07話 森の中
5日目の午後、俺は師匠と村周辺の見回りに来ていた。
村周辺の魔物はあまり多くはないが、村には魔物と戦えるような人はいなく、毎日見回りをして村に被害が起きないようにしているらしい。
師匠から出発前に木刀を一本渡された。
「歩いてる間暇だろ、魔力をオーラにして体に流してみろ。」
「はい!」
確か、魔力を体内で練り上げ、オーラを作りそれを体に巡らせる。
おー。体に力がみなぎってくる感覚がする。
「よし、そのまま木刀にも流してみろ。」
魔力が流れている線をそのまま木刀に繋ぐイメージでやってみる。
木刀に魔力が流れているのを感じる。
成功してるのか?
「いい感じだな。そのままにしてな。」
「はい。」
どうやら成功してたみたいだ。
それにしても、不思議な感覚だ。
体がとても軽く力がみなぎってくる感じだ。
今の俺なら体育の成績上位は狙えるな。
「オーラは未熟は使い手が未熟だと漏れ出る。その漏れ出るオーラが少ないと相手が弱いと判断して、魔物が嗅ぎ付けて寄ってくるんだ。いつもなら私がわざと少し出すんだが、今日はお前がいるから大丈夫だな。」
なるほどつまりおびき出して狩るってことか。
いや、待てそれだと・・・。
「すいません、今俺囮になってます?」
「ああ、調整むずかしいんだよオーラちょっとだけだすの。おっ、そんなこと言ってたら来たな。」
正面を見ると、でかい熊が一頭向かってくるのが見えた。
「うわぁぁぁぁぁぁぁ。前からやばいの来てますよ!」
「あれは、ブラッドベアーだな。ほら血で爪が赤いだろ、そこから名付けられたんだ。」
「やばいです。もう目の前まで来てますよ。」
「大丈夫だよ。あれくらいならお前ならたぶん倒せる。」
「いや、無理に決まってるでしょうがぁぁぁ!!」
すると師匠は、俺の前に立ち腰にぶら下げていたダガーを手に持った。
「じゃあよく見とけよ。」
ブラッドベアーは師匠の目の前に立ち、血で染まった爪で攻撃を仕掛けた。
しかし、師匠の突き出した腕に当たり爪が砕けた。
そのまま、手に持ったダガーでブラッドベアーの首を一刀両断した。
いやいやいや。
いくら師匠が強いと言っても、いくら何でも強すぎじゃないですか。
師匠って一体何者なんだ?
「どうだ、お前でも倒せそうだっただろ?」
「いやいや、あんな攻撃俺が受けたら即死ですよ。そんなことより一体師匠って何者なんですか?昔、有名な冒険者だったりしました?」
師匠は少し考えるような表情をした。
「・・・・・私は勇者アガルと同じパーティで冒険者をやっていた。」
「勇者と同じパーティ⁉。」
「ああ、魔王との戦に敗れてからは、冒険者を辞めてこっちに移り住んだんだ。」
「なんでそんな強いのに冒険者辞めっちゃったんですか。」
「仲間もその戦いで勇者が死んだのは知ってるだろ。その後結果パーティを解散したんだ。一人でこのまま冒険者続けるのも疲れてな。こっちに来たのは穏やかに過ごしたかったからだ。本当は弟子なんか一生取らないつもりでいたんだがな。」
「それならなんで俺のこと弟子にしてくれて、こんなに良くしてくれてるんですか?」
「お前あの場で私に見捨てられてたら、死んでるだろうが。」
「ほんとに感謝しております。」
「それに、お前にはアガルと同じ末路を辿ってほしくないんだよ。あいつは私から、いや誰から見ても最強の勇者だった。誰もあいつの勝利を疑ってなかったんだ。だがその最強が負けたんだ、勝てないんだよ魔王には。アガルとの戦いで弱った魔王が回復した時がこの世界の終わりだ。そうなる前にお前は帰れ。」
「俺がこの世界に残ったら現状は変わりますか?」
「馬鹿な事考えてるじゃないよ。確かにお前は犬神様に選ばれた、勇者になる資格があるのかもしれない。だけど、お前と同じスキルを持つあいつでさえ負けたんだ。お前がこの世界で戦ってもどうにもならん。無駄死にするだけだ。」
師匠からみても最強の勇者。
そしてそれに勝つ魔王。
無理ゲーだな。
「あの岩でいいだろ。あれに残りの魔力で3発撃てるくらいの出力で撃て。」
魔力の使い方はだいぶ慣れてきた3発撃つくらいなら余裕だ。
そして魔法を3発撃ち俺は気絶した。