彼女への年賀状が気になりすぎる件
「年賀状この世からなくならへんかなぁ」
「一応聞いたるけど何で?」
「この世にはいろんなもんあるやん?」
「あるなぁ」
「年賀状くらいなくなってもええ思わん?」
「ええけど、何で年賀状やねん、他にもいらんもんいっぱいあるやろ、最優先でなくすもんでもないやろ」
「俺はもう今月中になくなって欲しい、未来永劫、パラレルワールドのぶんも、なんやったら過去に遡ってここ三十年分、いや十年でええわ、譲歩したる」
「だからなんでやねん、理由言えや」
「美雪んとこにな、毎年くるねん、年賀状が、男から」
「そんだけ?」
「そんだけ?立派な理由やん、むしろ他に理由なんて思いつかんやん」
「男からて、友達やろ、お前は一応彼氏やん」
「一応ちゃうわ、ほんもんや」
「年賀状やろ?」
「そや」
「それの何が問題なん?」
「毎年くるねんで」
「年賀状やからなぁ、当たり前やろ」
「小二からずっとやで、おかしやん」
「そうかぁ?普通ちゃうのん」
「お前小二からずっと年賀状毎年かかさず送っとる女子おるか?」
「おらんけど」
「そいつ美雪の保育園からの友達でな、小二の時に北海道引っ越したんやって、そっから来年で十年やで、しつこすぎやろ、どんだけ執着しとるねん、亡霊か、成仏せぇよ、ええ加減忘れろや」
「でも北海道いうことは、引っ越してから一回も会うてないんちゃうの?」
「そんな問題ちゃうわ」
「一年に一度年賀状のやり取りしとるだけやろ、それくらいええやん、彼氏の余裕見せたれや」
「三年前の年賀状見たらな、栃木に引っ越しとるねん」
「そうなん」
「去年から岐阜」
「お、おお」
「わかるか?段々大阪近づいとるやん、次もう多分滋賀やで、もう射程距離やん」
「なんのやねん、お前病気やん」
「病気ちゃうわ、ただ人よりちょっと心配性で愛が重いねん」
「もう直接言うたら」
俺は丁度廊下を通りがかった石田美雪を呼び止める。
「こいつ石田さんが男子と年賀状のやり取りしてるの嫌なんやって」
彼女は首を傾げる。
親友は机に突っ伏す。
「なんのこと?」
かわかみなつきやと地底からの声がする。
「夏樹は女の子だよ」
あーあー。
根が単純な男に簡単に幸せをあげてしもて。
こいつ今年中ずっとニタニタして暮らすやん。
ことあるごとに思い出して機嫌ようなるやつやん。
まぁええか、こいつみたいなイケメンが一人の女子に人生握られてんの見んのおもろいし。
「俺今年年賀状美雪に百枚書こ」
「迷惑やからやめとき」




