④
「ごめんなさい、ボイスさん。ずっとしがみつきっぱなしで。痛かったですよね」
ジェットコースターを降りて、わたしら一行はなんとなく道なりに歩いていた。
「別になんてこたねーよ。ハーヴェイの悲鳴を聞き漏らさねえように必死だったからな」
「……ふん。ボイス。今回は引き分けだな」
「ちぇっ。一声でもあげてくれりゃ、俺の勝ちだったのによ」
「次はもうちょっと大人しいのにしようか」
わたしが立ち止まって指さしたのは――園内に流れる湖を走る、ゴンドラだった。
列はスムーズに進み、あっという間に順番がやってくる。
真っ黒い三日月型のゴンドラにボイスと梅ちゃんが乗りこんだところで、ハーヴェイに囁く。
「じゃ、打ち合わせ通りに」
ハーヴェイも不敵な笑みを浮かべ、そろえた右手を胸にあてる。
「お任せください」
よし。作戦開始なり。
わたしは素早く息を吸うと、わざと不自然にごそごそ鞄をあさった。
「あっ、しまった。あたしさっきのところにスマホ忘れてきちゃったかも!」
ちら、とハーヴェイを見やる。と――。
両手を肩の上にかかげ、目をひんむく動作をする。
「おやおやなんとも、それは一大事ですね主様!」
いや、大根芝居すぎる。
ゴンドラの上のボイスも訝し気に睨んでるし。
ま、いいか。シチュエーションは作れた。
「あの。どうされますか? ご乗船、されます?」
お姉さんにすばやく、ハーヴェイが言う。
「係員様。申し訳ありません。我々は結構ですので、次の方をご案内ください」
「あたしたち、ちょっと見てくるから、ここは二人で楽しんで」
「えっ。ちょっと、ほのさん――」
驚いたように目を見開く梅ちゃんにぱちんと片目をつぶった。
「じゃぁ、ごゆっくり――」




