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宇宙生命体ルガーの来襲により未曾有の危機に陥った日本。
混迷極める時代に、突如として巨大な城が現れた。
緊張状態が続く中、ゆっくりと城門が開かれ、そこから漆黒のドレスに身を包んだ幼女が登場した。
『えー、諸君共。我が名はアルル。我はこの世界を救いに来た。このままではこの世界は滅びるだろう。しかし、我に忠誠を誓うのなら救いの道を示してやってもよいぞ』
アルルが声高々に宣言すると、国民は彼女を神と崇めた。
アルルは超常的なパワーを持っていた。
彼女は見た目こそか弱そうな幼女であったが、彼女が行使する力は本物であった。
さらには、彼女の傍に常に侍っている異形の魔物達。
魔物達は主人の傍で睨みをきかせ、人々を威圧した。
やがて、人々は畏怖の念を込めて彼女をこう呼んだ。
"魔王様"と――。
「くくく、それにしても容易いのう。少しばかり力を使って脅してやったらあっさり降伏しおったわい」
豪奢な椅子に腰掛けたアルルは相貌を崩した。
「流石です、魔王様」
「"先の戦"では不覚をとったが、この世界では本気を出さずとも天下を取れそうじゃ」
「お言葉ですが魔王様、油断は命取りになります。この世界、どんな敵が潜んでいるかも分かりません。それに……」
「なんじゃ、言い淀んで」
「魔物達の餌が必要です」
「なんじゃ、そんなことか」
アルルはつまらなそうに頬杖をついた。
「まあ……七日に一度ほど狩らせたらよいじゃろう」
「何をです」
「その辺にいる人間じゃ」
光が満ちる空間で、八人の少女が円形で向かい合っていた。
「なになに、あの騒ぎ。今度は宇宙人でも来たの?」
「宇宙人っていうか、魔王だって」
「宇宙人だか魔王だか知らないけど、挨拶もなしに日本の敷居を跨ぐなんて礼儀がなってないよね」
「その魔王ってやつ、なんか悪いこと企んでるっぽいよ」
「それは鼻持ちならないよね〜」
「鼻持ちならないよね〜」
「正義の名のもとに退治しないとね」
「そうだね。正義の名のもとに!」
「正義の名のもとに!」
「「鉄槌を!」」
宇宙から突如飛来した怪物ルガー。
それらはたちまち攻撃活動を開始し、日本の文明を崩壊寸前にまで追い込んだ。
そんな時、彼女達が現れたのだった。
彼女達は日本屈指の聖域である大日照神社の遣いであり、数々の奇跡とも言える超能力を行使した。
その力でもって忽ちのうちにルガーを殲滅すると、彼女達は英雄として持て囃された。
やがて人々は、羨望と敬意を込めて彼女達をこう呼んだ。
"魔法少女"と――。