友達の夢を叶えたい!
ガラガラ落ちた盾を剣にして雷竜と対峙したの。
地上に下りて来ればもう負けないよ。
ワイトロウの軍団と連携して翼を壊したの。
これでもう飛んで攻撃できないんだ。
怒った雷竜はブレスで一気に畳み掛けようとするけど、その溜めは私にとっては充分な時間なの。
バッと近づいてもう一本の角も切り落としたんだよ。
もう勝てないって思って逃げていく雷竜、私達の勝ちなの!
それでね、もう一つ目的の龍王鉄銀も皆で見つけてお城に帰ったんだ。
数日後の夜に私と御主人はアリアの部屋で作ってもらったアイテムを貰ってルシフェリアと一緒に北の廃墟に出発することになったの。
でも秘密の通路の出口でルシフェリアのお姉さんであるイブレーテに見つかっちゃった。
もうこうなったら御主人を帰して代わりについて来てもらうことにしたんだよ。
無事に町を脱出して北に移動中。
そろそろいいかなーとか思ってイブの口から手を放したの。
「ふぅ、ここまでくれば大丈夫!」
「大丈夫じゃないわ、一体なんだこの扱いは! ちゃんと説明してもらうぞ! ルシフェリアもな!」
イブは突然連れ去らわれてすごく怒っているっぽい。
「北に向かってお父さんを助けに行く。モモには私を手伝ってもらっているの」
「なに、そんな危険なことを! 確かに父上を助けたいという気持ちはあるが、可愛い妹を危険に遭わせることはしたくない! ならば私が行くまでだ! ルシフェリア、今からでも遅くない、さあ帰るんだ!」
「嫌、お父さんは私の手で助けるんだから!」
と、二人ともキャットスレイヴで掴まれたまま言い合っているよ。
もう目の前には北の町が見えてきているのに。
うーん、でもあんまりうるさいとバレちゃうかも。
私はやっぱり喋らせないように二人の口を押さえて走り続けたの。
そして到着した北の廃墟。
ここには人の姿をした大きなライオンみたいな奴が居るんだよ。
あれはすっごく強いし、倒しても死なないし、関わり合いになりたくないの。
だから今日はコッソリと、中央にあるお城に入ることにしたんだ。
瓦礫の上をピョンピョンって移動していたんだけど、
「わわわ!?」
いきなり遠くから瓦礫の弾丸が飛んで来た。
ビュンって横を通り過ぎて当たった物を簡単に破壊していくの。
気を付けていたけど、やっぱり見つかっちゃったみたい。
このまま二人を連れて戦えないし、二人だけを行かせるのもちょっと怖いよ。
えっとえっと、こんな時御主人が居たら……って考えてもどうにもならない。
うーん、こうなったら、こうなったら……もうお城に突っ込んじゃえ!
「にゃあああん!」
私はドンドン飛んで来る瓦礫を躱してお城に入ったんだ。
お城はずっと残っているからそのぐらいなら大丈夫なはず。
って思っていたんだけど、何故かこの場所だけは攻撃してこないみたい。
うーん、どうしてだろう?
この場所が特別なんだったり?
まあいいか、無事に入れたんだもんね。
「二人とも着いたよー!」
私は二人の拘束を解いて地面に下ろしてあげたんだ。
「ば、馬鹿者め、いきなり死ぬところだったぞ!」
「お姉様ったら慌てすぎ。あのぐらいなんでもないわ。さあ行きましょう、お父さんがお城で待っている」
って云ってルシフェリアがお父さんの居る場所に行こうとしているよ。
全く足取りに迷いがないんだ。
……そういえば昔住んでいたことがあるんだっけ?
「モモ、早く!」
「そうだ、ルシフェリアが危険な目に遭ったらどうする! 早く来い!」
「はーい!」
私は直ぐに二人を追い駆けたんだよ。
気を付けながら進むと、前みたいに外が雲って来たんだ。
かなり暗いけど二人とも怖がったりしていないの。
ゆっくり、着実にその場所へ。
そしてあそこ、あそこの部屋。
前に来たままでで扉は開け放たれている。
ルシフェリアは突然走り出そうとしたけれど、グッと私が引き止めたんだ。
「ルシフェリア、私が先に行くよ。このアイテムの効果も見てないもん」
「……それもそうね。モモ、お願い」
「うん!」
勢いで言っちゃったけど、最初に攻撃されちゃうのはちょっと怖いなぁ。
ちょっとだけ躊躇っていると、
「お前が云ったんだろ、早く行け!」
「わー!」
私はイブに背中を押されちゃった。
バランスを崩して開いた扉の前に。
部屋の中に居たお父さんと目が合って、ドーンって黄色い光が飛んで来たの。
すっごく避けたいけれど、ここは我慢……したくないけど!
「我慢んんんんん!」
私はアリアを信じて耐えてみた。
通り過ぎる雷の波動。
でも体にビリビリ感は感じないの。
この指輪の効果、ちゃんとあるね!
「よし、これならばいけるぞ」
「すぐ行く、お父さん!」
二人とも私が無事なのを見て部屋の中に入って行く。
もう雷の力に怯えなくて良いんだ。
久しぶりに会えたお父さんの懐に飛び込もうと両手を広げたよ。
本当なら抱き付くのを見届けたいけど、相手は何も構わず攻撃してくるの。
鋭い雷撃を、剛球のような電撃を、逃げきれないぐらいの雷を。
涙を流した子供にだって容赦はしてくれない。
「お父さん、目を覚まして、お父さん……」
「戻って来てください父上、あなたはこんな所に居て良い人間ではないのです! お願いします父上!」
それでもこのアイテムのお陰で二人は全然大丈夫だったんだけど、それが効かないのならって腰にあった剣を抜き振り上げたんだ。
自分の子供なのに本当に殺す気みたい。
こんなのが当たったら簡単に死んじゃうよ!
「父上!」
「お父さん!」
それでも二人は動かないの。
絶対助けたいと思っているからだよね。
だったら私、今回は逃げないよ。
この指輪の効果が切れるま付き合うから!
急いで走って来る剣をガチンと受け止めたんだ。
……けど、相手の力は物凄い。
グッと押され返されちゃう。
だったらってキャットスレイヴで拘束しようとしたんだけれど、それに反応して相手は素早さを増していくの。
重力を無視して天井を進み、壁を跳ねて空中に浮かんでいるよ。
普通に戦ってもかなり強い。
拘束は諦める?
ううん、それは私も大変だし、二人にだって危険はあるんだ。
こうなったらもっと全力で、このお父さんを捕まえないと!
無限に分岐し伸ばしたキャットスレイヴは細く長い糸状に。
部屋の中に増殖した物がお父さんの体に一本二本と絡みつくんだ。
少しずつその強度を増して、少しずつ動きを止めてゆく。
ほら、もう体中糸だらけ、ギュッと締めればガッチリなんだ!
もう剣での攻撃はできないの。
ずっとずっと雷が落ちてくるだけ。
それは全然効かないから二人は拘束されたお父さんに抱き付いたんだ。
「ねぇお父さん、私ね、人買いから助けられた時からずっと感謝しているの。お父さんが居なかったら私はこの場所にはいなかったんだよ。きっときっと酷いことをされて今頃死んでいたかもしれないもの。ねぇ戻って来てよ、ね、お父さん!」
「ああ、私達はあの時から姉妹になった。父上が居なければきっとそうなっていただろう。私達はあなたに戻って来てほしい。お願いだ父上、元の心を取り戻してくれ!」
そのまま二人は思う存分に思いの丈をぶつけているよ。
でも、見つめる先の表情は無でしかないの。
やっぱり想いだけでは治ってはくれない。
だったら私が頑張るしかないよね。
幸い私には時間も手段もあるんだから。
二人を助けたいって想いを心の光に届けたの。
輝きが……増していく。
ドンドン大きく形となって、一つの呪文が浮かんでくる。
「猫猫召喚……来て、癒しの猫ちゃん!」
私はそれを唱えて白猫ちゃんを呼び出したんだ。
空中に現れた渦からスタっと着地したよ。
「お願い白猫ちゃん、あの人を助けてあげて」
お願いを言うと任せてって鳴いてくれたの。
でも電撃食らったら大変だ。
白猫ちゃんは指輪を持っていないから。
私は自分の指輪を取り外して白猫ちゃんの尻尾につけたよ。
「じゃあ行って!」
ダッと走る白猫ちゃんは雷の攻撃に怯まずお父さんのところに。
無防備な私は攻撃を避けるしかない。
この部屋から逃げ出せればいいんだけれど、二人を置いてはいけないよ。
少しすると白猫ちゃんがお父さんの肩にピョ―ンって飛び乗って頬をペロっと舐めたんだ。
きっとこれで大丈夫……。
「ぐああああああああ!」
じゃなかった。
すごく苦しがって叫び出して無理やり拘束を解こうとしているんだ。
「お父さん!」
「お前、父上に何をした!」
二人ともかなり慌てている。
でも大丈夫、白猫ちゃんは自信満々なの。
そのままジッして待っていると、その叫び声がようやく止まったんだ。
お父さんの目に輝きが灯されて自分を抱きしめているルシフェリアとイブレーテを見下ろしたの。
「ルシフェリア、イブレーテ……二人とも、ただいま……」
すごく優しそうで嬉しそうな顔。
「お父さん……」
「父上……」
二人ともそれ以上の言葉が出て来なくて顔をうずめるようにして泣き続けているよ。
私はシュるっとキャットスレイヴの拘束を解いたんだ。
今は邪魔したら悪いよね。
私は気付かれないようにそっと部屋を出て行ったの。
家猫のモモ
御主人(ヒロ)
王子シャーン
王女ルシフェリア
王女イブレーテ(長女)
シャーンのお母さんテルナ
爺
青鎧のブルース・グライブス
教育係アリア・ファイリーズ
赤髪の槍使い、リーズ・ストライプ(エルフ)
桃髪の魔術師、カリン・ストライプ(エルフ)
ベノム(ブレードバード隊、隊長)
ルーカ(孤児)
プラム・オデッセイ(里帰り中)
ジャック・スロー (天狼ジャックスロー隊長、白い狼男)
クロノ・アークス (シャーンとルシフェリアのお友達)
シャルネリア・シャルル・シャリアット(同上)
剣と魔法の世界 ミドレイス
翼の生えた子供 ウリエリア




