③
たぶん、それからだった。
ほんとうに微妙な変化だが。
秋良がずっと一人で勉強することが多くなった。
「……」
小三女子に将棋の大手をとられながら、わたしは後ろの机で一人、食えない表情で、鉛筆を動かすその 顔を見て思う。
思えば彼、今までさりげなくではあるが低学年の子たちに自分から声をかけてくれたんだよな。
なんだかんだちびさんたちから人気で。
だからあんまり気にしたことなかったけど。
なんかあったのかな……。
学校の先生に申し送りしても、元気にやっているということだったし。
気にしすぎか。
「ほのせんせい」
「のわぁっ!」
考えていたら本人の顔がいきなりドアップにあって驚く。
「どした、秋良?」
「先生こそどうしたんすか? さっきから呼んでもぜーんぜん気付かないし」
「ごめんごめん。ちょっとぼけっとしてたわ」
「これ。修学旅行のお土産でっす」
差し出されたのは、黒いシンプルな手のひらサイズの袋をシールで止めたものだった。
「お、サンキュー。なにかなぁ?」
東京タワーのストラップかな?
お守りかな?
「すごく楽しかったって言ってたもんね」
どこが一番よかった? って訊いたら、彼が『そりゃ超きれいなホテルっすね』と答えたことは、引率の先生方には黙っておくことにした。
「たいしたもんじゃないっすけど。まぁもらってください。……じゃ俺、帰る時間なんで……」
「あ、うん……。気をつけてね。さよなら」
ランドセルの背中を見送りながら、やっぱりなんか引っかかる。
土産渡すテンションも低いような……。




