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 ついに。

 ついに来たよ握手会。

 わたしは今、舞台上に続く長蛇の三列のうち、左の花谷さんの列に並んで、どきどきわくわく状態である。

 列は順調に進み、やばい、前に残すはあと3名……!



「主様」

「うわっ。は、ハーヴェイ……」

 こういう心境のとき急に声をかけないでほしい。

 ハーヴェイは難しい顔をしてたたずんでいる。

 調査とやらは終わったんだろうか。



「やはりここ、怪しいです。グッズ売り場と書かれた場所で……身体を縮められた執事たちがケースの中に閉じ込められていて。悪魔たちの仕業かと……」

「あ、ああ~」

「くっ。……あいつらもきっと懸命に戦ったんだろうに。リーダーの俺がついていさえすれば」

「うーんそれは、フィギュアって言ってね……」

「かわいいね、その髪飾り」

「もうハーヴェイはまた、そういうのいきなりやめてよ」

「主様。俺はなにも言っていませんが」

「……ん?」



 ハーヴェイと同じ声が、話しかけて……。

 わぁぁぁぁ。

 気が付いたら目の前に、柔らかさわやか茶髪のイケメン、花谷さんが微笑みながら、わたしの前髪に留めた青い花のピンを指示していた。

 順番来てたぁぁぁ。



「は、はい! ハーヴェイのイメージカラーの濃紺で……!」

 推しの声優さんだ……! 感激過ぎる。

「おいお前。主様になれなれしい口をきくな」

 ぎょっとする。

 ハーヴェイが鋭い目つきで、花谷さんにくってかかっている。



「ちょっと、このお方は我々がおいそれと話しかけていい方じゃないから!」

「わぁ、すごい完成度のコスチューム。ハーヴェイそのものだね。嬉しいな」

 だが花谷さんは一向に気を悪くしたふうもなく、目を細めてハーヴェイに応対してくださっている。

「なっ、オレと声が全く同じ……⁉ まさか主様をかく乱させようと。さてはお前、悪魔の首領だな。なにか特殊な術でも使ったのか!」

「うーんきみ、ほんとにハーヴェイにそっくりだね! 声まで似せてくれるなんて。これからも『癒執事』をよろしくね」

「オレのほうが術を使っただと? 曲者! やはり悪魔族の一人か……!」

「ハーヴェイ、だから違うってば」

「悪魔族の設定まで知ってくださっているんだね。すごいなぁ」

「あの、この人のことは気にしないでください」



 無理やりハーヴェイを押しのけ、ドキドキしながら花谷さんの差し出された手を握る。

「ずっと声に癒されてました! ありがとうございました!」

 言えた……!

「それはよかった。これからもよろしくね」

「あ、主様。なぜそんな怪しい男と……!」

 ハーヴェイは複雑そうに顔を顰めているが、こういうちょっとあれなファンも中にはいるのか、花谷さんは戸惑いすらせず通常対応してくださった。

 ああ、なんとお礼を。

 他作品も推し続けます。声優様。

 わたしはこれにて、大大満足なはず、だった。


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