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発展

性的行為を想起させる表現を含みます。あからさまではありませんが、ご自身のご判断で閲覧下さい

「少女」が「男」と同じ業界に入ったのはーーー貴子に話した通り、多額の負債を返却する為、そして「男」のように強くなりたかったーーーそれは決して嘘では無かった。だが、男性の欲望に傷ついた歳若い女性がホステスならば兎も角ホストになるとは、疑問が残るだろう。しかし「少女」はホステスにはなれなかったーーー男性の欲望の対象になることを深層心理は強く拒否した。勿論女性、そして男性の欲望の対象になる可能性もあるホストではあるが、彼女自身の魅力はそれを殆どの客に求めさせなかった。それはあくまでも幸運であったということと、彼女を常に守り抜く「男」の存在があったとも言える。極稀に客からそれを求められることもあったが「男」はそれを如才なく回避する方法を「少女」に教え、店側にもそれを承諾させた。無論それは「少女」の売り上げがバックボーンになっている。それをしないからこそ「少女」は生来の才能と、酷い暴力に晒された経験を踏み台にーーー本当に傷ついた人間にしか、他人の傷を敏感に察知することは不可能である、本当の「癒しの美少年」としてあのクラブでトップセールスを上げていたのだ

 「男」は「少女」が夜の世界に入りたいと言い出した時勿論反対した。ある程度癒され、目を覆いたくなるような人形状態から回復した「少女」を進学させ、普通の仕事に就くことを願っていた。その為ならば自分は幾らでも稼ぐと、償うとーーーそれでも「少女」は首を縦に振らなかった。早く強くなりたい、地に足をつけて一個の人間としてーーー立ち直る為に。「男」は最後の最後は「少女」に弱い。それは贖罪の意味もあるであろうがーーーならばと「男」は自分と同じ店に勤めるよう提案する。あのクラブはホスト業界では最高クラスに存るし、売買掛けなどの従業員を搾取する等のシステムは無い。ある程度は経営に関わっている自分ならば特例を認めさせることも容易だ。そしてそれ以上に自分の目の届く所に置き守ることが出来るとーーー




自分は寝室のベッドに横たわっているーーそして視界には男がそのシャツの胸元を開け自分の上に覆い被さっているーーーカーテンが閉まっている為かネオンの光はそのカーテンの隙間から微かに届く程度で、室内は非常に薄暗いがーーー男の苦悶の表情ははっきりと認識出来た

「・・・んっーーー」

接吻ーーー深い。下唇を厚い、熱い舌がなぞり口内にゆっくりと入って来た。ぞくりとした感触が身を竦ませるーーー恐怖?

大きな硬い、熱い手が襟元から躊躇うように侵入してくるーーー恐怖?

ベルトが外され、降ろされるーーー恐怖!


雷が鳴ってた よく眠れなかった 施設を出て新しい環境になかなか寝付けなかったんだ

でも窓にあたる雨粒の音がずっと耳に届く内に うとうとしてきた

少し喉が渇いた なんか胸が苦しい 目を開けた

ーーー

一生懸命抵抗しようとしたんだ でも 怖くて 怖くて

 ネグリジェが破れる嫌な音

声が出ない

 破かないでーーーーーー貴方がお祝いに買ってくれたきれいなネグリジェだったのに 

指一本すら動かせない

 髪を引っ張らないでーーー貴方がいつも褒めてくれた髪だったのに

重い

重いよ

 手を掴まないでーーー洗い物とかしてると荒れないようにいつも貴方がクリームを塗ってくれた

息が出来ない

 足を開かないでーーー行儀の悪い私に「女の子が足を開いて座るもんじゃねえ」っていつも注意されたね

何をされてるの?私

痛いとかじゃない

混乱 

哀しみ

ーーー絶望

気持ちの悪いぬるぬるした蟲が体中を這い回って 真っ黒な蛇が私を突き刺して 何度も何度も

助けて

助けて 助けて 助けて たすけて た すけ  て


「いやああああ!」

叫んだ。怖い。震えが止まらない。またあれが始まるーーー体中を蹂躙される真っ暗な記憶が強烈に蘇る。いやだ・・・いやだ!どうして私はこんな目に合ってるの?どうしてあの人はここにいないの?ずっと一緒だって言ったじゃないか!ずっと一緒に生きていこうってーーーどうして私を突き放したんだよ?どうして私の傍にいてくれないんだよーーーどうして、どうしてーーー

「俺はここにいる」

耳に届くーーー物心ついた時からずっと耳に届いていた優しい声

  お前を守るのは俺だ

と、いつも少し乱暴な言葉だったけど、いつもいつもその言葉の裏にはその感情が痛い程、哀しい程伝わってきた

「お前を壊す男は何処にもいない。俺はお前を守る男だーーーだから、安心しろ」

私の意識は外界に反応するーーー子供に、かつての記憶に意識を侵食されていた

「もう二度とお前の傍から離れねえーーーずっと一緒だ。ずっと一緒に生きていく」

何度も何度も貴方は私を突き放した。年齢とか、人間の種類が違うとか、私の幸せの為とかーーー色々な理由で。それでもずっと見守っていてくれたーーーそれがどれだけ私が辛かったかわかるの?突き放すくせにそんな哀しいほどの瞳で感情を向けられている私がどんなに辛かったか。諦めようと、貴方が望む通りに離れて他の世界へ行こうと思ったってもう無理だよ。私は貴方が

「今までーーーすまなかった。だがもう・・・俺はお前を突き放さない。ろくでもねェ臆病な俺だが勇気ってヤツを出す・・・二度と離さない」

抱き締められるーーーそれだけで、もう今までの事なんてどうでも良くなってくる

「愛している」

ひとことーーーそれだけ

子供の私ーーー大人の男性に手を引かれ笑顔で見送る少し若い貴方。何度も何度も振り返った。止めて欲しいと。やっぱり行くなと言って欲しかったあの時ーーー私も臆病だった。貴方が何を思おうと自分の感情を伝えれば良かったんだね

「・・・私も・・・愛してる・・・」

子供の私は泣いている。怯えて小さくなってただ泣いている。震えてただ傷に泣いているーーーどんどん遠くに離れていく。やがて消えていく瞬間ーーーぱっと顔を上げて私を見たーーー笑顔

  じゃあ 私行くね 自分の感情を 伝えられた貴女には もう 私は要らないよ

子供の殻を被って生きてきた私。でももうそれは要らない。一個の男女として愛し合うことを選択したのだから

広い背中にーーー手を回した。震えの止まった手を



男には分かっていた。予測は容易だったーーー少女が怯えること。過去の忌まわしい記憶を思い出すであろう事をーーーだからこそ苦悩した。だからこそ彼女が如何に望もうと煩悶した

壊れてしまうのではないだろうか

その体が 精神が

彼女を喪ってしまうのではないだろうか

だが今彼女は自らの意志を自分に伝えてきた。過去の記憶を思い出し、それに苦しみーーーそれを乗り越えて

愛してる

と自分に伝えたのだ。震えの止まった手が自分に縋り付いて来る。そのどこまでも美しい蒼い瞳が見詰めてくる

抱いて欲しい と

過去の、子供の自分から<発展>する為に

大人になる為に 本当に強くなる為に 一個の人間になる為に

ならば自分も乗り越えるのだ。彼女を人間にする為に、そして限りなく臆病であった自分が強いーーー人間になる為に


「!」

シャツをはだけさせた胸元ーーー厚い生地をゆっくりと外すと、豊かな膨らみが現れた。それに非常に男は驚いた

いつの間に

こんな「女」になっていた?

幼い頃、多忙な施設の園長の手伝いもあって男は少女を何度も風呂に入れた。それは彼女が初潮を迎えるまで続いていた。あの頃の彼女の胸は平らで、腕も足ももっと痛々しい程細くてーーーいつの間にこのような「女」の艶を持ち得た?男の記憶の中では少女はあくまでも「少女」だった。あのクラブに勤めるようになり、胸を強く厚い生地で覆っている少女に男は注意した。ちゃんと下着をつけなければ体に悪いのではないか、と。少女はこれ以上大きくなったら誤魔化せないと笑って拒否した

部屋にいる時位下着つけろよ。形崩れっぞ?

だってこれ以上大きくなったら誤魔化せないもん。少しでも押さえとかなきゃ

何言ってんだ?お前の胸は誤魔化せない程ねえだろーが

そんな風に軽口で笑い合ったこともあった。しかし眼下の膨らみはどうだ?小振りであるが形の良い紛れも無い女性の膨らみ。くびれた腰、髪の生え際の首筋ーーー全体的に丸みを帯びたその華奢な体は記憶の中の少年のように直線的な細い体ではなかった

「・・・そ、んなにーーーじっと、見ないで・・・よーーー」

余りに凝視していたので少女は恥ずかしくなったのだろう。薄暗い室内でもそれははっきりと男の視界に認識できる。その言葉に彼の意識は覚醒し、まるで禁じられているものを触れるかのようなーーー罪悪感と好奇心に近い感情のままその胸に手を伸ばした

「・・・・」

非常に柔らかく、自分の大きな手には完全に隠れるーーー少しでも力を入れたら潰れてしまうかのようにそれは脆かった。それでも張りのあるそれは自分の指を押し返すようにーーー

「・・・っーーー!」

どうしようもなくそれに接吻付けた。弾力のある皮膚を唇で愛撫した。先端を口に含むと華奢な体は弾け、息を詰める様な声が漏れるーーー嬌声

「−−−ん・・・・んっ・・・」

夢中でそれに愛撫を加え、もう片方を指で擦る。潰れないように、壊さないようにーーー先程までの頭の中の高音は収まっていたが、代わりに火傷しそうな程の熱が男の体内に渦巻いていた

男は 興奮していた

「−−−は、あ・・・」

胸から唇を離し、鎖骨に軽く歯を立てその柔らかそうな首筋を味わった。非常に優しく穏やかな甘い匂いーーー女の匂いだ

「あ!」

その手を下腹部を覆う下着に掛けると少女は高い声を上げ、その身を硬直させた

「・・・大丈夫だ・・・怖くねえよーーー」

自然に言葉が出た。彼女は処女と同じなのだ。過去の忌まわしい記憶から、それ以来男性を完全に忌避していた筈だ。恐らく自粛行為すら忌避すべきものだったろうーーー性的行為・性的感覚に対する嫌悪感。それを払拭してやらねばならない。これは嫌悪すべき感覚では無いと


「くっ・・・」

私は歯を食いしばり顔を背けた。胸や首筋に感じるじんわりとした感覚。決して思い出したくないあの夜に感じた感覚とは全く違う。あれは蟲が這っているかのようにただ気持ちが悪くて止めて欲しくてーーー今は違う。もっとして欲しい。もっともっと私に触れて欲しいーーーがいい?これが、愛情?同じ行為でも本当に愛している人に触れられるならこうまで違うものなの?

ーーー待って いけない

私は今日ーーー


「・・・ゆっくり、するからなーーー力抜いて息吐きな・・・」

下着を慎重に脱がせた。非常に淡い陰りが彼女の幼さを現しているーーー溜息のような呼吸を吐く。指をその裂け目にあてーーービクンとまた怯える体を抱き締め、耳に言葉を吹き込むーーーそこは勿論濡れてはいなかった。彼女の肉体は快楽というものを初めて知るのだ。そこが反応していないのは当たり前だ

「−−−だめっ!い・・・・た・・・ぁ・・・」

探るように指を侵入させた。彼女は予想通りに苦痛を訴えた

「う・・・んっーーー」

彼女の様子を見ながら指を動かす。もう止めることは不可能だった。彼女は否定していないのだ。ただその身体的感覚を否定しているだけなのだ。ならば止める訳にはいかないーーーそれが彼女の望みなのだから

「・・・大丈夫か?余り我慢するなよ?唇切れてんじゃねえか・・・そんなに強く食いしばるな・・・」

彼女の背けた唇に血が滲んでいるのが分かった

「・・・ちが・・・私、今日はまだーーー」

指が紅く染まっていたーーー彼女は今日月経周期の終わりーーーだったのだ。用心の為の薄いライナーにそれは全く滲んではいなかったが、内部に入り込んだ長い指にそれは色をつけたーーーそれを女性として恥じているのだ

「・・・構わねえよーーー女なら恥ずかしいだろうが、俺は構わねえ」

本当にそれは気にならなかった。彼女は勿論恥ずかしいだろうがーーー一種の倒錯感が男の全身に湧き上がった。この紅い血は破瓜の血だ。俺はこの女を初めて抱く男なのだーーーと

「・・・だ、だってーーーいい、の?きもち、悪くないのーーー?」

震える涙声が耳に届く。余りにもいじらしい、少女らしい言葉。その不安げな表情

「愛している女だ。何だって構わねえよ。大丈夫だ・・・」

その優しい響きの言葉に、少女は未だ恥ずかしそうであったが一つ頷いた



やがてーーー男は既に熱く膨張した自らをはだけた

少女の瞳が、最後の恐怖に見開かれるーーー




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