ふたりで ひとつ
性的行為を想起させる表現を一部含みます。あからさまではありませんがご自身のご判断でご閲覧下さい
「・・・・・・っ・・・・・・」
目を見開き硬直している少女。見開いた瞳は男のそれを凝視している
「−−−怖い、か?」
男の押し殺したような声が少女の耳に届く
「・・・・い・・・」
少女の震える唇が弱弱しくーーーニ三度縦に動く
「・・・そ、うだ・・・よなーーー」
儚く怯えるその華奢な体。過去彼女はこのように怯え震えーーー傷ついたのだ
傷つけたくねえ
抱きたい
怯えさせたくねえ
抱きたい
泣かせたくねえ
抱きたい
苦しませたくなんてねえんだ
そんな表情絶対にさせたくねえのにーーー俺は一体何してんだよ
男の欲望に晒された少女が最後に見せた恐怖に、男の最後の理性が発動した
ーーーその瞬間
「・・・怖いけどーーーイヤじゃない、よ・・・」
聞き取れないほどの儚い言葉
怖いけれど
とても とても 怖いけれど
本当に 本当に イヤじゃない
だから
男は息を詰めたーーー何か言葉を言うべきなのだ。これほどまでに自分のような男に対して美しくいじらしい感情を向けてくれる腕の中の少女に。痛々しい程の覚悟でその言葉を与えてくれた彼女本来の優しさに
「−−−−」
言葉が出ないまま、喉がつまったような身体感覚のままの男の先端が、少女の入口にあてられた
「・・・」
少女の名前を呟くことしか出来なかったーーーそれでも全ての愛情をその言葉に込めて
「−−−−う・・・」
苦痛の表情。背けた顔。額に浮かぶ汗。シーツを強く掴む細い指。浮かんだ足は反り、強張る
「・・・い、たーーーーい・・・」
呼吸が旨く出来ないのだろう。実際少女のそこは男の長けた性技にも関わらずやはり殆どの反応は無かった。だが男は舌技などは使わなかった。そのような行為は、性的行為に強い嫌悪感のある処女には忌むべきものだろうと考えたのだ。排泄行為を行う部分に食物を摂取する部分が触れるーーーそのようなことをすれば、恐らくそのようなことをされたであろう過去ーーー忌まわしいーーー記憶がまたもや浮かぶだろうと。清らかな処女がそのような行為を何の知識も覚悟も無くされたーーーメディアに氾濫する女性の反応などは現実にはあり得ないーーーどれだけそれは辛かっただろうか
「−−−く・・・・う・・・ぅーーー」
ゆっくりと、それを侵入させる。体格に比例するその巨きさは、ただでさえ困難な挿入行為を更に困難なものにさせる。少女の経血ーーーそれを潤滑油にし、全てを収めた
「・・・もうーーー止めねえ・・・からな」
熱い呼吸と共に低い声が苦痛の表情に投げかけられる
「もう止めねえ。俺はお前を愛しているーーー愛している女を抱きたいんだ」
きつく閉じた瞳に滲む涙を唇で拭うように触れさせながら、男は先程までの自信無さ気な声とは正反対の強い口調で言った
「だから、このまま抱く」
少女の小さな頭を両手で抱え込み、首筋にあてさせる。その食いしばった唇を押し付けるように
「食いしばるなら、傷つけるならーーー俺を傷つけろ」
男は、自分が少女に与える「本能の傷」をーーー自分にもつけろ、とーーーそう、言っているのだ
「お前の苦痛を俺にも寄越せ。全て寄越せーーー」
動き出す。その本能のままにーーー激しく、何度も何度も何度も何度も何度も
もう 止まらない
止めない
陳腐な言葉だが これしか言えねえ
「愛している」
お前の淡い色合いの細い髪
折れそうに華奢な体 だがひ弱な訳じゃねえ 健康的な瑞々しさに満ちている体
白い手足 小さな唇 高く元気な鈴のような声
小さな顔 強い光を放つ大きな蒼い瞳
何よりもその素直で明るい性格
嬉しいんだよ 俺は すっげえ
同時に苦しいんだ すっげえ
愛しているお前を苦しめてるから 途轍もなく苦しいんだ
分かってくれ 頼む
その苦痛は お前が俺を愛しているから生じるものだと
それは 愛し合っているからこそだと
繋がった部分から伝わってくれ
ーーー伝えたいんだ
何をされているかは、分かった
あの時は何をされているのか全然分からなかったけど
今は、分かる
貴方の体が私の体に入ってきて、それが何度も何度も出たり入ったりしているんだ
痛い すごく 痛い
嬉しい すごく 嬉しい
伝えなきゃ、私が嬉しいってこと。私が痛がっているから貴方はすごく心配して、そんな辛そうな表情をしているんだもの。伝えなくちゃーーー貴方と一緒に、一つになれたことが嬉しいって
「−−−っ・・・」
でも、声が出ない。どうして?どうして?声を出したい。私の気持ちを伝えたいーーー思わず、押し付けられている首筋に歯を立てた。何でそんなことをしたのだろうーーー一瞬聴こえる貴方の苦痛の声
「そ、うだーーー俺を傷つけていい・・・もっと傷つけろーーーそれでいいんだ」
何がいいのか分からない。もしかしたら貴方は私がただ苦しいとしか思っていないのかもしれないーーー違うよーーー違う
「・・・うーーーの、にーーー」
貴方の精悍な体 汗が浮かぶ筋肉 大好き
長い手足 大きな手 太い首 大好き
厚い唇 無精髭も 大きな耳も 高い鼻も 大好き
とっても鋭くて怖いのに すっごく優しい深い瞳 大好き
全部 全部 大好きだよ
ーーー伝えたいのに
「−−−−!」
体の奥の奥ーーーを圧迫された。喉の奥から何かがせり上がってくるような感覚
「・・・ク・・・ッ・・」
また、貴方の声。押し殺したような、くぐもったような低い低い声
「ーーーもうーーー終わる・・・」
終わる?終わってしまうの?
痛みなんて 構わないよ
貴方と離れたくなかった
ずっと一緒にいたかった
物心ついた時からずっと望んでいたふたりっきり
やっとひとつになれた
ひとつだよね わたしたち
ふたりで ひとつ
痛いけれど 嬉しいんだよ わたし とっても
分かって お願い
愛してるから 嬉しいと
繋がった部分から伝わって欲しい
ーーー伝えたいの
ふたりで ひとつ