狼とニャンコ
警官達が事情を聞き終わって戻って行くの。
それで今日はこの町に泊まることになったんだ。
美味しい物を食べてゆっくりしたんだよ。
それで次の日、ベノムとブラッククロウが私が行った換金所で財宝を交換したんだ。
残念だけどブラッククロウの物はほとんど偽物だったみたい。
悔しがっているみたいだけど、そんなのどうでも良いから前に来た人達の名前を聞いたんだ。
お爺さんにその場所の地図を貰って行ってみたんだよ。
でもそこに居たのは犯人じゃなかったの。
私に地図を渡したお爺さんこそその人物だったんだ。
急いで戻るとブラッククロウが倒れていたよ。
ベノムの指摘で地図とは真逆の方向に向かい、相手の気配を捉えたの。
馬車に飛び乗ったけど、乗っていた犯人とは別のハウリングウルフが屋根を切り裂いちゃった。
(モモ、追いかけよう!)
「うん!」
私は地面に落ちた馬車の屋根を踏みしめて加速した。
馬車を追い抜いて通せんぼしても馬は止まってくれないの。
「加速しろ!」
むしろダンディン・サウザーの命令で運転手は速度を上げちゃった。
前に居る私をひき殺す気なのかな。
そんなの絶対嫌だからピョ―ンって跳躍したんだよ。
ついでにキャットスレイヴを使って馬と馬車とのつなぎ目をスパンと切断してやったの。
進む力はドンドン無くなって動かなくなっちゃった。
「もう逃がさないよー!」
「クッ、馬車が……。こうなったらお前の出番だ。こんな時の為に高い金で雇っていたんだ。しっかり働いてもらうぞ、デッドエッジよ!」
「……お任せを」
ライオンのような毛の色をした片目のハウリングウルフ、デッドエッジは壊れた馬車から飛びおりて私の前に。
「お前に恨みはないが、これも仕事の為。邪魔をするなら斬らせてもらう」
持っている刀の切っ先を向けているの。
さっきはすっごい切れ味だったけど、そんなの私だって出来るんだよ。
「かかってこーい!」
キャットスレイヴを分岐させて相手の出方を待ったんだ。
「……厄介そうな能力だ。しかし!」
デッドエッジはそんなの気にせず突っ込んで来た。
刀一本、そんなの簡単って思っていたけど、ニ十本近くの攻撃が全部弾き返されちゃったの。
だけどそれぐらいで負けたりはしないんだ。
ガチンと剣を合せると逆に弾き飛ばしてやったよ。
「おい、負けそうじゃないか。これ以上ここには居られん、もう私は逃げさせてもらうぞ。戻って来なければ報酬は支払わんからな!」
そう云ってダンディン・サウザーが逃げていく。
「……ご自由に」
逆にデッドエッジがもう一度向かってくる。
また気配を見失う前に、この邪魔者を倒さないと!
私は直ぐに御主人を下ろしたの。
「御主人、ちょっと離れていてね」
(うん、分かったよ。って来るよ!)
大丈夫、わかっているから。
ジャキって打ち合って二度三度、今度は弾き飛ばす隙がない。
でも私の攻撃は手に持った剣だけじゃないんだよ。
分岐した部分が相手の隙をついたんだ。
ほとんどは躱されたけど、ザシュって最後の一本が相手の腕を傷つけたの。
スッパリ切れて血がタラって落ちているよ。
「クッ、相当な強敵、もう左腕が動かん。これは覚悟を決めねばならんようだな。ならば次の一撃に全てを込めよう。行くぞおおおお!」
デッドエッジは片手を上げて向かってくる。
怪我しているのに全然退く気は無いみたい。
むしろ嬉々として戦いを楽しんでいる感じ。
でも私はそんなのに付き合う気はないんだよ。
こっちも一瞬で、一回で、ちゃんと倒してあげるんだからね!
キャットスレイヴは邪魔にならない剣のまま、私は相手を見定めた。
グッと大地を踏みしめて、
「にゃああああああん!」
一瞬で敵の懐に。
シュパーンって通り抜けると、
「ガハァ!?」
相手の体を切り裂いたんだ。
直ぐにダンディン・サウザーを追いたいけど、放って置いたらこの人が死んじゃうかも。
それはちょっと可哀想。
私は近くにあった刀をポイっと捨てて白猫ちゃんを呼び出し治してあげたんだ。
「……まさか、敵に情けをかけられるとは。俺を生かしておけば後悔するぞ」
「そんなの知らないもーん。じゃあバイバーイ!」
本当は捕まえといてもよかったんだけど、ダンディン・サウザーに逃げ切られたら困っちゃう。
私は御主人を抱えて走り出したよ。
まだそんなに時間が経っていないし、隠れたってダメなんだ。
「見つけたー!」
「うおああああ!?」
路地裏を逃げ回っていたダンディン・サウザーの前に私はピョンって着地したの。
それだけですっごく驚いて腰を抜かしちゃったんだ。
「それじゃあ捕まえちゃうね」
「あわわわ、ま、待ってくれ。私には病気の娘が居るんだ。その為に仕方なく悪事に手を染めてしまっただけなのだ! この通り、許してください!」
それで頭を下げているよ。
(お爺さんの娘って、四十か五十かそんな感じ? たぶんウソだよね)
「うん、きっとそうだよー。本当でも悪いことしたらダメなんだもん!」
私は問答無用でガッチリ確保した。
叫んでもダメ、そのまま換金所に連れ帰ったの。
「お、帰って来たか」
そこにはベノムと、まだ目を覚まさないブラッククロウ、それに前に会った警官の人が居たんだよ。
「おお、お待ちしておりましたぞ。そ奴が犯人でありますな。ご協力感謝であります!」
「うん、絶対八百屋のおじさんに謝らせてね!」
「はい、もちろんであります。頭を突かせて謝らせてやりますとも! 分かっているよな!」
「……はい」
ダンディン・サウザーは項垂れながら返事をしているの。
私は警官の人に引き渡してもう一人のデッドエッジのことを伝えておいたよ。
これで一件落着って感じ。
「じゃあご飯食べてからお城に帰ろー!」
(あ、やっぱりご飯優先なんだ)
「当たり前だよー。運動してお腹が空いたんだもん」
「ま、いいけどな。おいあんた、どこかいい店を知っているなら教えてくれると助かるんだけどな」
「ハッ、もちろんであります。でしたらここからあの道を――」
と、警官さんにお店の場所を教えてもらったの。
私達はブラッククロウを背負ってその店に食事しに行ったんだ。
聞いた通りすっごく美味しくて皆満足したんだよ。
「ハッ、ここは!?」
食事を終えて町の出口。
私が逆さ吊りにして運んでいたブラッククロウが起きたみたい。
「あ、起きた」
(うん、起きたね)
「うおおお、頭が痛い!? 血がのぼって何か危ない気がします! モモ殿、早く下ろして、早くぅ!」
「ようやく起きたかブラッククロウ、お前、眠り薬かなんかで全然起きなくてよぉ、まあ目が覚めてよかったな。んじゃ早く自分の足で歩きやがれ」
「じゃあ下ろすね」
「早くしてくだされえええ!」
それから三人で旅を続けたんだよ。
★
何日もの旅を終えて戻って来たウィーディアのお城。
久しぶりだけどほとんど何にも変わってないよ。
私は自分の部屋で皆に旅の話をしたりして楽しんでいたんだ。
「またモモさんはトラブルに巻き込まれてしまったのですね。そういう星の下に生まれてしまったのでしょうか?」
「でもねアリア、お出かけは楽しかったんだよ!」
(まあそれなりにね)
「それは良かったですわ。でも溜まっているお勉強が残っていますので、これからはそちらも頑張ってくださいね」
「えー、お勉強は少しでいいよー」
「ダメですよ。これからも厳しく行きますから。今日からビシビシいきますよ!」
うーん、自分の部屋は落ち着くけれど勉強はあんまりだなぁ。
「アリア、俺も少し旅の話しを聞きたいんだ。今日は勘弁してあげてよ」
「仕方ありませんね、シャーン様がそう云われるならそういたします」
「わーい!」
喜んでピョ―ンって跳び上がっていると、ルシフェリアが近づいて来たんだよ。
私の耳にそっと手を当ててね、
「モモ、そろそろお父さんに会いに行きたいの。連れて行って」
誰にも聞かれないような小さな声で囁いたの。
やっぱり北の廃墟に行かなきゃなのかな?
ルシフェリアのお願いも聞いてあげたいんだけど、あのビリビリはどうにもならないもん。
あれさえなければもうちょっとやってあげてもいいんだけどなぁ。
やっぱり誰かに相談する?
ここにはお友達しか居ないし、そうしてみようかな。
「ルシフェリア、皆に話してもいい?」
「ダメ、それはダメ! だって皆絶対反対するんだから!」
ちょっと声をかけてみたら声を荒げてしまったの。
それで皆がこちらを見ているよ。
「ルシフェリア様、モモさん、詳しく教えていただきませんか?」
「ルシフェリア、変なことをしているんじゃないよね? だったら俺にも教えてよ」
「……分かった、でも誰にも言ったらダメだから。ちゃんと約束して!」
アリアとシャーンはこくって頷いたんだ。
家猫のモモ
御主人(ヒロ)
王子シャーン
王女ルシフェリア
王女イブレーテ(長女)
シャーンのお母さんテルナ
爺
青鎧のブルース・グライブス
教育係アリア・ファイリーズ
赤髪の槍使い、リーズ・ストライプ(エルフ)
桃髪の魔術師、カリン・ストライプ(エルフ)
ベノム(ブレードバード隊、隊長)
ルーカ(孤児)
プラム・オデッセイ(里帰り中)
ジャック・スロー (天狼ジャックスロー隊長、白い狼男)
クロノ・アークス (シャーンとルシフェリアのお友達)
シャルネリア・シャルル・シャリアット(同上)
剣と魔法の世界 ミドレイス
翼の生えた子供 ウリエリア




