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第25話「ジェレマイア村:4」


それはもう遥か昔のこと。

ジェレマイアの地に、一つの村があった。


緑や作物はあまり育たなかったが、地下には鉱石が潤沢にあり、村人たちは発掘した鉱石を街で売ることで生計を立てていた。

あるとき、街の騎士が村を訪れた。

騎士は傲慢な性格であるとして街でも悪名高く、発掘した鉱石を譲れとしつこく迫った。

頑なに断られた騎士はしぶしぶ引き下がったが、代わりに村人たちに向かって恨みつらみを吐き散らした。

そうして、駆けてきた馬で去る際に、彼らに向かって呪詛を残した。


"未来永劫、この村には落雷とともに災いが下り続けることになるだろう"


以来、村には落雷とともに殺人鬼が現れるようになった。

殺人鬼は、夜な夜な村内に現れては、人々を殺めていった。

ひとり、またひとりと。


あるとき、一人の若者を筆頭に殺人鬼を捕らえることに成功した。

殺人鬼の正体は、あの騎士だった。

村の長は騎士を許さず、その首を落とし村の外れの高台に埋葬した。


ようやく村に安息が戻ったかに思われたが、騎士の死後もなお災いは続いた。

落雷とともに、首なしの騎士が現れるようになったのだ。

成すすべもなく怯える村人たちは、最後のあがきとして、坑道を根城はもう遥か昔のこと。

ジェレマイアの地に、一つの村があった。


緑や作物はあまり育たなかったが、地下には鉱石が潤沢にあり、村人たちは発掘した鉱石を街で売ることで生計を立てていた。

あるとき、街の騎士が村を訪れた。

騎士は傲慢な性格であるとして街でも悪名高く、発掘した鉱石を譲れとしつこく迫った。

頑なに断られた騎士はしぶしぶ引き下がったが、代わりに村人たちに向かって恨みつらみを吐き散らした。

そうして、駆けてきた馬で去る際に、彼らに向かって呪詛を残した。


"未来永劫、この村には落雷とともに災いが下り続けることになるだろう"


以来、村には落雷とともに殺人鬼が現れるようになった。

殺人鬼は、夜な夜な村内に現れては、人々を殺めていった。

ひとり、またひとりと。


あるとき、一人の若者を筆頭に殺人鬼を捕らえることに成功した。

殺人鬼の正体は、あの騎士だった。

村の長は騎士を許さず、その首を落とし村の外れの高台に埋葬した。


ようやく村に安息が戻ったかに思われたが、騎士の死後もなお災いは続いた。

落雷とともに、首なしの騎士が現れるようになったのだ。

成すすべもなく怯える村人たちは、最後のあがきとして、家屋を手放し地中に潜ることを選んだ。

坑道を住みかとし、その上に村人たちの墓を立てて死を装うことで、生き抜こうとしたのだ。


「これが、この村の血塗られた歴史だ」


リオラの語った村の歴史に、私は言葉が出なかった。

フィオンやミサンナも言葉を失ったように呆然としていたが、ややあってミサンナがぽつりと言葉を発した。


「だから、地図にもなかったのね……」


膝の上で両手を組み、思案するようにうつむいていたリオラが、ふと顔を上げた。

その顔にはいつもの穏やかな笑みはなく、決意の込められた眼差しが真っすぐ私に向けられる。


「アネリ、君は俺に尋ねたよな。村に案内したのには何かわけがあるのだろうと」


そう聞かれたときのことを思い出し、頬に柔らかな唇の感覚が蘇る。

だが、彼の真剣な表情を見れば、今彼が冗談を言っているわけないことくらいすぐにわかった。


「その首なし騎士……デュラハンは、今なおこの村に出現する。そうなんでしょう?」


「ああ、その通りだよ」


重々しくつぶやいたリオラに、黙って話に耳を傾けていたフィオンは「つまり」と補足を始めた。


「その首なし騎士サマとやらを退治するのを手伝ってくれって話?」


リオラは懇願するような眼差しで私たちの顔を見回したが、その顔つきはすぐさま諦念に染まる。


「できることなら、頼みたい。だけど、無理強いは……」


「わかった」


彼が言い切る前に、私は立ち上がった。

我ながら思い切った決断だと思う。怖くないと言えば嘘になる。

だけど、とにかく助けたい。その一心が私を突き動かす。


「やろうよ、二人とも」


こぶしを固め「お願い」と念を押すと、考え込むようにうつむいていた二人の顔に、決意が浮かんだ。


「さっき、遠雷が見えたわね。雲の流れからして、間もなくこの近辺でも雷が鳴りはじめると思うわよ」


ミサンナの言葉に、村に入る直前遠くの空が光っていたことを思い出す。


「やれやれ」


頭痛がするのか額を抱え始めたフィオンは、気だるげにため息をこぼすとミサンナの言葉に続けるように述べる。


「ま、今更断ったところで、ここを出るころには首なし騎士サマとご対面……なんてこともあり得るだろうしね。どうせ、避けては通れないと思うよ」


「二人とも、ありがとう……!」


「恩に着る」


ほっとしたように笑みを浮かべたリオラは、覚悟を決めたように立ち上がると、部屋の入り口に向かい始めあた。


「奴が現れる前に、みんなにも知らせておかないと」



第25話「ジェレマイア村:4」 終

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