神聖樹
僕はエルフ達による歓迎会が終わったあと、村長宅に泊めてもらったんだけど、村長は美少女過ぎて一緒の家にいると思うと、かなりドキドキしてよく眠れなかった。
エルフの人達が着ている服は露出度が高くて、なめし革のビキニを着ていて、男性は上半身裸なのだ。
男性も美形だから上半身裸だとドキドキするのに、美少女達がビキニ姿で村をうろついているのは、高校2年の僕には刺激が強過ぎる。
しかも、エルフは自宅では男性と同じで上半身裸になるらしく、村長は僕を女性だと思い込んでいて、中身は男性だと説明しても信じてくれなかった。
まあ、確かに肉体は女性だけど、やっぱり中身は男性なんだよな……。
あ、そうだ。
僕は良いことを思い付き、【通販】を操作する。
「村長、これを家の中では着てほしいんです」
「カノン様……上質な布の様ですが、これは……?」
「夜の寝る時に着るパジャマと部屋着です」
「こんなに上質な布の部屋着を私に? カノン様が着ている服に似ていますね……」
「はい、僕の生まれ故郷ではありふれた服で、外着、部屋着、寝間着と分けているんです。僕も似たものを着る予定ですから、村長にも同じのを着てもらえたら、嬉しいかなって」
「おお、カノン様からの……ありがとうございます!」
村長は服を受け取ると、土下座しようとしたのでそれを止めた。
村長は僕と同じ服ならば着てくれると思ったが、大正解だった。
これで多少は僕の心の平穏が保たれる。
まあ、村長が美少女なのでドキドキするのはどうしようもないが……。
★
「今日は神聖樹を見に行きたいと言っていましたので、私が案内します」
「ありがとう。助かります」
「いえいえ、神聖樹には特別な不可視の幻覚を見せる結界が張ってありますので」
「え? 不可視の幻覚の結界?」
僕には神聖樹がよく見えるんだけど……なんでだろ?
ああ、もしかして特別な結界だから、村長が事前に結界を緩めていたのかもしれない。
うん、きっとそうだな。
村長の家から徒歩3分の近い場所に神聖樹があるので、割と身近な存在なのかな。
というか、村に入ってからずっと、神聖樹から神気が僕に流れてきていて、精霊の湖とは比べ物にならない膨大な神気をずっと感じている。
だから、昨日のメロンとかパジャマに使用した神気なんてあっという間に回収済みだったりする。
それにしても、神聖樹からは神々しい何かを感じる。
「すごい神々しさですね」
「……カノン様は神聖樹から何かを感じられるのですか?」
「え? 膨大な神気を感じますよね」
「おお、流石はカノン様! 私ですら微かにしか感じられない神聖樹の神気を膨大に感じるとは……流石、ハイエルフの末裔……」
……なんか、また村長は勘違いしている気がする。




