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私のご主人様  作者: 篠原
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尻尾は口ほどにものを言う

・犬目線(最初は子犬から

・なのにも関わらず超冷め切ってる(色んな意味で

・もはや思考回路が犬じゃない。誰だお前状態

・書いてる本人も驚きの不明さ。おれは何処に行って何処に行きつきたいのか。


以上、なんか大丈夫そうだ。って方は強者はどうぞ


「コロ!こっちこっち!!」


そういって、笑いながら手を振るご主人様。

今年で小学校2年生になって、妹もいるせいかだいぶお姉さんらしさが出てきた。

…それでも多少のお転婆は健在であるが。


「聡美、あんまり遠くに行かないのよ」

「はぁーい!さ、コロ行くよ!!」

「ワンッ!」


聡美とはご主人様の名前だ。

物事に聡く、美しい。いつぞやご主人様がそういって私に説明してくれた。

本人的にはしっかり意味を理解していないようだが、あのときのうれしそうな顔は、今でも忘れることができない。


「コロ!それ、とってこーい!!」


言うのが早いか投げるが早いか、体の全体を使って投げるフリスビーは勢いをつけて遠くまで飛んでいく。

最近はそれを追いかけて、できる限り空中でキャッチしてからご主人様の元まで持っていくのが私の仕事である。

ちなみに空中でキャッチするのは、地面に落ちたときよりもご主人様にたくさん褒めてもらうというごく単純な理由からだ。



私は、ある雨の降る日に今のご主人様に拾われた。

その日はいつもより強い雨に、これでもかというほどの風が吹く日だった。


前の主人の都合で、生まれた子犬のうち何匹かは里子に出されることとなって、私もそのうちの一匹だった。

しかし、ほとんどの兄弟が引き取られていく中で唯一残った私は、1ヶ月、2ヶ月、と経つ中でついに痺れを切らした主人によって人目につきにくい夜中にその場所へとつれ


てこられた。


「もっと、飼い主に尻尾を振らないお前が悪いんだからな」


そう言い残して立ち去る主人を、そのときまだ子犬だった私は追いかける術を持っておらず、主人の背中がだんだんと遠くなるのをただぼんやりと段ボール箱の中で眺めてい


た。


それからどんどんと日が経つ中で、ようやく今の現状を理解した私は、どうすることもできず、またどうすることもなくやせ細る体をどこか他人事のように思いながら毎日を


その段ボール箱の中で過ごした。

たまに私を見て立ち止まる人間から、時には餌を貰ってどうにか生きていたが、その人間に拾ってもらうことはなかった。

そして、そんな人間もしばらく経ったらぱたりと来なくなり、また私は一匹になる。


それもまた、しょうがない。

いつまでも来なくなった人間に固執しても、私にはどうすることもできないのだ。

ならばさっさと割り切って、そういう人間もいた。ということで思い出にしまってしまえばいい。


そんな生活を送っていたとき、ついに私の生命を脅かす問題に直面した。


後で聞いた話によるとどうやら台風なるものがきていたらしく、普段以上の風と雨に、終にこれで私の人生は終わるのかと思った。生き物の人生は、こうも簡単に。


でも、それもまた、しょうがない。

いつか終わりは来るもの。それが早いか遅いかの違いだけ。


そう思って重たい瞼を閉じかけたとき、ご主人様が現れたのだ。


「ワンちゃん、だいじょうぶ?」


黄色い傘に、同じく黄色い長靴の少女。

最初は、いつもの人間か。それだけだった。しかし、いつまで経ってもその場から動かない少女に、自分の身など棚に上げて、ほんの少しだけ心配になった。

このように吹き荒れる雨風の中、こんなところに立ち止まって、私のような存在を気にかけて。


早く、帰ればいいのに。


ところが少女は私の重いとは裏腹に、そこから一歩も動かずひたすら私を気にかけていた。

だいじょうぶ?いたいの?きもちわるいの?


私のことはいいから、早くお家にお帰り。


しかし少女は動かない。それどころか、


「ワンちゃん、お家くる?おかあさんもおとうさんも、とってもやさしいよ」


そう言って震える私を拾い上げ、寒くないように、雨風に当たらないようにしっかりとその腕に抱いて、暖かい今の家へと連れ帰ってくれた。


そこから病院に連れて行かれ、次第に回復していく体調を自分のことのように喜んでくれる少女に、私は始めて自分の、自分だけの守るべきご主人様を見つけた気分だった。


今まで、前の主人の家にいたときも、来る人間は特に興味もなくまた主人に興味があるわけでもなかったため、いつも我関せずの態度をとり続けた。

興味もない、愛着もない、そんな私は無関係の人間にわざわざ尻尾を振って、かまってと自ら寄っていく兄弟をいつも横目で見ていた。


その愛想のない態度によって捨てられたことを、野良犬生活をし始めてしばらく経ってようやく気づいたが改める気はなく、いつもそんな調子だった。


餌をやったらなつくかもしれない。そんな人間にも態度を変えることなく、結局見捨てられた。


そんな中で、あの雨の中愛想のかけらもない私を拾い、ここまで育ててくれたご主人様に、私は、残りの人生をご主人様のために使うことをそのとき決意した。



それから数年、私も立派な犬となり、今ではご主人様のよき理解者であると思っている。


「ワンワン!!!」

「コロ偉い!もうほとんど落とさずにキャッチできるようになったね。さすがコロ!!」


そう言って首の周りやら背中やらを撫でて貰う。それを気持ちよさそうにして甘える私。

昔はできなかったことが、今はこんなにも簡単にすることができる。


「ふふっ、コロったら嬉しそう。こんなに尻尾振っちゃって」

「ワンッ!!」

「もう一回したいの?しょうがないね、じゃぁもう一回!」

「ワンワンッ!!」


言い終わるや否や再びビュンッ!と風を切りながら飛ぶフリスビーを、昔の私は想像もできないような姿で追い掛け回す。










そう、すべては貴女の喜ぶ顔が見たいだけ。

こんなのが後4話ぐらい続きます。


それと、お題はここからお借りしました。

http://207.noor.jp/

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