助け出せ、ウォームラビット!
攫われたウィーニを見つける為に、私は冒険者ギルドに向かったんだ。
そこにはリーズとカリンってエルフの少女が居るんだよ。
二人は私の友達で、人捜しの魔法とか使えるすごい子達なんだ。
一緒について来てくれるってことで私達はギルドを飛びだしたの。
魔法を使いながら進んでみるとようやく反応を見つけたよ。
それは何も無さそうな草原の下、掘ってみると鉄の地面が現れたんだ。
私達はそこを切り裂き中に入ってみた。
鉄の通路を進むとウォームラビットがいっぱい捕まっている場所に出たの。
そこでウィーニが棺の中にいれられそうになっている。
私達は二体のトリニティと戦って勝利を得たんだ。
「これは……どうやって開けるのでしょう?」
「ボタンも何もないわね」
「私も分からないの。どうすればいいの?」
このガラスの向こうに人が居るけど、解放の方法が分からない。
「じゃあもう壊しちゃえばいいよー!」
こうなったらって、私は飛び散らないようにスッパリ切り裂いたの。
トリニティみたいにかたくなくて案外簡単だったよ。
「強引だけど、それしか方法がなさそうね。多少の怪我なら後で治療すればいいから片っ端から助けちゃいましょう」
「そうですね」
「私も手伝うの!」
(皆、頑張ってね、僕応援しているよ!)
御主人に応援されて皆を助け出していると、ファンファンって音が鳴り始めたんだ。
(これ警戒音だよね? 絶対何か起きるかも! 注意して、モモ!)
周りを見ると入り口の壁が下りてくる。
私達を閉じ込めるつもりかも。
でもそれなら大丈夫、キャットスレイヴをつっかえ棒みたいにしてさせないようにしたんだよ。
私達は安心して皆を助け出したんだ。
その数はたぶん千人以上、子供からお年寄りまで色々な人達が捕まっていたの。
「あ~、お母さん、それにお父さんも居るの! よかった、もう会えないかと思ったの!」
その中にはウィーニの両親も居たみたい。
手を取って喜んでいるの。
でもまだ目を覚ましてないんだ。
回復はしてあげたんだけど、ちょっと時間がかかるのかなぁ?
「御主人、これで全員かなぁ?」
それと、もう見える範囲に捕まっているウォームラビットの姿はないよね。
(まだ他の場所にも居るかもしれないよ。この中を見て回ろうよ)
「そうだね、残していったら可哀想だもんね。リーズ、カリン、私、別の場所を見てくるよー。ちょっとここを頼むね!」
「ええ、任せなさい。ここは絶対護ってあげるわ」
「はい、例えもう一体出てこようと心配ありませんよ」
「じゃあ行ってくるねー!」
私は御主人を連れて別の場所に行ってみることにしたんだ。
「中々見つからないね」
(トリニティも居ないみたいだね。もうちょっと奥に……)
御主人が喋っている途中で、
『警告、警告、供給魔力が想定以上にダウンしました。何らかの攻撃によるものとみなし、供給ヵ所以外の区画を完全封鎖し、電源をシャットダウンします。規定に従い、従業員の方々には速やかな死が与えられます。全員に御冥福の言葉をお送りします。どうぞ安らかにお眠りください』
そんな言葉が響くと、電気がドンドン消えていく。
当たりが暗くなって何処かに風が抜けていくような感じ。
暗くなるのは全然平気だけど、通路の天井がドンドン落ちて来るの。
(これは不味いよ、皆潰されちゃうよ! 急いで戻らないと!)
「うん、分かっているよ!」
引き返すと後ろの通路が完全になくなっちゃった。
私と御主人は勿論無事だよキャットスレイヴで天井を支えているんだ。
ドンドン戻ると穴が開いた所が見えた。
日の光が入って来ているよ。
ここは残しとかなきゃ。
「皆、脱出してー!」
私は大声を出して皆に危機を伝えたんだ。
返事は返ってこない。
何かあった?
ううん、まだちょっと遠いだけだよね。
走って到着したあの部屋には皆が待っていた。
ちゃんと無事だけど、皆なんか気分が悪そう。
膝を突いてうずくまっているの。
私も何か息苦しい感じ。
(う、何だろこれ、毒? じゃない、空気がなくなってきているんだ。早く脱出しなきゃ窒息しちゃうよ!)
「逃げるよー!」
リーズ、カリン、ウィーニとその両親、そして他のウォームラビット達。
全員をキャットスレイヴで掴み上げ、一気にグッと引っ張った。
自分の力で運ぶのは無理だけど、この剣を使えばなんとかなるよね!
その重量を感じないように、地面に固定し運びつくしたの。
最後に私と御主人が天井の穴から飛び出たんだ。
草原に着地すると、その部分がズンって沈んでいく。
見るとかなりの範囲で地面が下がっているよ。
「すー……はぁぁぁぁ、はぁ、空気が美味しいわ」
「ええ、あのまま死ぬかと思いました」
「皆助かってよかったなの!」
三人ともむりやり息を吸ったり吐いたりしながら喜んでいるよ。
(それじゃあ後は、この断崖絶壁をよじ登らなきゃだね……)
草原が凹んだ分、凹んでない部分が壁になっているんだ。
普通に跳んだだけじゃ越えられないぐらい高そうなの。
そこまでも結構距離があるし、これもちょっと大変だよね。
でも大丈夫、キャットスレイヴを階段みたいにして壁を越えたんだ。
皆を運び終えてお疲れモードの私が草むらで寝っ転がっていると、
「モモ来て、皆が起きたの!」
ウィーニが報せに来てくれたの。
隣を見ると、次々にウォームラビットの人達が起き上がっていたんだ。
「おや、ウィーニじゃないか、夢の中で娘と再会できるなんて乙な物だね。涙が出てきそうだよ」
「あらあなたったら、これは夢じゃありませんよ。体がギシギシいって痛いですもの」
「何、それじゃあ本当にウィーニなのかい!?」
「お父さん、お母さん、よかったなの!」
ウィーニは両親に抱き付いた。
両親はあんまり状況が分かってないみたいだけど、それでもすごく嬉しそうだね。
他の皆も自分が解放されたと分かってすごく大きな歓声が上がったの。
「それじゃあ皆、町に戻ろっか!」
『おー!』
それで私達は皆を連れてお城に戻って行ったんだ。
ウォームラビットの大軍が町に現れた、そんな噂が駆け巡ったのは間違いないよね。
ちょっとだけ混乱させちゃったけど、争いにはならなかったから大丈夫なの。
皆を城門の前に待たせて直ぐに向かったイブの部屋。
「モモ、よくやってくれた。ウィーニを助けてくれてとても感謝するぞ! ……ただな、母上がお前を呼び出しているそうだぞ。色々云われるかもしれないが頑張れ! 私はここで応援しているぞ!」
すごく感謝されたけど、お母さんのところに行かなきゃいけないみたい。
「えー!」
(ま、これだけウォームラビット達を連れてきちゃったらそうなるよね。全員で行く訳には行かないし、代表者を何人か連れて行こうよ)
「うん、そうするよー」
ウォームラビットを五人ぐらい連れてお母さんの部屋に向かったんだ。
「確かに可愛らしくて助けたくなる気持ちもわかりますが、一人二人なら兎も角、これほどの人間を簡単に住まわせる訳にはいかないのです。人々の職業を奪う可能性もありますからね。何か此方の得になることでもあればいいのですが……」
でもね、やっぱり反対されちゃった。
ワイトロウの時もこうだったよね?
こうなったらまた断罪峠にでも連れて行っちゃおうかなって、私はそんなことを思っていたのだけど、お母さんの前に一人のウォームラビットが足を進ませたんだよ。
私が助けた中にいた一人で、ウィーニの両親とかでもない話したことのない人なの。
兵士達がザワってするけど、お母さんが大丈夫だってピタッと止めちゃった。
「お初にお目にかかるです女王陛下。ウォームラビットのラビッシュと申す者です。この都市を見た所、色々と手助けが出来ると思われます。我々に手を貸してくださるならば、皆様が知らない太古よりの知識を教えることもできるのですが、いかがでしょうか?」
「ほう、それは興味深いですね。しかしそれが必要なものなのか判断がつきません。一つどのようなものがあるのか見せていただく訳には行きませんか?」
「ええ、それではこんな物など」
ラビッシュは空中を指でなぞると、その部分がピカピカの線になって、ポンって感じで物になって落ちてきたの。
それはカッチカチの四角い鉄の塊だったよ。
深い絨毯にボスンって落ちたんだ。
そのまま全然消えないの。
「……これはどのぐらいの期間留まるのですか! 強度は、他に練成できる物は!?」
お母さんは思いのほか食いついたみたい。
そのお陰でウォームラビット達はこの国に居て良い事になったんだ。
皆で可愛がられたり、昔の話しを聞いたりしたの。
練成の技術はウィーディア中に広く伝わって発展していったんだよ。
私もお母さんに褒められていい感じ!
家猫のモモ
御主人(ヒロ)
王子シャーン
王女ルシフェリア
王女イブレーテ(長女)
シャーンのお母さんテルナ
爺
青鎧のブルース・グライブス
教育係アリア・ファイリーズ
赤髪の槍使い、リーズ・ストライプ(エルフ)
桃髪の魔術師、カリン・ストライプ(エルフ)
ベノム(ブレードバード隊、隊長)
ルーカ(孤児)
プラム・オデッセイ(里帰り中)
ジャック・スロー (天狼ジャックスロー隊長、白い狼男)
クロノ・アークス (シャーンとルシフェリアのお友達)
シャルネリア・シャルル・シャリアット(同上)
剣と魔法の世界 ミドレイス
翼の生えた子供 ウリエリア




