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⑧
メイナードにおすすめを訊かれたわたしはしばらく考えた。
「うーん。いっそ、美容サロンなんてどうかな? メイナード、おしゃれに気をつかってるし。髪型なんかも変えたら気分も変わるかも」
「主様。お気持ちは嬉しいのですが。わたくしの髪だけは、どうかそのままにしておいていただきたい」
真剣な顔で、いやにきっぱり言うな。
「そうなのー? ぜったいかっこいいスタイルあると思うけど」
「お願いです」
うーん。ここまで拒否するってことはもしかして――。
わたしはある可能性に思い至ってしまう。
髪全体が偽物とか……⁉
え、こんなに若いのに?
いやでもたしかに、オレンジに赤メッシュとか、ウィッグですって言われてもたしかにな髪型だよな……。
やばい、悪いこと言ったかも。
「ご、ごめん。もう言わない。わかった。触れないでおくね」
一瞬、切ない事情に触れてしまったかと思ったが、
「ありがとうございます」
その微笑みがあまりにいつも通りで。
その瞬間のことなんてすっかり忘れて、わたしはメイナードと二人、家路についたのだった。




