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ハズレと呼ばれた異世界召喚  作者: 華野宮緋来
第一章《異世界ルイン・オルト》
7/43

7:武器を選べ

最新話です。訓練編です。

 昼食を終え、勇者達は再び修練場へと集っていた。休憩前よりも人が増えている。先の時間では見かけなかった騎士が居たのだ。


「お前ら、メシはきちんと食ったか? さっきよりもキツイ訓練をやるからな。途中でばてるなよー」


 オーディアが変わらぬ笑顔でほのめかす。


「……さて、まずは武器を選んでもらおう。午前中にも言ったが、この箱にいくつかの武器が入っているぞ」


 彼の言葉をきっかけに、勇者達が並んでいた大きな木箱の元へと群がっていった。


「何がいいか分からないって奴は俺やクオルちゃんにきいてくれ。ま、最初はお試しだ。後で別の武器も扱ってもらうからな」

「あ、あのー」

「ん? 何だ、坊主」


 武器に目を通さず立ち尽くしている櫻谷樹が、オーディアへ声をかけた。その後方には同様に佇む数人の集団があった。


「えっと……杖、とかありませんか?」

「杖? それだったらそっちの端の箱に入ってるぞ。にしても、ずいぶんと珍しい武器を選ぶんだな。杖は刃がなかったり、ただの棒だったりするから、安全だけど攻撃力は低いもんだが……」

「あ、いえ!? 僕は武器じゃなくて魔法を使いたいんです! 魔法を使うための杖はないんですか?」

「――魔法? あー」


 片方だけの瞳が横を向いた。目線の先で控えていたクオルが静かに頷く。前へ出て、淡々とした表情を櫻谷達に向けた。


「今は武器の訓練です。魔法に関しては明日から訓練を開始します」

「え、でも。僕のステータスじゃ」

「得意になれ、とは言いません。……魔法使いであっても、武器の基礎ぐらいは身に着けておくのが良い、という話なのです」


 クオルが自分の腰元へ手を回した。棒状の黒い武器が携帯されている。細い短剣も一緒になって差されていた。


「安心してください。魔法用の杖……《魔杖》と呼ばれる武器がちゃんと存在しています。ただし、魔法を使うにも体力を要します。午前の準備運動で疲れる様であったら、上級の魔法なんてとても扱えませんよ?」

「う……っ」


 樹が顔をしかめる。確かにランニングの段階で息は切らしてしまっていた。元から体を動かすのは苦手だと自覚もしていた。そこで、戦闘において武術・体術を見限って、魔法の習得だけに集中しようと考えていたのだ。


「後ろの皆さんも頑張ってください。戦いに不安を覚えるのは仕方ないですが、やり方を覚えておいても損はありませんよ?」


 彼女の諭す声が彼等との距離を縮めさせる。逡巡していた集団には、魔法に長けた者や生産系のスキルを持った者が多かった。誰もが武器との関わり方を図りあぐねていた。だが、次第に木箱の方へと自ら近寄っていった。

 しばらく樹は棒立ちになっていたが、その場に残されたのが自分だけと知り、やがて渋々と前へ出た。


「――おい、これ銃じゃねえかっ?」

「え?」


 ふと、ある生徒が異世界にはそぐわない代物を発見する。箱から出して外見を同級生達に曝した。

 手の形にあった銃把グリップと、弾丸を吐き出すための長い銃身バレル。指を掛ける引き金や撃鉄といった部品が、銃である事を確実に証明していた。唯一の違いと言えば、表面に複雑な文様が刻まれている所だ。


「俺、これにする!」

「ずるいぞ、てめー!」

「お、俺も!」


 中世のマスケット銃に酷似したその武器を男子生徒達が取り合う。そんな光景に、団長のオーディアが首を傾げた。


「どうしたー? 魔銃がそんなにいいのかー?」

「……団長さん。あの武器は、弾丸を高速で発射する武器で合っていますか? 俺達が知っている代物なら、剣なんかよりもっと強力な攻撃ができるはずなんですが」


 千川原満が話しかける。彼も用意された様々な武器を前にしながら、魔銃だけを凝視していた。


「ああ。そういうことか。……実践してみた方が早いか」


 生徒達の胸中が察せられた。オーディアは銃を奪い合う生徒達の背後に忍び寄り、軽々とその武器を取り上げた。


「人気があるようだから、特別に使い方を見せてやる」


 そう言い放ち、団長は木箱に入っていた小箱から専用の弾丸を取り出した。マスケット風の銃に後方からその弾を込める。ガチン、と撃鉄が静かに起きた。太い腕が真っ直ぐに伸びる。


「そうだなー。……おい、アルク!」

「――はい!」


 修練場の壁際に整列していた一人が威勢良く返事をした。二十から三十代と思しき騎士が多い中、アルクと呼ばれた者のみ年若い様子だった。優真達に近い年齢に見える。


「死ね」


 オーディアが名前を読んだ少年に狙いを付ける。魔銃が淡く光を帯び、引き金が引かれる。即座に破裂音が響いた。


「うおっ!?」


 目を丸くしながら、アルクは真横へと体を滑らせる。大音と共に、後ろにそびえる壁に穴が開く。


「銃弾を――避けたっ?」「アニメとか漫画で見たヤツだ!」「つか、ためらいなく発射したよ、この人!」「死ねって……」


 目撃した生徒が一斉に騒ぎ出した。魔銃の所有権を争っていた数人に至っては、口を開けたまま固まっていた。発砲と、その回避。驚くべき動きは、勇者達に驚愕を与えるのに十分過ぎた。

 一方、狙われたアルクも冷や汗をかいていた。


「な、何をするんですかっ?」

「何って…………お前をこいつで撃ったんだ。魔銃がどんな物か勇者達に知ってもらいたくてな。別に当たっても死なない魔弾だし」


 指導の最初期から浮かんでいた笑顔が、ゆっくりと振り返る。


「今の、見たな? この魔銃で撃ったが、やすやすと回避されちまった。こいつは手軽に扱えるという利点はあるが、こんな風に少し強い相手には通用しにくいっつう欠点もあるんだよ」

「か、彼がとても強いだけでは……」


 千川原満が引き攣った表情で追及した。自分達と年が近いが、あの少年が特別なのだと裏付けを取ろうとしていた。


「いんや。あいつはうちの騎士団でも中級の強さだ。お前らが昨日見たジークなら、弾丸を剣で数分割することぐらい容易いぜ」

「人間じゃない……」


 呆れた、と言いたげに少年は頭を振る。


「はっはっは。お前らもアルクみたいな動きはすぐにできるようになるぜ。何せ、召喚された勇者様なん

だからな。なってくれなきゃ、俺達が困る!」


 悪気なく破顔を浮かべるオーディア。アルクの身体能力は、勇者達からすればあまりにも驚異的だった。しかし、それでありふれた代物だと団長は言ったのだ。加えて、いつかは同程度の力が得られるらしい。

 異世界からの勇者達は、改めて彼等との常識や価値観の違いを痛感した。少し後で、クオルから戦い方(スタイル)や才能によるという助言が足される。耳に入ったのは数人だけだった。



 最初の武器として最も選ばれたのは、剣の類だった。男子生徒は半数以上が好んで手を出している。巧みな扱いを覚えれば、飛び道具の魔銃すら凌駕出来る可能性も示唆されていた。人気と攻撃力の面で評価が高くなったのだ。


「うし! 大体決まったな!」


 オーディアが状況を見て、指示を飛ばす。同じ種類の武器を持った勇者でそれぞれ集めさせられた。剣を手にした者が多く、これだけ三つのグループに分かれた。


「選んだ武器の使い方をこれから指導する。だが、俺とクオルちゃんの二人だけじゃ四十人はとても教えきれない。そこで、だ。騎士団の中から何人か手伝いを呼んである。おい、お前ら!」

『はっ!』


 壁際で待機していた集団が散り散りになって、固まった生徒達の方へと向かった。


「俺達の担当は誰なんだろう?」


 優真は適当に選んだ剣を抱え、近づいてくる騎士達を遠目で見つめた。

このグループは、天王寺衛斗、菅野源太、嶺井紗季、櫻谷樹、皆月優真という五人で構成されている。元の世界で比較的に多く接点があった顔ぶれである。槇永春奈が欠けているが、彼女は手軽さが売りの魔銃を選んでいた。


「――喜べ! お前らは俺とコイツで指導してやる!」

「オ、オーディアさん……!?」

「マジか」

「やべーな、衛斗。無傷じゃ済まなさそうだ」


 片目しかない満面の笑みがそこにあった。騎士団団長オーディアが自ら剣を教えると言っていた。また、もう一人の騎士が彼の隣に立っている。


「……君は、確か」


 優真は思わず口を開けた。見かけたばかりの顔だ。印象深い出来事を通して、脳裏に刻み込まれていた。

 明るめの茶髪と鋭く冴えた双眼。引き締まった表情が誠実な性格を想像させる。腰に下げた剣と騎士の制服が良く似合っていた。


「――お……私は、アルカディア騎士団中級騎士、アルク・ヴァレンティアです。不肖ながら、団長と共に今後の指導係を務めさせていただきます」


 もたつかない敬語を使いながら、彼は勇者達へと名乗った。顔を少し上げ、揃っている五人と真っ直ぐに向き合う。


「あ、はい」


 優真も軽くお辞儀を返し、正面に立った少年へ手を伸ばした。


「俺は皆月優真です。よろしくお願いします、アルクさん」

「……っ」


 求められた握手に、少年が瞳を細めた。自分の方に差し出された掌を睨んでいる。


「あれ、もしかして握手の習慣とかってありませんか? ごめんなさい、つい」

「いえ」


 アルクが首を横に振った。不可解に思われた態度を取り除き、静かに優真の手を握り返す。


「よろしく、お願いします」


 力強い声音が優真に安堵の笑みを浮かべさせた。

 天王寺達も同様に握手を交わし、アルクとの友好を深めていった。高校生とほぼ同年代の騎士であった為、勇者達にとって親しみを覚えやすい相手だったのだ。

 最後の櫻谷樹との挨拶を終えた時点で、オーディアがパンと手を叩く。


「そろそろいいな? 剣の訓練を始めるぞ! まずは簡単な所からだ!」


 大声が修練場内に響く。間近で聞いていた優真達の表情が引き締められた。他所では既に指導が始まっている。彼等も急いで訓練へと取り掛かった。

最初に教えられたのは剣の簡単な扱い方だった。握り方や振り方、立ち方の基礎が含まれる。刃による風を切る音がしばらく続いていった。


「……《剣才》のスキルを持っているとはいえ、お前らはかなり飲み込みが早いな」


 オーディアが二人の様子を見て、意外そうに感心する。


「私は元から剣術を学んでいます」

「俺も、彼女と同じところで剣に触れたことがあります。……剣と言っても、殆ど竹刀ですが」


 嶺井紗季と天王寺衛斗が涼しい顔で剣を振るう。二人の動きは他と比べて、一線を画していた。淀みがなく、研ぎ澄まされた素振りである。


「なるほど。元から経験アリか。それなら《剣才》があるのも納得だ。……で、そっちの奴等は」


 優秀な彼女達から焦点がずれ、剣を握った事が無かったであろう三人に注意が行く。


「――ふん! ふんっ!」

「皆月様、力みすぎです。剣の重さが慣れないのかもしれませんが、もう少し力を抜いてみてください」


 アルクの助言を経て、優真は構えの修正を試みた。


「はい……って、うわ!」


 上手くはいかなかった。脱力の加減を誤り、汗で剣を滑らせてしまったのだ。手中から武器が飛び出そうになり、優真は焦りの声を張り上げる。


「おいおい! 気を付けろよ、皆月!」

「あなたは構えが雑になっています」

「え! マジで!?」


 優真を横目に笑う源太だったが、彼も自分の鍛錬だけで手一杯だった。


「うー」


 訓練用の剣を降ろしたまま、樹は唸った。自分だけ休憩を挟み、素振りの為の体力を回復させている。アルクやオーディアから「少しずつでいい」と容認はされていた。それでも、隣から届く風切り音には居心地の悪さを感じてしまう。


「くそっ」


 小声が吐かれる。早く追いつこう。そう考え、樹もやがて素振りを再開した。おぼつかない剣先が宙に弧を描いていく。


「…………頃合いだな。お前ら、素振りを止めろ。次は《スキル》っつうのを教えてやる」


 唐突な制止が入った。五人が手を止め、オーディアの方を注目する。


「《スキル》には様々な種類がある。自分の動きを操作するものや、自分のステータスを変化させるもの、戦闘系を除けば物体を生み出すスキルとかも存在する。……んで、今回見せるのは剣を使ったスキルだ。おい、アルク」

「はい」


 団長に応答するアルク。その手には抜身の直剣が握られていた。

そして、彼は緩やかに足幅を広げ、適度に重心を落としていく。次に剣道の中段に値する位置へ構えを取った。


「スキル《剛剣》、発動します」


 短く声を発し、アルクが剣を振り上げていく。刀身が頭上付近に至った所で、動きが一瞬だけ止まった。

 剣の表面で瞬く、淡い輝き。間髪入れず、アルクの一撃が空を断つ。ブゥン! と、乱された風が地面を撫でた。風切り音も優真達の物とは段違いだった。


「次は《閃剣》だ」

「はい!」


 オーディアの命令に対し、アルクが素早く剣をひるがえす。再び武器がうっすらと発光した。


「スキル《閃剣》、発動!」


 刃が高速で駆ける。先の一撃とは異なり、速度が格段に上がっていた。


「今のが剣の基本かつ初級スキル《剛剣》と《閃剣》だ。前者は破壊力に優れ、後者は剣の速度に優れている」


 アルクの二連撃を眺め、オーディアが説明をする。技を披露した本人は平然とした顔色で剣を収めた。疲れの色も浮かんでいない。


「《閃剣》って……たしか私も」


 口を開け、嶺井が自分で選んだ剣を見下ろす。


「ああ。勇者によっては最初から持っている奴もいるらしいな。だが、レベルが低い内は下手に使わない方がいい」

「どうしてですか?」

「スキルの動きに肉体が追いつけないことが、稀にある。運が悪ければ骨折だ」

「ええ…………」


 紗季が形容しづらい表情を作る。好奇心が漂っているが、困惑も大きく抱いていた。どちらも強力な技だと一目で理解していたが、付きまとう危険を歓迎出来ずにいるのだ。


「どちらにせよ、本格的なスキルの習得はまだ先だ。今のは剣にこういう技があるっていうのを知ってもらいたかったんだ。しばらくは自分のスタイルを探すことだけに専念しておけ」


 残り半刻程で剣の指導は一旦区切る、とオーディアは最後に告げた。休憩を挟み、新しい武器に挑戦する予定であった。

 ここまで指導を受けた菅野が、ぽつりと天王寺へぼやく。


「……俺、剣はやめよっかな。思ったよりもやりづれえ」

「そうか? 俺はこれにするぞ」

「そりゃあ、衛斗は剣道やってたから馴染みやすいんだろ? でも、俺にはちょっと難しかったわ。カッコイイから選んだんだが、失敗だったぜ」


「スガノ。それなら斧とか大槌(ハンマー)がおすすめだ」


 オーディアが口を挟んだ。筋肉質な菅野の全身を見定め、助言を続ける。


「素振りを見たところ、お前は力任せになりやすい傾向にある。多様性を重視した俺達の剣術よりも、一回の攻撃力に長けた武器の方が単純でやりやすいだろう。ステータスも筋力に特化したタイプだしな。そっちの方がきっと合う」


「そうっすか?」

「ああ。……あと、武器じゃなくて拳闘術も合うかもしれん。そっちでやりたくなったら俺に言え。装備を用意してやる」

「うす! ありがとうございます!」


 二つの選択肢を与えてくれた事に感謝を覚え、菅野が頭を下げる。

実際、彼の指導は的確かつ丁寧であった。厳しい内容だったが、優真達はたった数時間で剣術への理解をかなり深められた。騎士団団長という立場もあり、人への指南には手慣れた面が垣間見える。


「……お前たちはどうする? このまま剣でやっていくか?」

「え」


 近くで話を聞いていたが、優真は自分の方に振られるとは思っていなかった。素振りを止め、深く考え込む。持っていた剣の表面に顔が映り込んでいた。己の双眼に睨み返される。


「すぐ決めろとは言わん。……でも、そっちはもう決心したようだな。思いっきり顔に出てぞ」

「剣……止めます。やっぱり魔法がいいです」


 櫻谷樹は苦い顔できっぱりと断言した。顔が汗だくになっている。他の四人とほぼ同じ訓練をやったのだが、体力の関係で樹だけ酷く消耗していた。


「自分に合ったのを選ぶといいさ。……だがな、時には苦手な分野にも手を出しておけ。クオルにも言われただろ? 魔法使いにもある程度の体力が求められるって」

「……」


 まだ習っていない為か、実感がわかないといった様子だった。指導に対しては小さなお辞儀を返す。ふらつく身体で、残りの時間を素振りに費やそうとした。



* * *


「団長。言わなくてよかったんですか?」

「何がだ?」

「《聖剣》のことですよ。……五人は《聖剣士》のスキルがあるって聞きましたよ」

「ああ……」


 窓の向こう側で空が薄暗くなっている。日が落ちようとしていた。修練場に勇者達の姿はもうない。数度に渡る武器の入れ替えを経て、初日の指導は無事に終わっていた。残っている騎士達が後片付けに徹している最中である。

 そんな時、アルクがオーディアの背中へ質問を投げかけていた。

 武器が入った木箱を二つ持ち上げながら、オーディアはゆっくりと振り返る。若い騎士と向かいあい、穏やかな声を発した。


「《聖剣》は普通の武器とは話が違ってくる。扱うにはもう少し知識や訓練が必要だ。急ぐべき話じゃない」

「でも」

「それに、使わせる場合にはあの《ゼーレス》シリーズになるはずだ。すぐには用意できないんだよ」


 言葉の端に微かな溜息を交え、彼は一つの木箱を抱えるアルクの横に並んだ。


「俺としちゃ、ぶっちゃけ《聖剣士》よりも《聖剣遣い》の方が気になるんだよなぁ」

「……ミナツキ・ユウマですか」

「ああ。知っていると思うが、《聖剣士》のスキルは俺やジークも持っている。そこまで珍しいものじゃない。……だが、《聖剣遣い》なんてのは初めて聞いた」


 皆月優真が最初から所持していたスキルは騎士団の中で密かに話題になっていた。名前が似た《聖剣士》の効果は既に判明している。だが、《聖剣遣い》に限っては詳細が未だに不明だった。


「…………あのスキルが聖剣の使用権を与えるやつなら、今回は六人が聖剣を扱えることになる。戦力としては期待できる数だ」


 ガチャガチャと箱を揺らしつつ、オーディアは影が濃くなった入口に向かう。


「アルク。お前はどう思ってる?」


 何気ないその問いに生まれた、数秒の間。

 少年は温厚を漂わせた皆月優真の顔を思い浮かべ、抱いた印象をはっきりと告げる。


「正直に言えば――――拍子抜けですね」


スキルが出てきました。色々と考えるのが大変です。

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