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起承

「決めた!俺敬語で生活してみる!」


「は?」



時は7月。夏休み前に文化祭のクラスでの出し物を決めていた。

高校生にもなってクラスで出し物なんて面倒の極みだけど、強制参加だから仕方ない。まあ、うちにはしっかりした委員とリーダーシップのある少女らがいるからきっと問題は起きないだろう。多分。

とりあえず何をするかだけでも決めるとのことで委員長が意見を聞き始めた。お化け屋敷ーとかオカマゲームーとか喫茶店ーとか定番の意見が出てくる。私としては展示を推しておこう。楽だから。

「え、いや展示は流石にないわー」

「そう?楽よ?シフトが来たら座ってればいいのに」

「そーいうことじゃなくてーもっとこうさぁ…あ!劇!劇推します!」

私へのダメ出しから始まった友人の意見は思いの外好評だったようで。

「じゃあ3組はクラス劇ってことでー伝えてくっわー」

普段からだるだるしている担任が夏だからと余計ダルダルしながら冷房の効いた教員室へ逃げていった。それを見送りつつふと気がつく。

「ん。待って希香さんや。クラス劇って決定なの?」

「みたいよー?流石私の発想力!」

そりゃそうだよね。君は私の顔見て思いついたんだろ着想料。

「そしたら何の劇にするー?」

仕切り始めた廉野さんの声で様々な願望が白雪姫だのロミオとジュリエットだの出てくる中で隣の腐れ縁が立ち上がった。

「そこはやっぱ三匹の子豚だろ!」

いやいやいや違うよね。それチガウ。

と思っていたら皆思ったらしくスルーされていた。お疲れ。

「じゃー白雪姫でいー?」

ずいぶんとまとまりのあるクラスのようで演目がものの15分で決まるという珍事態。なのかもしれない。

「キャストはどうしよっかー?」

「とりあえず裏方決めてから後でオーディションとかしなーい?」

「じゃあそれでー!えーっと大道具と小道具と衣装かな?」

「あと練習日程決めたり教室とったりする人と演出!」

やけに詳しい友人達を尻目に私はそろそろと衣装に移動する。手先は不器用でも器用でもない。練習すればそれなりという至って普通の腕である。なのでとりあえず希望者が少ない楽そうな方に入ってみた。

「紅実そっちはいんのー?じゃー俺もー!」

と、思ったら腐れ縁が着いてくる。何だか女子に人気らしいあいつが来ると事態は複雑化を体するので断っておいた。恐ろしい。

「えーと瀬和君はキャストねぇー」

「は!?オーディションは!?てかもしかして王子とか!?」

「そうだけどぉー?」

「無理無理無理無理ていうかお前何決めちゃってんの!?」

「演出だもんーうるさいー」

「は!?え、な、さ、篠井も無理だと思うよな!?」

演出になった(らしい)優杏と幼馴染み兼片思い中(と聞く)の新谷君の茶番は置いておいて。

「丁寧語とか敦紀には無理じゃない?」

一応気遣って助言しておく。忠告ともいう。

「そうかもーじゃあーやっぱ巴月お願いー」

「なんでそこで私に来るかなー?」

「何となくぅー?」

そっかぁー可愛いーじゃなくて私女ですけど。それこそ無理じゃ…

「お、お前になんかできるわけねーだろ!俺がやるし!」

「小学生発言やめよー?だっていくら見た目ぴったりでもー話し方雑だしー」

そうなのだ。我が腐れ縁瀬和敦紀君は見た目が整っていらして王子には向いているのだがいかんせん粗雑な…ワイルドなもので丁寧な物腰の役など出来るはずがない。

「まあ確かにね…」

「イケメンちゃイケメン何だけど…」

「私こびとやりたーい」

「あ、俺騎士やりたいー」

「じゃあ私姫ー」

続々と役希望が届き始めてますよ演出さん

「わあ皆興味うっすうー」

「だって何でもいいし」

皆様正直で…もっとなんかあってもいいのに…

そんなこんなで流れそうになっていた空気に、謎発言が落とされた。

「決めた!俺敬語で生活してみる!」


「は?」




「てゆーか敬語と丁寧語って違うしぃー」

そこじゃないから。



「つまり自分にも丁寧語できるから証明すべくそれで生活するってこと?」

「そっす」

そのレベルで出来ると思って…!?

「無理じゃん?」

「だよねぇー」

友人2人も私と同意見のようで真っ向からの否定が入る。

今まで彼は崩れまくりの言葉を使っていた。先程のそっすはそうですの意味のはず、何だけど。

「まあやらなくてもいーじゃないー?」

「うんうん。姫は由姫だしセリフだけ覚えとけば特に問題ないって!」

ちなみに由姫とはクラスで可愛いと噂のあの子だ。名前も姫だしという事でクラスのご指名を受けて見事姫の座を勝ち取ったらしい。良かったね。

「俺はやります!やるんですー!」

「なんかきしょい…」

ああ今皆が思ったことを口に出してしまうなんて…希香あなた罪な子ね素敵よ。

まあこれを聞いてわかるように謎のですますで、まずやる意味があるのかという問題はあったがとりあえず始めたようだった。




「どうしてこうなった」

えっと…ごめん私にもわからん。

「さらにモテるようになったねぇー」

「優杏もなのか!?俺をおいていかないでく」「うるさいー」

わあかわいそー。

「あーほらまたやってるよ敦紀」

「申し訳ありません、お嬢さま。お怪我はございませんか?」

視線の先には女の子にぶつかってしまったらしく、丁寧に謝る男の姿があった。

ぶつかったとしても転んでないから怪我しないし。ていうかお前は執事か!


1週間たつと丁寧語もわかるようになったらしくさらにグレードアップしはじめ、現在ではこのような状況となる。今まででも顔でモテてはいたが、敬語で頭が良さそうに見えるとのことでファンの方々がお増えあそばされたものだから、いつも放課後にやっている劇の練習ではもうお客様がお入りになられている。早いよ。頭良さそうってなんだよ。意味不明。

「まあまあ巴月、そんな嫉妬しない」

「大丈夫ー巴月にいいかっこしたいんだよー」

「あのねえ…」

さらにモテるようになってから、友人2人がおかしい。それはまあ敦紀の事は好きだけど、弟がいるみたいでたのしいだけなんだけども。

「それを何度伝えても聞いてくれないんだもんなー」

2人ともキャストの練習を始めるので呼ばれていってしまったのを見つつ呟いた。

ちなみに希香は魔法使いらしい。普通の白雪姫ではつまらないと脚本が変えられたと聞いて脱力した。魔法使いってなんだよ。女王だけでいいよ。

「そうなんですか?」

「そうなんですよー…あつ?練習は?」

暇で切れ切れになる思考に邪魔が入った。

「俺の出るシーンではないので。」

さよか。

「あ、」

やっぱ、いっか。敬語わざとやってるなら私の前ではやめていいよとか凄い特別だと思ってる感じだしね。

ていうか隣座るな。昔から君の肩は頭を乗っけやすい位置で眠くなるんだよ。

「いかが、なさいましたか?」

「んーんー何でもない。それ、家でもやってんのかなって思っただけ。」

「口調ですか?家ではさすがに…」

知ってる。やってたらさすがに怖い。

「だよね…」

あ、眠い。衣装班は布を買ってから本格的に始動するから寝ててもいいかな…。だめか。クラス行事だからね。うん。眠い。

「何?前の俺の方が嬉しい?」

うわぁ…この人何言ってんだ…どっちでもいいよ…寝かせろ…

「どっち…も…よ」

「えっそれ…ちょ、おい!寝んなよ!じゃなくて寝ないでください!」


うるさいなぁ。


「寝ないから。ほら練習してきなよ、お客様来たよ?」

「うわ、ほんとだ…す、ね。行ってきます。」

だすね。

まあいっか。あつが楽しそうなら何だってかわいいよ。



「ちょっと、敬語萌えしたとか言えない。」





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