ハイエルフ?
『私が行くわ!』
『いや、俺がメロンが本物か確認にいく!』
『おまえ、そんなこと言いながら食べたいだけだろ!』
『くっ、そういうお前らだって一緒だろ!』
僕はエルフ族のメロン確認権争奪戦を聞かされながら、容姿端麗なプライドのある種族だったんじゃないのか?と思いながら戸惑っていた。
精霊も同じらしく、話さなくてもドン引きなのはわかった。
『カノン、このままじゃ死人が出るよ』
「それは……困るな。何か良い案はないかな」
『それなら……』
「ああ、それでいいかも」
僕は精霊の提案に乗ることにした。
僕としても、そこまでの損失でもないしな。
『えっと、提案なんですが、僕を受け入れてくだされば村の人全員に1個ずつプレゼントします』
エルフ族の村人は20人以下であるのは精霊経由で確認済みだ。
だからメロン20個を無料であげても神気が大量にある僕としては、むしろメロン20個で村に入れるなら、ラッキーである
『……』
あれ?
エルフ族の反応が無いぞ?
もしかして、1つずつでは少なかったかな?と思っていたら。
『約束を破ったら、殺すからな?』
急に怖い声の念話が来た。
『わらわは村長のジフィじゃ。今からわらわが確認に行く。本物のメロンを皆に配れるなら、村に迎えよう。村人は19人じゃが、大丈夫か?』
この怖い声は村長さんか。
しかし、声は凄く若く聞こえるのは不思議だな。
『はい、大丈夫です』
『分かった。すぐに行くから、待っとれ』
★
「待たせたのう……」
村長は10分で僕の場所まで来たんだけど……精霊は30分はかかる距離だって言ってたのに?
それはそうと、本当に村長?
見た目は僕と同じ年くらいにしか見えないんだけど……あれ?
「どうしました? 震えてないですか?」
村長は僕を見た途端、身体を硬直させながら、小刻みに震わせる。
どうしたんだろう?
「も、もしや、貴方はハイエルフさまの末裔ですか?」
「え、いえ、僕は人族ですよ」
「私達、エルフには精霊化の密度が本能的に分かるのですが、貴方さまからは精霊王様以上の密度を感じます。精霊王様以上の密度は伝説のハイエルフさましかあり得ないのですが……貴方さまの外見的特徴は人族です。しかし、その容姿端麗なお姿は我々エルフ族と比べても遜色ありません」
村長は話しながら膝をつき、土下座の格好になる。
いやいや、リアル土下座なんて初めて見たよ!?
「いや、僕は純粋な人族なので、きっと勘違いですよ」
だって、僕は地球から転移した人間だ、地球にはハイエルフという種族がいないから、末裔説も絶対にない。
「なるほど……なにやら事情があるのですね。でしたら、我々も人族として対応させて頂きます。ハイエルフさま、いえ…貴方さまの御名前をお聞きしても宜しいですか?」
「僕はカノン」
「分かりました。カノン様ですね。是非、我々の村でいくらでもお過ごし下さい」
「あ、メロンは?」
「はっ……め、メロン!? し、しかしカノン様から何かをもらうわけには……」
「それだと僕が申し訳なく感じるので、約束通りメロンは皆さんに配りますよ。とりあえず、カットした試食用メロンを食べてみて下さい」
僕は村長が来る間にカットしたメロンを渡す。
「あ、ああ……ありがとうございます。家宝にします」
「いやいや、腐りますよ!」
 




