09話 Sランクの冒険者
吹き飛ばされ転がりながら背中から着地する。
爺ちゃんから受け身教わってて助かった・・・。
オークのほうを見ると、手をこちらにかざしていた。
まずい、魔法が飛んでくる。
オークが手から小さい石の礫を飛ばしてきた。
それを、転げまわりながらギリギリで避ける。
そのまま、また逃げる。
ただ、オーラのおかげでましになっているがそろそろ体力がきつい・・・。
問題なのが残りの魔力だ。
オーラによる身体強化はあまり魔力を使わないが、もう2時間近くオーラを作りっぱなしだ。
あと、生活魔法を数回、さっきの風魔法で魔力がやばいのである。
もしさっきのように距離を詰められてもまた逃げ切れるかは分からない。
一か八か殺しに行くか?
いや、あのオークを殺しきれる魔法を扱えるのはせいぜい後2発だ。
危なすぎる。
それに、俺は魔法の命中精度が悪い。
最低でも3メートルいや2メートルは近づかないと当たらない可能性が高い。
そしてまた、オークが魔法の準備をしている。
次は槍状の尖った石が飛んでくる。
足元に飛んできたのでジャンプして避ける。
しかし、それを読んでいたのか足元に沼が生成されている。
それに、気づいたが魔法の詠唱は間に合わない。
両手に魔力を込め、全力の風の生活魔法をぶっ放す。
そのまま一回転をして沼の奥に着地する。
そしてまた、走る。
非常にまずいあと一発分しかない。
このまま助けが来なかったらどうしよ・・・。
不安が脳裏をよぎる。
このまま捕まったら殺されるんだろうな・・・。
そんなことを考えながら逃げているとオークがこちらを追いかけるのをやめ、違う方向へ走り出した。
諦めてくれたのか・・・。
いや、まさか!?
その方向を見ると二人の夫婦が居た。
急いでその方向へ走る。
まずい、あのオークあの夫婦を殺す気だ。
夫婦がオークに気づく。
「きゃあぁぁぁぁ!!」
「オークだ母さん逃げろ!!」
急いで追いかけ襲い掛かるオークと夫婦の間に立つ。
「ここは俺が足止めします!二人は早く逃げて!!」
「でも、しかし・・・。」
「いいから早く逃げろ!!」
「ああ、分かった。」
夫婦が逃げるのを背にオークと対峙する。
何やってんだ俺。あのまま逃げちまえば良かったのに。
戦っても死ぬだけなのに。
馬鹿野郎だよ俺は。
体が勝手に動いちまう。
ああ、俺爺ちゃんの孫なんだな・・・。
一発だ一発で決める。
そのためには、至近距離に近づく必要がある。
覚悟を決めろ。
俺は、爺ちゃんから昔教わった3戦立ちをする。
確か安定した立ち方だとか言ってたような気がした。
そして俺は、右手にありったけの魔力を込め魔法の詠唱そして、魔闘法で横腹に魔力を集める。
横腹以外に斧を当てられたら死だがこれはもう賭けだどうにでもなれ。
「ウガアァァァ!!」
オークが咆哮し、斧を振り上げた。
そして狙い通り俺の横腹に斧をフルスイングした。
ズバン!!
俺の腹に少し刃が入りこんだが痛みは感じない。
オークは斧が腹を貫通しなかったことに驚いたのか固まっている。
チャンスだ。
集中しろ。
「ファイアカッター!!」
俺の出し惜しみ無しの一撃。
オークの首は両断される。
俺は、その場にうつ伏せで倒れこむ。
「勝った・・・。」
生きてる・・・。
もう魔力はギリギリ、意識を保つのが精一杯だ。
安心したら、横腹の傷が痛い。
下手に動いたら傷口開くなこれ。
うつ伏せの状態が苦しくなり傷口が広がらないようにゆっくりと起き上がると。
オークの群れがこちらに向かってくるのが見えた。
「嘘だろ・・・。」
そういえば今朝、師匠がオークの群れが来てるとか言ってたのを思い出した。
この場から逃げようとするが、俺の体は思ったより体はボロボロだったみたいだ。
オークの一匹が俺がさっき倒したオークの斧を手に取りこっちに近づいてくる。
動けない。動いてくれよ俺の体。
ああ、ここで死ぬのか俺は。
嫌だ死にたくない。
明日には帰れたのに。
まだやり残したことがいっぱいあるのに。
嫌だ嫌だ誰か助けてくれ。
願いも虚しく斧は俺に向けて振り落とられた。
フェリアは村へ帰るため空を飛んでいた。
「ん?あそこにいるのは・・・。」
森に人がいることに気づいたフェリアは森に降りた。
「おい、お前らこんなところで何をしてる。危ないだろうが。」
そこに居た子供はダリア、オキア、メリアだった。
「「「フェリアおばさーん!!」」」
「お前らどうしたんだそんなに泣いて、村で何があった?」
「村にオークが出て、一緒に居たフェリアおばさんの弟子のおにいさんが、俺が時間を稼ぐから助けを呼んできてくれって。」
「それでね、さっきフリップスおじさんに会ってお兄さんの所に向かったの、それで安全な場所に居て昼過ぎになったら村に戻って来いって。」
フリップスが向かってるなら恐らく大丈夫なはずだが・・・。
もしフリップスが向かう前に・・・、いやあいつならきっと大丈夫だ。
「分かった。お前ら一緒に村に戻るぞ。」
「お兄さん大丈夫かな・・・?」
「ああ、あいつならきっと大丈夫だ。なんてったって私の一番弟子だからな!」
正直不安だ。だが、あいつはあいつの思ってるより強い。
子供達を連れ村に戻るのであった。
ブオン!!
俺は死を覚悟して目を閉じる。
ああ、死ぬときって思ったより痛くないんだな。
てか、これ死んでるのか?
全然体の感覚とかあるんだけど・・・。
「おい、いつまで目閉じてんだ助けに来たぞ!」
そこにいたのは大剣を持った男だった。
「あなたは・・・?」
「俺は、フリップスだ。お前よく頑張ったな!後は俺に任せな。」
どうやら、助かったようだ。
安心して緊張が解けたのか、俺はそのまま倒れてしまった。
「さて、おい豚ども俺が相手になってやる。かかってこいや。」
オークが一斉に襲い掛かってくる。
だがその攻撃が届くことはない。
攻撃が届く前に全て切り捨てられているのだ。
それもそのはず彼は冒険者の中でも数少ない強者。
Sランクの冒険者なのだ。
オークなど彼にとって10匹も100匹も変わらない。
あっという間に30匹は居たオークの群れを全滅させてしまったのだ。