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③
小雨が窓の外の景色を濡らす、六月の終盤。
今日はいよいよ、ハーヴェイとの外出日だ。
約束は午後六時。
今日はお互い仕事なので、アパートに迎えに来てくれることになってるが――。
すっかり身支度が終わった身体で、腕時計をのぞき込む。
「時間になったけど……」
来ない。
アパートの外の物音に耳を澄ませてみても、気配すらない。
おかしいな。
首を傾げていると、スマホが鳴った。
「ん? これは」
優しいピアノのバックミュージック。
アプリ『癒執事』のアラーム機能だ。
聞き覚えのある低声が、優しく言葉を発する。
『お待たせいたしました。主様。お時間です――』
言葉が終わると同時に、スマホから一筋、また一筋と光が溢れる。
「こ、これは」
まぶしい……。
思わず腕で顔を覆ったとき、また言葉が紡がれる。
『癒執事の館へようこそ――』




