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「ふぅむ、思いのほか時間が経ってしまいました。主様、コップが空になっていますね。ドリンクをとってまいりますゆえ、しばしお待ちを」

「ありがとう……」

 メイナードに空のプラスチックのグラスをわたし、カラオケルームの天井を見上げる。

 ……ふう。ソフトドリンクしか飲んでないとはいえ、雰囲気に酔ってしまった。

 時計を見ると、もう十九時前だ。二時間近く歌ってたんだな。



「そろそろ帰らなきゃね。ハーヴェイ、一曲も歌ってなかったけどいいの? もったいないよ」

 さきほどから直立で座っている彼に水を向けると、

「いえ……そのなんというか。圧倒されてしまって、それどころでは……」

 なんだか余裕なさそうな声が返ってきた。

「あ。もしかして、こういうところ苦手だった?」

 うむ、公式設定に『カラオケが苦手』はないが、そりゃ当たり前か。中世ヨーロッパふうのハーヴェイたちの世界にカラオケはないだろう。




「ごめん、気づかなくて。無理させちゃったね」

「いえ、決してそういうことではなく……その」

 きわめて言いづらそうに指の甲を顎に当て、ハーヴェイはうつむいた。

「……主様の声は、ふしぎですね。とても耳に心地よいのですが、なんというか。普段のお声とは違って、心がぞくっとするようななにかがあります」

「……ん?」



 ……ふふん。そうか。

 顔はともかく声だけはいいって、昔から言われてきたからな。

 セクシーボイスもいける。

 ちょっとふざけてみるか。

 そっと、ハーヴェイの手に、手を重ねてみる。



「あ、主様……?」

「いつでも甘えていいのよ……坊や」

「……からかわないでください……」

 赤くなっちゃうところが、かわいいなこいつ。

「それに、メイナード……。あいつの芸事の実力も相当で。引けをとらない主様もすばらしかったですが……」

 ふふふ、もっと褒めろ。

「ですが……その」

 称えよ……ふっふっふ。

「メイナードと楽しそうにされているところを見ると。なぜか、モヤモヤして……」

 ふっふっ、っふ……?

「よく、わからないのですが……。心がざわつくんです」

 あ……。

 ずっきゅんと脳内で音がした気がする。

 ――はい、嫉妬される台詞大好物ですけどなにか?



「主様のお世話は……ほかの誰にも、任せたくありません……」


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