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魔王の娘はダンジョンマスターです  作者: ゆき
いち、魔王だと知ったのは娘になった後です
3/21

わくわく庭園のお勉強

「ここだ」

「これをツヴァイ一人で管理してるの……?」


屋敷を出てから十五分程の所にあった裏庭。そこの入口に立ったアカネは言葉を失った。


そして呆然と、自身の視界に広がる景色に見入る。


色とりどりの花が、畑には野菜とおぼしきものが、ビニールハウスからうっすらと透ける中は虹色や金や銀といった不思議なカラーをしてる植物が。


想定より遥かに大規模な庭の入口で立ち竦み、ノアールは満足げに笑う。


「戦闘力はそれなりでも、植物を育てるのが妙に上手くてな。あやつの淹れた紅茶は美味だし気も利くし俺の執事なんだ」

「へええぇ」


ノアールの言葉にそれどころでは無いアカネは意識半分抜けたまんま恐る恐ると庭へ足を踏み入れた。


まずアカネとノアールを迎え入れるのは広大に、けれどもそれぞれが美しく見えるように配置された花々。地面から直接生えているのか茎の部分は葉に覆われて、寂しくない。


それの横にあるのは中がうっすら見えるくらいのビニールハウス、けれども輝き溢れている。


その二つを越えれば畑、目視する限り一面畑。最早本職の規模並みだという感想と共にアカネはノアールに一個一個生えている花、野菜を確認しながら歩く。


それにどもることもせずすらすら答え、更には効能や応用も交えて説明するノアール。


「さて、暗くなったしそろそろ戻るぞ。ビニールハウスは明日ツヴァイに案内してもらえ」

「あい」


アカネが満足して花と野菜の名前を覚えた頃には明るかった周りも宵に紛れ、ノアールとアカネは屋敷に戻ることにした。





「お帰りなさいませ、魔王様、アカネ様」

「ああ」

「ただいまツヴァイ……さん?」

「ツヴァイで結構ですよアカネ様」


城の扉の前に着いた時、音も立てず扉が開く。


そうして現れたツヴァイは見送った時と同様に恭しく出迎えた。


アカネの流石に本人の前で呼び捨てはあれかな、と思って付けた敬称には結構と答えながら二人を中へ。


「ツヴァイ、明日は暇?」

「魔王様の身の回りのことが終われば時間が空きますが、何か?」

「ツヴァイのビニールハウスの中を案内して欲しいの」

「ああ、そんなことですか。構いませんよ」


無事明日の約束を取り付けて満足したアカネはありがとう、とツヴァイに言って先に行ってしまったノアールを追い、ツヴァイもそれに倣う。


「魔王様、直に食事の用意が整いますので食堂へ」

「もうそんな時間か」


ノアールとアカネの三歩辺り後ろでツヴァイがそう告げると、どれだけ庭にいたのかを実感するノアール。


アカネはこの城の間取りが分からない為ノアールとツヴァイに着いていくだけ。


そうして着いていくと道すがら見た扉とそっくりな扉の前で止まる。唯一違うのは取っ手が金色か銀色の違いくらい。


「銀の取っ手は客間、金の取っ手は食堂、勇者と遊ぶホール、執務室で分かれているんです。魔王様の寝室は黒、アカネ様のお部屋も黒です」

「どうして黒なの?」

「金や銀は派手だから好かない、という魔王様のお言葉です」

「なんかパパらしい」


思えば城の内装とかも黒を基調としたシックな感じだし、来てる服も黒いし、とアカネは思う。そしていつの間に自分の部屋が用意されたのだろう、とも。


「どうぞ、アカネ様」


ツヴァイと話してる間にノアールは既に食卓に着き、アカネはノアールの対面に座ることに。何故なら椅子を引いて待ってるツヴァイがそこにいたから。


まぁ横に座っても対角線上に座っても、とアカネは大人しくツヴァイの引いた椅子の上に収まった。


「本日は少し豪華にしました」


パチンッと軽快なツヴァイのフィンガースナップの後には、テーブルをこれでもかと埋め尽くす料理の数々。


香草だと思われる草に埋まる魚、丸焼きになった鳥みたいなやつ、なんか色とりどりの不思議なサラダ、三種類くらいあるスープ、果てにはドラゴンみたいな頭とそれの切られた胴体。テーブルの三分の一を占めているそれはなんか美味しそう。


「ほう、ブラックドラゴンか」

「はい、魔王領の端で暴れていたので狩るついでに調理してみました」

「ぶらっくどらごん……?」

「一応ドラゴン種の中でも上位とされるドラゴンだ、基本的には強ければ強い程美味い。例外はあるがな」

「少々手こずりましたが味は落ちていないはずですのでご心配なく」


なんか聞いてた話と違う気がする、とアカネは頭の片隅で思ったものの全ては気にしてはいけないんだと悟った。


「…………すごくおいしい」


生前でもそれなりに良いものを食べ慣れていたが、それを凌駕してくるブラックドラゴンの肉。噛めば噛むほど旨味が増すのは当たり前だが、それを殺さないで調理する料理人の腕も中々。


あっという間にツヴァイが取り分けてくれた分のドラコン肉を完食してしまう。


「良く食べるな、好きなだけ食え。子供に栄養は大事だろう」

「サラダも魚もスープもきちんと食べてくださいね」

「あい」


保護者が二人いる状態でアカネは食事を続け、テーブル上の三分の二を一人で食べきった。


「うん、ごちそうさまでした」


けふっとお腹を押さえ、もう食べれないと言わんばかりに手を合わせる。


その行動の意図をノアールとツヴァイが知ることは無いが、とりあえずは放置。


「今日も美味かった」

「恐縮です」


アカネの食べっぷりを見終えたノアールも食事を再開し、その数分後に終わる。


もう食べれないと言いつつ一足先にツヴァイの出したスイーツまで平らげていたアカネは眠そうにノアールを見た。


「お腹一杯になったから眠いです」

「部屋に戻ってろ、着替えて寝てていい」

「おやすみです」


眠気を主張し、許可を得たアカネはツヴァイを連れて自室に戻る。


「アカネ様、せめてお召し替えを」

「…………あい」


移動中既に意識が危うかったアカネをツヴァイが抱えて部屋に移動、ベッドへアカネを下ろすもそのまま意識を飛ばしそうになるアカネ。


なんで子供の身体はこんなに眠いんだ、と内心文句垂れつつツヴァイの差し出す寝巻きを手に取ってもぞもぞ着替え始める。


何を言うまでも無くアカネの行動前に部屋から出ていたツヴァイに流石執事かと感心しながら脱いだワンピースを伸ばして、ひとまず掛け布団の上に置く。それから布団に潜り込み、アカネは目を閉じる。


そこからは何かツヴァイが言っていた気もするが、既に意識を手放していたアカネがそれを聞き取ることは叶わなかった。


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