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―調査4日目― 三羽ガラスと籠の鳥(そして私は青い鳥を探すの)

今回の調査のトピックス

・新キャラ

・女同士のたわむれ(一部キャットファイトモドキ)

「うぉーい、どこに居るんだ。この、ムッツリヤロー」


『番号違いだ』


 ツー、ツー。と電話が切れた。私はすぐさま電話を掛け直す。


「ごめんごめん。ちょっとした冗談よ、榊さん」


『今度からお前の番号は、着信拒否にしようかと考えている』


「えっ、本気で怒ってる? でも双子の美人姉妹を代わる代わる侍らせてる時点でホントにスケ――」


 ツー、ツー。と再度電話が切れた。またまた私は電話を掛け直す。


「――この電話はお客様のご要望によりお繋ぎできません――」


「あのやろぅ。美海、携帯貸して!」


 私は急ぎ、美海からスマホを借り、たどたどしいフリック操作で、同じ番号に電話を掛け直す。


『だれだ……』


「おいッ、本気で着拒する奴があるか!」


「用件は何だ、無いなら切る」


「おぉっと切るな、切るなよぉ。もう、会話の妙味を楽しまないんだから」


『お前との会話は不愉快になることが多い』


「わかったゴメン。茶かしてすみませんでした。でっ、着信拒否を今すぐ解除してそっちから掛け直して。この携帯、借りものだから」


『……』


 ツー、ツーと、三たび、電話が切れた。


「誰に電話してたんですか?」


「ちょっとした知り合いで、今回の事件解決の重要人物キーマン


特種国家公務員そっちがらみの人ですか」


「そっ。日本に今や二人しか居ない【風水士】の一人で、榊峰鷹さかきみねたかさんって人」

「へぇ、すごいですね。もしかして【人間秘宝】ですか?」


 日本には、決して表舞台には立たないが、国家運営にとても関わりが深い特殊技能を保持している者を総称して【人間秘宝】と言う。裏・人間国宝の様なものだ。


「【人間秘宝】となるのかな、このまま行けば。しかし、榊さん前科者だしなぁ。今も保護観察中だし」


「何か、やらかしたんですか?」


「うん。まぁ、どえらい事件をね」


「保護観察中って、誰かに見張られているんですか?」


「そうなのよ。編美あみ結美ゆみっていう双子の巫女姉妹が観察官を担当しているんだけど、二人ともすんごい手練れで、しかも超絶美人なの。で、ここからが話のミソで、その2人は“監視”と言う名目で、榊さんと同棲までしてんの。つまり押しかけ女房状態。そして、なんと榊さんは、どっちも選べないから、二人と関係を持っちゃったのよ。傑作でしょ?」


「それって、ただの二股なんじゃ」


「そうなんだけどね。その双子も“こちら側”の人間だから、ちょっと、世間の常識とか貞操観念が緩くて「全然オッケー」なんだって」


「でもいずれ、どちらかを選ばないと……」


「と思うでしょ? だけど真実はその逆で、むしろ双子がこういう関係を望んだらしいのよ」


「えー⁉ すっごいですね」


 私が得意げに榊さんの話をしていると、榊さんの番号から電話が掛かってきた。


「はいっ。あなたの心の恋人、青子でっす」


『えぇっ! 青ちゃぁん、うちのだぁりんといつの間にぃ⁉』


「その声、編美ちゃん⁉ えっ、なんで!」


『ウチは結美だよぉ青ちゃん……。ところでぇ、さっきの話はホントなのぉ?』


「何言ってんの、冗談に決まってるじゃない!」


『ほんとにぃ?』


「ほんとホントだって! 私と榊さんがそんな間柄になるなんて……」


『なーんで、そんなにパニクってんのー? 宮ちゃーん』


「あっ、今度こそ編美ちゃん。だから誤解だっての!」


『ふーん』


「ていうか、二人ががっちり榊さんの脇固めているのに、どうすれば割り込めるってのよ!」


「えーっ。それじゃあ私たちが居ないときは、ダーリンにアプローチするつもりだったのー? 宮ちゃんのドロボウ猫ー」


「だからそういう意味じゃないってばっ。もう、榊さんに代わって」


『あー、話題変えようとしてるー』


『逃げた逃げたぁ』


 二人とも私をからかって遊んでるな。まったく姉妹揃って良い性格している。


『なんだ』


「榊さんねぇ、意趣返しとばかりに双子を利用するんじゃないわよ」


『ちょっとは俺の気持ちが分かったか?』


「わかったわかった。あと榊さんも二人に翻弄されていることもわかった」


『なに⁉』


「へへん。ただじゃ起きない青子さんなんだから。それで依頼というかお願

いがあるんだけど、いいかな?」


『……』


「W県の竜神温泉、て言う場所の泉質が、どうも霊的におかしいの」


『……』


「それで調査した結果、日高川の龍脈が枯渇しているみたいなのよ」


『……』


「だから【風水士】の榊さんに、龍脈の復活の協力をしてほしいんだけど」


『……』


「ちょっと聞いてる?」


『聞いてる。事情は分かった。しかし今すぐは無理だ』


「なんで?」


『遠い』


「はぁ?」

 この人との会話はたまに面倒になる。端的にしか話さないから、質問を細切れにしないと真実に辿りつかない。


『ダーリン代わってー。あっ、宮ちゃーん。今、私達バカンスも兼ねて、鹿児島に居るのよー』


「なんで、そんな最果てに居るのよ」


『仕事も兼ねてるからだよぉ。青ちゃんが毛嫌いしてる【六波羅探題】のミッションでぇす』


「三人とも、相変わらずあの“化石組織”にこき使われているのね。可哀そうに。じゃあ、いつ頃来られそう?」


『えっとぉ、一か月後かなぁ?』


「なんで、そこまで掛かるの⁉」


『今、幽世の穴が開きそうなのー。それで私たちが修復中なんだけど、ちゃんと治るまで、それ位の時間がかかっちゃうのよー。逆に宮ちゃんに手伝ってもらいたいぐらいだよー』


「へぇ。二人がそこまで苦戦する霊穴なんて珍しい」


『そうなのぉ。とぉっても手が込んでてぇ、素人の仕業じゃないみたぁい』


「じゃあ、榊さんは二人の護衛ってこと?」


『正解でーす。ダーリン、とーっても優しくて頼りになるのよー。昨日だってねー』


『それ以上は喋るな』


 ちっ、せっかく榊さんの弱みを握るチャンスだったのに。


『ということだ。他を当たれ』


 ツー、ツー。と4回目の電話が切れた。そして私の望みも断たれた。

 さて困った。私が知る【風水士】は榊さんしかいない。


「他を当たれって言われてもなぁ……」


「どうでしたか?」美海が心配そうに私を見つめる。「応援は来るんですか?」


「いやぁ、はははっ……。まぁ何とかなるわよ。水龍様が暴れている原因について、周囲の【貴き者(とうときモノ)】たちに話を聞いてこようか」


「聞き込み調査……ですか」


 その後、私と美海は一日中かけて、周辺の寺や神社、霊験あらたかな場所の【貴き者(とうときモノ)】たちに聞き込みを行ったが、有益な情報は得られなかった。


 ――*――


 私と美海は拠点の旅館で夕食後、自室に戻り作戦会議を実施していた。お互いが持っている紙キレを見つめながら、真剣に思考を巡らせていた。


「骨を折った割に。1・1・9」


「ワンブロー。あまり、効果は得られなかったですね。5・3・1」


「ワンヒット。そんなもんよ。アイドルの仕事でもなんでも、華やかな部分なんて一割にも満たないんだから。1・0・9」


「ワンヒット、ワンブロー。だけど、これからどうします。7・5・3」


「ワンブロー。そうねぇ。危険だけど直接水龍様に聞くしかないかなぁ。3・0・1」


「ツーヒット。やりますねぇ。私はやっぱり待機。ですよね。9・3・5!」


「ふー、ワンヒット、ワンブロー。危ないからね、さすがに。5・0・1」


「ツーヒットのまま。いよいよ綱渡りになってきましたし、さすがに足手まといですか……。2・3・9」


「ツーヒット。美海。そんなにしょげないでよ。あんたの身に何かあると。5・0・3」


「青姉さま。ワンヒットに減りましたよ? くくくっ、これだから青姉さまはチョロくて好きなんですよ。ズバリ答えは0・3・9! つまり、お神酒だぁ」


「くっ。せっ、正解よ。ちなみに、あんたの番号は?」


「8・0・1です」


「8・0・1って、『ヤオイ』か。でもあんた百合じゃん。もしくは変態」


「青姉さま。『百合』も『変態』も当てはめられる数字が無いのです。だから断腸の思いで……」


「美海……貴女の心意気、十分受け取ったわ。私の胸で泣いてもいいのよ?」


「青姉さまぁ。まな板で慰めるって言われても」


「はい。一人、断罪ギルティ


 青コーナー【アオコ・ザ・ムネネーナ】のフィギュア・フォー・レッグロック(足四の字固め)が相手に決まった!


 これに耐えられない赤コーナーの【ミミ・ヘンタイ・マジパネー】は必死に畳をタップし、ギブアップを要求するも、全く耳を貸さない【アオコ・ザ・ムネネーナ】どこまでも卑怯だ! これまでの女子力の差に対する妬みと若さへの嫉妬をぶつけているのか? はたまた社会の厳しさを教えているのか⁉


  オーッと【ミミ・ヘンタイ・マジパネー】顔がヤバイ。もはや常人の顔ではない。これは昇天寸前か? 彼女にとって、これは単なるご褒美なのかっ?


 【アオコ・ザ・ムネネーナ】これ以上は制裁にならないと判断。テクニカルノックアウトだ! 【アオコ・ザ・ムネネーナ】の完勝です!


「ヒドイ。あんなに激しく責めたてなくても」


「それにしては、よく喘いでたじゃない。美海、良かったわよ……」


「ホント痛かったんですからね。ケガしたら責任とってください!」


「その割に顔が喜んでいたんだけど」


「そうですよ。新たな快感に目覚めでもしちゃったら、それはそれで責任とってくださいね」


 私と美海は、まるで学生同士のようにじゃれ合っていた。気の置けない相手との旅行は楽しいモノだ。


 そう、旅行ならホントに良かったんだけど、半分は仕事だ。榊さん達を笑える立場じゃないな。


「さっき言った通り、明日は美海、お留守番ね」


「えー。私も青姉さまと一緒に調査したい」


「さすがに危ないのよ。明日は水龍に直接会うし」


「えっ……それって、本当に危険」


 美海の言うことはもっともだが、歩を進めるならこのぐらいしか思い浮かばない。

 どの仕事でもそうだけど、壁にぶち当たったり、プロジェクトの進行が止まる瞬間というモノは必ず来る。その時、物事を先に進めるにはどうすればいいか? 

 答えは「一番難しい道を選ぶ」ことだ。逆に一番まずいのが「待ちの態勢」で日和見ひよりみを決め込むことであると私は考えている。

「待てば海路の日和あり」ということわざもあるけど、それはあくまで天候という、人の力がどうにも及ばないものを相手にするときのみ有効だ。


 今回はまだ人事を尽くしていない。だから、私はそのピースを埋めて、天命を待てる状態にしようと思う。


「【龍穴に入らずんば龍脈を得ず】っていうじゃない。だから、危険でも一度対話できないか試してみる」


「【虎穴に入らずんば虎児を得ず】の龍バージョンですか」


「まぁ、命の危険はあるけど仕方ないかな。今までもこんな感じだったし」


「そうやって! なんで青姉さまは、軽々しく自分の命を懸けるのですか⁉」


 急に声を荒げる美海に、私は少し驚いた。


「なっ、なに。急に⁉」


「青姉さまは、もう少し自分を大切にしてください」


「美海に言われるまでも無く、大切にしてるわよぉ」


「いーえっ。全くしてません! 女としての魅力も捨てて、仕事にばっかり打ち込んで、そんな人生のどこが楽しいんですか。命を投げ出すほど、封地の仕事が大切なんですか。そんなことばかりだから私は……私は!」


「ちょっと落ち着きなさいよ。それに今回、あんた変よ。私に隠し事してるし、妙に突っかかるし」


「何でもありません!」


「何でもない事無いでしょうよ。そもそもあんたがこの案件を持って来なければ――」

 

 と途中まで言って、ハッとした。


 美海は頬を膨らませ、大粒の涙をポロポロこぼしながら、私を睨んでいた。


「なんで、そんなに泣いてるの?」


「泣いでまぜん」


「いや泣いてる。って」


「泣いでなんがいまぜん」


 私は戦意どころか、もう議論する気も失せた。なぜなら彼女は私のために本気で泣いていたからだ。


「ゴメン。悪かったわよ、じゃあ明日も一緒に来てくれる?」


「うんっ。あおねぇさまぁ」


 と、抱き着いてきた彼女をヨシヨシと慰める。


(とは言え、私もこれ以外、手詰まりなんだよなぁ)


 触り心地の良い美海の髪をしばらく撫でつつも、私は思案していた。清姫が言っていた生け贄の少女。水龍が再び暴れはじめた原因。


「青姉さまぁ……」美海は旅の疲れがどっと出たのか、私の(豊満な)胸の中で、眠ったようだ。


「大好きぃ……」


「はいはい」


 おっと、寝言に返事するのはダメだっだ。幽世に連れて行かれちゃうからね。


 うん? 水龍ってもしかして……。一度、試してみるか。

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