捕縛しろ、魔王軍
魔王軍のアガートというゴブリンを捕まえた私達。
尋問するために人気のない場所に移動したの。
おじいちゃんを痛めつけるのは気が進まなかったから、体をくすぐることにしてみたんだよ。
こしょこしょしていると喋ってくれるって云ったんだけど、自分の主張だけしてまた口を閉じちゃったの。
これはダメだっていうことで別の人を捜しに町に出たんだ。
「モモ、お前の探知能力で自称魔王軍を捜し出せ!」
「これが出来るのはモモ殿しかおりません。どうぞお願いします!」
(モモ、頑張って!)
「はーい!」
皆からお願いされて私はアガートと同じような気配を探ったよ。
一度知っちゃえば見つけるのは簡単だったの。
一人捕らえて二人捕らえてって続けたんだ。
朽ち果てそうな小屋の中にドサッと積み上がるゴブリンの山が出来たよ。
もう三十人ぐらいは見つけたかな?
「結構な人数いやがんなおい。この町の警備はどうなってんだよ」
「隊長、もしかしたらあの牙の御守りの所為かもしれませんね。あれを持っていれば仲間と判断してしまうのですから。しかも相手は小さいゴブリンです。兵士をすり抜けるのも容易かと」
「鼻が利き過ぎるってのも厄介だな。ちゃんと目で判断しないからそうなるんだぜ」
(でもこれだけ見つけたんだから被害は減るよね?)
「私のお陰だねー!」
私はエッヘンって感じで胸を張ったよ。
「お前のお陰っていやぁ、まあそうだが。どれだけ雑魚を捕らえても俺等の仲間は解放されないぜ。首魁って奴が動き出してくれればいいんだけどな」
「口を割ってくれませんし、このまま続けて時を待つしかないでしょうね」
「しゃーねぇな。モモ、このまま続けるぞ」
「はーい!」
捕まえたのが大体五十人ぐらいになった頃。
町の中に巨大な気配を感じたの。
聞こえたのは狼の遠吠え?
『俺は魔王軍総司令官、ワイトロウ。理想を阻む者共に告ぐ、我等の仲間を解放せよ。さもなくば不幸な出来事が頻発するであろう! もう一度言う、我等の仲間を解放せよ。さもなくば不幸な出来事が頻発するであろう!』
それが終わると人の声が。
喋るだけ喋ると気配も声も消えていく。
総司令官というなら相当な偉い人なのかも?
「わーい、手掛かりはっけーん!」
(ようやくだね)
「ああ、いい感じだぜ。奴を見つけてつき出しちまえば俺達の仕事は終わりだ」
「モモ殿、奴の居場所は見つけられますか?」
「うーん、やってみるねー」
私は消えた気配を探ったの。
ここから感じる範囲で同じ気配は……。
「ないみたい?」
(あらら)
「ねぇのかよ」
「しかし奴もこの町に潜んでいるのは確かでしょう。モモ殿、もう少し見ていない場所を見に行ってみましょう」
「待てブラッククロウ、先にこいつらを城に引き渡しちまおうぜ。さっきの声は城にも届いているだろうし、こんな大勢面倒見切れねぇ。引き渡すかどうかはリングルードかその辺の奴等が判断するだろうぜ」
「承知」
それで私はこのゴブリンの山をお城に連れて行ったんだよ。
一回じゃ運べないから分けて運ぼうってことになったんだけど、お城に着いた時にそれを感じたんだ。
(ん、どうしたのモモ?)
「御主人、さっきの奴の気配を感じるよ」
「はぁ!? まさかリングルードの奴じゃねぇよな!?」
「うーん、違う感じかも?」
「そいつは残念だ。ぶん殴ってやるチャンスだったのにな」
「隊長、黒幕でなくとも何か知っていたのではないでしょうか」
「ま、可能性はあらぁな。とにかく入ってみようぜ。丁度よく見張りもいねぇみてぇだしな」
「何かあったのかなー?」
「さあな、それも入ってみれば分かるだろ」
「じゃあ行っちゃうね!」
(おー!)
「こら待て、俺が先にだな――!」
「隊長殿、追いかけましょう――!」
私はベノムの言葉を聞かずに御主人とお城の中に入っていったんだよ。
中は何だかバタバタしているみたい。
私達のことなんかまるっきり無視して皆何処かに向かっているみたいなの。
(やっぱり何かあったみたいだね。モモ、僕達も行ってみよう)
ベノムはまだ来てないけど、これを逃したら何処に行くのか分からなくなりそう。
「うん!」
私はパタパタと追って多くの兵士が集まっている場所に到着したの。
ここはたぶん玉座の間だね。
あ、前の方でリングルードが誰かに詰め寄ってる感じだよ。
集中して耳を傾けてみよう……。
「――まさかあなたが魔王軍総司令官などと名乗るとは思いませんでしたぞ、ホワイト王子。町を混乱に導いた責任をどう取られるおつもりか!」
「俺は俺の信念に従ったまでのこと。貴様などにとやかく云われる筋合いはないわ」
答えたのは灰色の体毛を持ったハウリングウルフだったよ。
立派な服で王子様って感じなんだ。
「ならば儂が言ってやろう。貴様は我が国の王子などではない。今日だけは見逃してやる、早々にこの国を立ち去るがよい!」
言い合ってるのは王様なのかな?
かなり怒っている感じ。
隣には心配そうにしている女の人の姿もあるよ。
「親父よ、元よりそのつもりだ。末っ子の俺にはどうせ継承権は回ってこないしな。ではさらばだ、我が国よ!」
ホワイトが身を反転させると周りの兵士達がザザっと道をあけたんだ。
それで私の横をすり抜けて出て行こうとしているよ。
でも仲間を助けるためには首魁を捕まえなきゃなんだよね。
私はホワイトを、魔王軍総司令官、ワイトロウをガバッとタックルして押さえこんだんだよ。
「捕まえたー!」
「な、何だ貴様、俺に抱き付くとはまさか俺のファンなのか! 悪いがお前のような猫族を相手にしている暇はない。放せ、放さないか!」
ワイトロウが暴れているけど私は放さないの。
「奴は何者だ。儂が許可したのに何故奴を取り押さえているのだ! リングルード、貴様の差し金ではあるまいな!?」
「いえ、あれは今回ご協力願いましたウィーディアの勇者でありますな。首魁を捕らえよと言い付けてありましたのでそれゆえかと……」
「他国の使者殿か。ならば手荒な真似は出来ぬな。もうよいと伝えてやるのだ」
「ハッ、即座に」
リングルードはこちらに向かってくるよ。
話声は聞こえてたから放していいんだよね?
うーん、でも皆を解放してくれるかわかんないし、もうちょっとだけ待っておこう。
「モモ殿、もうよいのです、王子を……ホワイトを話してあげてください。お仲間達は解放してさしあげますので」
(モモ、放していいんだって)
「うん、じゃあ放すね」
私がパッと手を放すと、
「チィ、邪魔をするなバカ猫が」
ワイトロウは立ち上がって去って行くよ。
それで代わりにベノムとブラッククロウがやって来たの。
「お、やっと見つけたぞ。ってヤベェじゃねぇか、早く退散するぞ!」
「これにはその、深い深い事情がありまして……」
周りが全員こっちを見てるから二人ともすっごく慌てているよ。
私と御主人をガッチリ掴んで逃げようとしているけれど、
「お待ちください皆様、このリングルード、今までの御無礼を謝罪いたします。お連れの皆様についても軟禁していたことにすら気付いていませんのでご安心ください」
「そそそそそうかよ。とにかくこんな所で言い争う気はねぇ、とりあえず何時もの部屋に向かうとしようぜ!」
「ええ、そう致しましょう」
そして私達は何度も行ったことのある応接室に通されたんだよ。
今回はニガニガのお茶だけじゃなくて立派なお菓子とかケーキとか出て来たし、早速口に運んだらすっごく美味しくていい感じだったの。
私はそれだけで許しちゃいそう。
「で、俺等に云うことがあるんじゃねぇのか?」
ベノムは椅子にどっかりと座ってこの機とばかりに大きな態度を取ってるよ。
「そうですね、改めて謝らせていただきます。申し訳ございません。まさかホワイト王子が犯人だったとは思いもよりませんでしたから」
「それだけじゃねぇだろ。元より俺等を利用する計画だったんじゃねぇの?」
「御推察の通り、皆様がお越しになると知りこの計画を立てさせていただきました。この事件が起こってから周りの者達も誰も彼も怪しく見えていましたからいっそ、と思いまして」
「そうかそうか。で、今後俺等の国とどう付き合っていくんだおい」
「今後とも程よい友好関係をっと。それに伴い、これを」
リングルードはパチンと指を鳴らすと部屋の中に使用人四人が入って来た。
その手には四角いお盆。
その上には何か乗ってるの。
大きな布がかぶさっていて見えなかったけど、ポンとテーブルに置かれるとその布が外されたんだよ。
そこには人数分に分けられた大量のお金が積み上がっていたんだ。
これで許してくれってことなのかも。
家猫のモモ
御主人(ヒロ)
王子シャーン
王女ルシフェリア
王女イブレーテ(長女)
シャーンのお母さんテルナ
爺
青鎧のブルース・グライブス
教育係アリア・ファイリーズ
赤髪の槍使い、リーズ・ストライプ(エルフ)
桃髪の魔術師、カリン・ストライプ(エルフ)
ベノム(ブレードバード隊、隊長)
ルーカ(孤児)
プラム・オデッセイ(里帰り中)
ジャック・スロー (天狼ジャックスロー隊長、白い狼男)
クロノ・アークス (シャーンとルシフェリアのお友達)
シャルネリア・シャルル・シャリアット(同上)
剣と魔法の世界 ミドレイス
翼の生えた子供 ウリエリア




