョンは消える。これはかなり長く続いたダンジョンのもので、何故あの勇者が持ってたのか不思議なくらいだぞ」

「パパ、これ欲しい。これください」


キラキラと鈍く光るそれに、私はどうしても目を惹かれてしまう。


「アカネ様に、ですか?」

「いいんじゃないか?褒美も必要だろう」

「ですが、これはあまりにも……、」


保護者が暫し言い合っていたが、最終的な決定権を持つのはノアール故に、そのダンジョンコアは私が手に入れることになった。


「いいかアカネ、よく聞け。それに魔力を注げばダンジョンコアは直ちにお前を主と認め、ダンジョンが発足される。安易に魔力を流すな、いいな?」

「うん。」


そう前置きをして、それは私の小さい手に乗せられた。


「え?」


何もしていないのに、自分のカラダの中から、ナニカが引き出される。顔が火照る感覚に似たそれが、手に集まって、全ての血液がそこへ向かってるようにも感じた。


「…………なにもしてないよ?」

「何もしてないのにダンジョンコアが反応する訳無いだろ」


少し呆れ顔なノアールが私から視線を逸らし、ツヴァイへ向けた。その表情は楽しげで、心配などの色は一切無い。



『アカネ様を主と認識、ステータスの反映……主の肉体に耐えられないと判断、主の肉体を修復及び強化、オプションダイスにてアタリ目を確認、ステータスへ付加後祝福を行います……場所を当ダンジョン外のダンジョンと認識、アタリ目の祝福によりコピーします……コピー終了、ダンジョンマスターのコピー……不可、直ちに主のステータスを修正……不可、ダンジョンマスターのスキルをコピー……可、主のステータスへ付加、これより主のダンジョンを反映します……』



「んっ!?」


何かのアナウンスを聞き取る間も無く、その場へ倒れ込んだ。倒れ込む衝撃さえも感じられない程の激痛が身体中に走って、ダンジョンコアを握り込む力が強くなる。点滅する視界と上手く吸えない息に不快感を覚えながらも必死にそれを耐え、けれども吐き気の残る頭痛に喘ぐ。


保護者二人がどうしてるのかさえも確認出来ず、ただひたすら痛みに耐え、喘ぐだけの時間を過ごして、漸くそれが治まる頃にはくったくたになっていた。



『ダンジョンの反映完了、主の意識を確認、痛みの祝福にてアタリを確認、主のステータスに反映……完了、これにより主と認めます。良いダンジョンライフを。』



「アカネ?」

「…………の、あーる?」


漸く正常に戻ったらしい視界に当初と同じ景色が目に入る。


「ふむ、随分とラック値が高いな。俺のスキルまでコピーするなど中々優秀なダンジョンコアだ」


半透明の、縁だけが金と黒で縁取られたA4サイズ程のボードを見ながらふむふむと頷いているノアールの言葉で、今がダンジョンコアに触れた後だということを思い出した。


「ステータスボードと言え、ダンジョンマスターとしてのステータスが見れる」


その言葉に従って、ステータスボード、と呟く。それによって現れたのはノアールの手にあるものとそっくりな、けれども縁が金だけのステータスボードだった。


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