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12話 似ているエルフと恋人たち。


 「この動物の名前は...どう読むの?」


 「これはね、フクロウだよ」


 「フクロウ...目が大きくて可愛い」



フィーは、動物が載っている図鑑を見ている。

今は図書館に居て、興味がある本を探している所だ。

文字が読めないフィーは、可愛いと思った動物の名前を聞いてくる。

動物図鑑に夢中なので、借りていく本が一冊決まった。



 「私は何を借りようかな...冒険譚もいいけど、フィーが居るからエルフに関する本もいいかな?」



本棚を覗いてると、エルフとジャンル分けされた区画を見つける。

種類は...あまり多くはない。

エルフは人間や魔族の里に出てくる事が稀で、その暮らしや文化など知られていない事が多い。

そもそも、人間を嫌っている節もある。

冒険者として活躍するエルフもいるが、どんなに大きな町でも数人ほどしかいない。

身体能力もマナも人間や魔族に比べて高く、エルフという種族自体が強くて冒険者になれば高ランクになるのは当たり前だとか。

不老で寿命がなく、どの子も例外なく容姿が整っていて戦っても強い...うん、そもそも持っている物が違うね。



 「おっ、この本はボロボロで表紙が傷んでるね...歴史がありそうだな」



私が出会ったエルフ達、というタイトルだ。

ページを開くと、簡単なエルフの種類が記されている。



ピュアエルフ、一般的なエルフのイメージにあたる種族。

人間で言えば15~17歳くらいの見た目で、色白の細身で髪の色は金髪の子が多い。

また、他の種族よりは人間に対して友好的だとか。



ダークエルフ、人間の里には滅多に出てこない。

人間で言えば19~21歳くらい見た目で、豊満でスタイルが良く褐色肌で銀髪の子が多い。

人間に対して強い警戒心を持っている。



ローティーンエルフ、大人でも幼くて可愛い。

人間で言えば11~13歳くらいの見た目で、色白で様々な髪の色をしている。

人間や魔族に誘拐されるケースが多く、警戒心が非常に強くて幻の存在。



という事は、フィーはピュアエルフの子供かローティーンエルフか。

ローティーンエルフなら、ほぼ確実に歳上かな?

記憶が戻ったら、意外と大人口調になるかもしれないね。

うーん、でも想像できないな...。



次のページは、日記みたいな内容だね。

この作者は、どうやってエルフと関係を持ったんだろう。

読んでいると、メイナ、マリア、アリス、ルルロアの4人のエルフと旅をしていた書かれている。

けっこう、大所帯な旅だなと思った。

メイナ、マリア、アリスはピュアエルフで、ルルロアはローティーンエルフらしい。

このルルロアが、作者にとっては印象が強かったのか...よく登場する。

とても、悪戯好きで作者が標的になっている文面が多い。

天使のような見た目で、小悪魔のような笑みを浮かべてイタズラを仕掛けてくると書かれている。

その容姿は、桜色の髪と瞳に眠たげな二重瞼で...あれ?

フィーと似てない?



 「フィーがイタズラっ子...いや、今までそんな素振りを見せた事はないよね」


 「...どうしたの?」


 「ううん、何でもないよ」



まあ、この本がいつ書かれた物かは分からないし...。

世の中、似ている人は3~4人は居るって言うからね...他人の空似の可能性があるよね。

読み進めていくと、メイナとマリア、ルルロア、アリスの順に別れ旅を終えたと書かれている。

だけど、ルルロアは置き手紙を置いて突如行方をくらませたとか。

アリスと最後まで旅を続け、レラの城下町で別れたという。



 「このアリスって子は、今でもレラの城下町に居るのかな?」



このアリスって子に会えれば、フィーとルルロアが同一人物かどうか分かるのかな。

まあ、違うとは思うけど。

今の所、最終的な目的地はレラなんだけど...見ず知らずの私達が、いきなり会いに行くのは図々しい気がする。

それで、別人なら尚更気まずいしね。



さて、この本と適当に冒険譚や動物図鑑を持って受付に行き借りる事にする。

借りていられる期限は、一週間。

この町に、一週間も居ないとは思うけどね。

図書館を出た後は、雑貨屋に寄りノートとペンを購入した。

フィーの読み書きの練習のためだ。

あとは、簡単な計算とかの最低限の知識とかね。



宿屋の部屋に着き、さっそく読み書きの練習を始める。



 「これ、持ちにくい...」


 「初めてだと、ペンの持ち方は難しいかもね」



ペンを上手く持てずに苦戦している。

もしかして、指先が不器用なのかな?

やっとの思いでペンを持ち字を書くと、幼児が書いたようなフニャフニャした字になった。

初めてだと、こんな感じだよね。



 「字を書くの...すごく難しい」



でも、一生懸命に書いてて偉いよ!

一文字ずつ、読み方を教えてそれを書く。

嫌がらず、苦戦しながら頑張る姿に心が打たれる。



2時間くらいは経ったのか、すっかりお昼時になっている。

今日は終わりにして、お昼ご飯を食べに行こうと伝えると嬉しそうにしている。

という事で、ムマ達に声をかけた。

隣の部屋を借りているのですぐそこだ。

ムマ達もお昼ご飯を食べ行こうと思っていたらしく、おすすめの定食屋さんに行く。

慣れない事をした反動か、フィーの食欲がいつもより凄く次々とお腹の中へ入っていく。

ムマ達だけでなく、周りのお客さんもビックリして見ていた。

いっぱい食べて、満腹になりウトウトしている。



 「眠っちゃった...おんぶするか」



私は、フィーをおんぶして宿に戻る。

背中に密着したフィーの感触は、暖かくて心臓の音がする。

トクントクンって、小さくて可愛い音がするね。

ムマは、フィーが眠っている隙に頬を指で突いている。

プニプニした張りのある感触に感動していた。



それぞれの部屋に着き、フィーをベッドに寝かせた。

小さく寝息を立てるフィーを眺めながら、私の唯一の趣味と言ってもいい読書を楽しむ事にする。



 「ふふ、至福の時間だね...」



まずは冒険譚かな。

エルフでジャンル分けされた区画から持ってきたので、主人公はエルフだ。

実際に存在した人物とその旅を、フィクションを交えながら記した実話がベースの物語みたいだ。

不思議な内容で、予想ができない展開が続く。

中でも、この主人公のイタズラは子供っぽく少し悪質だけど無邪気さ故で憎めない。



 「蛙が苦手な子に、両手いっぱいに無数の青蛙を隠して近づき目の前で両手を開く...実際にやられたら、飛び上がっちゃうくらいビックリしちゃうかも...あと、気持ち悪くなかったのかな?」



実話がベースだから、このイタズラも実際に行われた可能性があるんだろうね。

それに、この主人公はエルフだから今も存命かもしれないね。

そう考えると不思議な感覚になるな。

あれ? 私はある事に気づいた。

この冒険譚の作者と、こっちの(私が出会ったエルフ達)の作者が同じペンネームだ。

もしかして、この冒険譚の主人公ってこのルルロアなのか?

エルフに関する本も少なかったし、ペンネームが偶然同じになる事はまずないと思う。

でも、日記の内容を読んでいると似たようなイタズラが次々と出てくる。

プレゼントだと言われ、お菓子の缶のフタを開けると無数の蝶が飛び出してきたり...催眠魔法で眠らされて、服を脱がされ一緒のベッドに入って気まずい雰囲気を演出するなど。



 「この、ルルロアって子はすごいね...でも、この作者も文面からは良い思い出のように書かれているね」



眠っているフィーを見る。

記憶がないとは言え、フィーにはイタズラっ子の片鱗は少しも見えないし同一人物ではないと思うけど...。

まあ、フィーがピュアエルフなら話は違うよね。

ルルロアは、ローティーンエルフだって書かれているし。

フィーの手を握り寝顔を眺める。

天使のような寝顔に、ニヤニヤが止まらない。



 「でも、今のまま少しイタズラっ子になっても可愛いだろうね」



何て言うか...目に入れても痛くないってこの事だよね。

血の繋がりが無くて短い付き合いでも、こんなにも愛情が沸くのは不思議だけどね。



本を読むのを止めて姿見の前へ移動する。

イリナと同化したから、透明化の練習をするためだ。

割と苦戦していて、未だに服を透明にする事ができない。



 「体は見えなくなるのに...難しいな」



服を脱いで下着姿になる。

胸が大きいせいでブラのサイズが無く、サラシとパンツだけが姿見に映る。

下着なら体に密着しているし、イメージしやすいと思った。

少しずつ、少しずつ...下着が透ていくように...おっ、できた。

姿見には、何も映っていなくて成功した。



 「身を削って同化してくれたから...できないとね」



このままの状態で服を着ていく。

次は、服を透明化させるイメージをする。

少し透けてきた...でも、半透明でこれ以上は上手くいかない。

透明化を解除すると、どっと疲労感が襲い掛かってくる。

ララちゃんの言う通り、体へ負担は大きいようで不慣れな私にはその影響が大きい。

連続では使えないね...頭が重い...。

とりあえず...私も寝よう。

今寝れば、ちょうど夕暮れ時には起きられるかな?

ベッドに入ると、フィーが無意識にくっついてきて可愛い。

丁度良く、心地いい暖かさですぐに眠りについた。





目が覚め始めて、何か違和感を感じる。

なんだろう?

胸を揉まれているような...あっ、これはフィーだね。

私より先に眠ったから、起きるのは私より早いよね。

目が覚めた私に気づいて、フィーは「おはよう」と言いながら揉み続ける。

触りたい時は、触らせてあげるって言ったから今がその時かな。

無邪気さと幼さ故の欲求だから、フィーにはイヤらしい気持ちは一切ない。

前も思ったけど、無意識に母親を求めての行動かもしれないよね...なんだか子猫みたい。

私は保護者という事になってるけど、母親代わりなのか姉代わりなのか...妹みたいに思っているけど、フィーはどう思ってるのかな?

でも、フィーはそこら辺をよく分かってはいなさそうだ。

もう少し、せめて1年くらいしてから聞いてみようかなと思った。



いい時間なので、私達は身なりを整えて夕飯を食べに外へ行く準備をする。

ムマ達も誘おうと思い部屋を訪ねると、ドタバタして半裸で服と声が乱れているムマが少しだけ扉を開けて顔を覗かせる。

私はすぐに察した。

レイトとムマは恋人だと言ってたもんね...部屋の中で恋人同士でする事...きっと、お楽しみの最中だったのだろう。



 「その、お楽しみ中だとは思わなくて...私達はもう行くから、そのまま続きをしてね?」


 「あの、えっと、うん...じゃっ、じゃあね!」



バタンと扉が閉まる。

すごく気まずい。

でも、愛し合ってるなら自然な事なんだよね。

邪魔して悪い事しちゃったな...。



 「ムマ、どうしちゃったの? ご飯に誘わないの?」


 「えっとね、二人とも大事な用で取り込み中だから...私達だけで、ご飯にしようね!」


 「うん、分かった」



さて、どこで食べようかな?

それにしても、この町は治安がいいね。

女の子二人で夜に出歩いても、灯りがいっぱいで町は明るく憲兵も一定間隔に居て安心できる。

フィーに、何を食べたいと聞くと魚と答えたので...あの魚の絵の小料理屋さんに行く事に決めた。

店に着き扉を開けると、女将さんの優しい声でいらっしゃいと迎えられた。

席に着くと、珍しい料理を勧められた。

川魚の洗いという料理だ。

生魚と聞いて、私は抵抗がある。

寄生虫とかも怖いけど、この町の生け簀で養殖されている魚で寄生虫の心配はないらしい。

あとは、こないだ食べた唐揚げとかの揚げ物も頼む。



ちょっと、ドキドキするけど女将さんの事を信用しよう。

待っていると、生魚を食べやすく切り分け綺麗に盛り付けられた大皿を持って女将さんが来る。

フィーは、その料理に興味津々でフォークで切り身を突き刺し専用のタレにつけて口へ運ぶ。

私も口へ運ぶ。

コリコリして弾力があり、魚臭さは感じない。

美味しい、食わず嫌いってよくないね。

次々と来る料理を堪能して、お腹が満たされていく。

今日も、いっぱい食べたフィーの胃の辺りがぽこんと膨らんでいて可愛い。

私達は会計を済ませ、宿に戻ると共有スペースのソファに座っているムマが居た。

なんだか、お楽しみの後なのか妙に色っぽい雰囲気が出ている。

少し気まずいぞ...。



 「ミルトちゃん、フィーちゃん...おかえり」


 「ただいま...その、さっきはごめんね」


 「いいの、ちょっと早い時間帯に盛り上がっちゃって...少しだけ、恥ずかしかったかな」



ムマの頬が赤くなる。

なんだか、可愛いな。

お楽しみの行為中の事を思い出してなのか、私達に半裸の乱れた姿を見られたからか...ムマの顔は真っ赤になっていた。

その様子を見て、フィーは心配になったようだ。



 「ムマ、病気になったの?」


 「違うよ...女の子には、こうゆう事がたまにあるの...」


 「病気じゃなくてよかった」



純粋で無垢なフィーには、病気になったと思ったんだね。

大人に近づけば、その内に何のことか知る事になるんだろうけど...フィーはどんな反応をするのかな?

私は、本の知識でそれを知ったけど一人で恥ずかしくなっていた記憶がある。

男の子に少し偏見を持っている私にも、その時がいつか来るのかな?

いや、全く想像できないや。

それに、私にはフィーが居るからね。

部屋に戻り寝る事にした。


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