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10,メリーさん伝説よ、永遠に

「阿っ呆らし。誰がコスプレごっこなんか………」

 そう言ったものの、マリーは目に驚きを表し、ふるふると表情を動揺させた。

「コスプレごっこなんて、コスプレごっこなんて…………



  はははははは、ちょこざいな、おまえ程度の攻撃そよ風ほどにも感じぬぞ、メリー。

   わたしの名はヘル・メイデン・マリー! 地獄から来たメイドよ!

    メイドだけにおまえもお給仕してきれいさっぱり冥土に送ってあげるわ!

     ええいっ!! 」


 なんだか上手いこと掛けた冗談を織り交ぜて、

「やるわね! 負けないんだから! えいっ! やあっ!」

「ははははは、ぬるいぞ、メリー」

 なんて、二人で仲良くのりのりでバトルごっこに興じている。

「萌え〜〜、萌え〜〜、萌え〜〜!」

 と、美少女二人の楽しげなバトルに石田は大興奮でシャッターを切り、オレと妹は蚊帳の外で棒と点の目で暖かく傍観した。

「兄ちゃん、あたし喉乾いた」

「そうだな、冷蔵庫になんかジュースが入ってんだろう。あっちで飲もうぜ」


 それから小一時間。

 キッチンから居間に顔を出すと、さすがに二人は疲れたように互いに背中を預けて床に座り込んでいた。はあはあ息をする美少女たちを石田は尽きることない萌え欲求にカメラのシャッターを切り続けている。

「ありがとう、メリー。わたし、すっごく楽しかったわ」

「こちらこそありがとうございます。わたしたちいいコンビですよね? また次回のコスプレ会場でコラボしましょう?」

 はあはあ息をつきながら閉じていた目を開いたマリーは、上気する顔に心から満足した表情を浮かべ、言った。

「楽しかった………。思いっきり、メリーちゃんと遊べた………………」

 再び疲れたように目を閉じると、がっくりと首を曲げ、メリーちゃんの肩にもたれかかった。

「マリーさん?」

 マリーの頭からブロンドロン毛のかつらがするりとこぼれ落ち、と同時に、全身がゴールドに輝くと、なんと驚いたことに、黒髪ショートの普通の少女に戻り、ゴスロリの衣装は、ちょっとチープでかわいらしい赤とピンクの半袖ミニスカートのワンピースに変わっていた。

「ううーーん……。あれ? わたし、何してたんだっけ?」

 マリー、いや、メリーちゃん=佐々木芽里衣ちゃんが目を開け、自分の肩を支えてくれている新たな登場人物メリー・ナイトメアに驚き、体を起こした。

「イリュージョン 萌え〜〜〜っ!!!」

 石田。おまえ、もう帰っていいぞ。

 立ちあがろうとする芽里衣ちゃんの膝から黒いゴスロリ衣装を着たゴールドとブルーの瞳をしたジュディーちゃん人形がこぼれ落ちた。気づいた芽里衣ちゃんは拾い上げ、

「マリーちゃん…………」

 しげしげと人形の顔を見つめた。パチモンのジュディーちゃん人形は、とても満足そうに会心の笑みを浮かべていた。

 奇跡が起こったのだ。

 一体化し、再び分かれた二人は、マリーがメリーちゃんの魔の部分を引き受け、芽里衣ちゃんは素直なかわいいミニスカートの美少女として目覚め、マリーはゴージャスなゴスロリ人形に変身したのだ! ……ジュディマリにメリーちゃんに、ええいややこしや。

「マリーちゃん…、今まで、ごめんね。」

 芽里衣ちゃんはそっとマリーの頭を撫で、オレを見ると、

「…………お兄さま………」

 と、恥ずかしそうに頬を染めて微笑んだ。

「うわあ、すごいですね、ゴスロリバージョンのジュディーちゃんですか?」

「え?」

 芽里衣ちゃんは驚いてメリーちゃんを見た。

「ジュディーちゃん、知ってるの?」

「はい。有名な界創堂の原型氏ベレーメガネさんがリ○ちゃんをモチーフに作ったフィギュアを、実寸大ビニール素材で限定生産したマニア垂涎の超レアアイテムですよお!」

「ジュディーちゃん 萌え〜〜!」

 帰れ!

「そうだったんだ……」

 芽里衣ちゃんはまたしげしげとマリーを見つめた。

「ごめんね。わたし、あなたがそんなにすごいお人形だったなんて、ちっとも知らなかったわ……」

 なんでお祖母ちゃんがそんなマニアのレア物を孫にプレゼントしたのか分からないが、分からないから無視しよう。

 自分の素性を知ったマリーの笑顔はますます誇らしげだ。





 その後。


 オレは芽里衣ちゃんの、取りあえず「お兄さま」になって、彼女の家庭教師をしてやることになった。彼女の家にお邪魔して再会した奥さんは相変わらず綺麗で、オレは一瞬逆ロリータを目論んでしまったが、そんな変態的な企みをするまでもなく素の芽里衣ちゃんは超のつく美少女で、オレはマジで彼女のご主人様になることを妄想してしまった。しかし7つも年上の男として……まあこの年齢差そのものは十分許容範囲だとして、男として彼女が二十歳になるまでイケナイ手出しをするわけにはいかず、後7年、この理想の美少女を前に指をくわえて待たねばならない。嬉しくて悲鳴を上げてしまいそうな拷問の日々だ。その7年の間に、コギャルと女子大生を経た芽里衣ちゃんが心変わりしてしまう可能性も十分考えられ、悩ましいことだ。彼女が二十歳になったときにすっかりオッサン化していないようにオレも若い感性をキープしなくては。


 もう一つ。

 風の便りで、その後例のコスプレイベントで、謎のゴスロリ美麗CGフェイスのコスプレイヤーが出没するようになりマニアたちが騒然となっているとか。また関わって面倒な事になるのはごめんだが、果たしてその正体が何者なのか?知りたいような知りたくないような……。

 ゴスロリマリー人形は芽里衣ちゃんの部屋に大切に飾られている。何故かコスプレイベントの日曜祭日には芽里衣ちゃんの都合で家庭教師のボランティア(アルバイトではないのだ)は休みになり、オレは真相を確かめるべくイベント会場に赴くべきかやっぱりそっとしておくべきか、目下悩んでいる最中である。



 おわり。

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