③
~メイナード視点~
ほの様を見送り、アパートに立ち寄ってお菓子の材料を保存したその足で、わたくし、メイナードはあちらの世界の屋敷に帰りました。
ハーヴェイさんに会わねばなりません。
せっかく主様がお菓子を用意して待っているのです。
近々、主様の世界に戻るように進言する大事な役目がありますから。
屋敷の執事室の一つの扉をノックします。
「ハーヴェイさん。少しよろしいですか」
返事がありません。
扉を開けてみると、そこは無人です。
ハーヴェイさんが、執事室にいらっしゃらない。
訓練室や庭など、よくいらっしゃる場所を除いてみても、一向に見当たりません。
「……おかしいですね」
自分で言うのもなんですが、勘は悪くないほうです。
ハーヴェイさんがここにいないということはもしや、ほの様の身になにか……?
ひとまず、私は執事室に戻ることにいたしました。
ハーヴェイさんの机の上の前をさっと観察します。先輩執事の持ち場をかってに漁るのは気が引けますが。緊急事態です。
机の上の、読みかけの本が置いてありました。
どうやらあちらの世界の本のようですね。
ですが、いつも読んでいる主様のご著書とは毛色が違います。
ページをめくると、犯罪と下された処分の判例が並べられているようです。
栞の挟まれたページには、暴力事件で捕まった人の拘留機関を示すグラフ――。
ぱたんと、本を閉じました。
「どうやら、急ぎあちらに戻るべきのようですね」




