③
「と、いうわけで、主様の恋の成就のため、こちらの世界で飲み会をセッティングいたしました」
その日の夜。
飲み屋街を歩きながら、メイナードがにこやかに説明する。
「そしてこちらが、助っ人のボイスさんです」
うわっ、出た。
眼帯のコワモテ執事!
こっちの世界風の服に着替えてるけど、全身黒だ。革ジャンだ。
そして一言も発しない!
「ボイスさんはたしかに風貌は少々コワモテですが、きっとお役に立つと思いまして、お連れ致しました」
「ふん。めんどくせぇ。他の世界とかどうでもいいが、酒が飲めるっていうんでな」
「は、はぁ。どうも。……それであの、メイナード」
ひとまず手をあげて質問しておく。
「あたし、お酒ってあんまり飲むほうじゃなくて。体質的に、弱くはないと思うんだけど……飲み会の席が、あんまり得意じゃないというか。気持ちよく酔えたって経験があんまりないんだよね」
「はん、人生半分損してやがんな」
と、ボイスにはバッサリ切り捨てられたが。
「ふぅむ、それはまた、じつに好都合ですね……」
好都合?
「主様には今回、その類稀なる演技力と魅惑的なお声を駆使して酔ったふりをしていただきます! そしてハーヴェイさんに思いっきり甘えるのです! 古代文明の大富豪の愛猫のごとく!」
「おおお……なるほど」
そうきたか。
これまでは、その手のことが上手なあざと系女子を見て感心しきりだったが。……真似してみる価値はあるな。
「コツはおもいっきりふりきることです。キャラクターの強さが大事ですよ」
ふむふむ。
「わかった、やってみるよ。じゃ、セッティングしてくれたお店に行こうか」
そこですでにハーヴェイが待っているという。
「いいえ。主様には少し、このあたりで時間を潰してきていただきたいのです」
「え?」
メイナードは含み笑いをし、片目をつむった。
「少し遅れて登場することでお相手に気をもたせる……うーんさすがはわたくしといいますか、完璧な恋愛成就プランでございますな!」
「そんなもんかなぁ」
「いいから早く飲ませろ。だりい……」
ま、いいか。
恋愛に関してはレベル最弱の自覚があるわたしは、ひとまず言うことをきくことにしたのだった。




