悪意ある者
ギードの話しを聞いてウォーリア・アントの枯れ巣という場所に向かったんだよ。
西にあった町の中に突然現れたような土が盛り上がっている場所。
ここがたぶんそうだ。
私は天辺からピョ―ンと中に入り巣の中に入ったんだよ。
前も後も分からないから適当に進んでみると、生き残っていたウォーリア・アントを倒したの。
他には居ないからこれで最後かも?
でもこっちの方には何にもないから別方向に行ってみよう。
迷いながら進んだ先に研究道具みたいな物が置いてある広場を見つけた。
そこには一人の痩せた男が居て、一応名前を聞いてみたんだ。
でも違うって云われて戻ろうとした時、予想通り襲ってきたの。
私はそれを避けて戦いになったんだ。
ビリっと電撃を放つからちょっと困ったんだけど、覚悟を決めてバシッと攻撃したんだ。
でも普通に立ち上がってバキバキと変身したんだよ。
ちょっと激しい戦いになる予感。
「ガアアアアアア!」
バチンと落ちる電撃、大きく振り払われる剛腕。
羽ばたくように動く翼からは豪風が巻き起こる。
素早く動くとかなりの抵抗があるよ。
それでも風の来ない場所に移動して攻撃をしようとしたけど、張り巡らされた電撃が邪魔をしてくるの。
「うわー、痛い!」
不意に当たるとすごくバチっとしてシビシビする。
一回だけなら耐えられるけど、次の一撃で倒せなかったらキャットスレイヴを落としちゃいそう。
それはちょっと辛いかも。
剣で触れないのなら、うーん、そうだ!
ここは洞窟の中だし、周りには道具も岩もいっぱいあるんだ。
だからその一つを掴んで『てーい』って投げつけたんだよ。
張り巡らされた電撃に当たっても手から離れているから大丈夫!
ビュンって素早く飛んでグラファアの体にバチンと当たって弾けたよ。
けれど、あんまりダメージはないのかも。
怪我もしている様には見えないよ。
「無駄な抵抗をするなああああ!」
これは怒りを買っただけみたい。
激しい電撃をとプレッシャーをまき散らしながら私に向かって来たんだ。
この広場の半分ぐらいを巻き込む嵐のような攻撃だけど、私はそんなに遅くないの。
壁を蹴り、天井を掴み、背後に回って岩をドーン。
続けてもう一発、落ちてたパイプを投げつけたんだ。
「だから、無駄だと言っている!」
やっぱりそんなにダメージはなさそう。
けど、一回や二回で終わらせるつもりはないの。
「てえええい!」
相手が参ったするまで私の攻撃は続くんだよ。
岩、レンチ、ペン、定規、ガラスケースを壊して欠片を投げたり、止まってあげないんだ。
そのお陰でちょっとだけ分かったことがあるの。
体のダメージはなさそうだけど、翼は結構脆いみたい。
ガラスなんかでスパッと切れちゃったりしてるんだよ。
だから、ちょっとだけ風がやんだんだ。
抵抗が弱くなれば、私はもっと速く動けるの。
ウニウニと回復される前に、猛スピードの投てきを続けるよ。
壊して治って壊して壊す、治って壊して壊して治る。
じわじわと均衡が崩れて行くよ。
「貴様あああああ!」
そんな状況にグラファアは業を煮やしている感じ。
攻撃が届かないならと、剛腕で大きな機械をぶん投げて来たの。
それは壁に当たってバラバラに弾け跳んだんだ。
遅すぎて当たる気がしないけど、これはすごく時間がかかりそう。
ご飯までには帰りたいし、違う方法を探した方が良いのかな?
水晶玉でディズに連絡を試してみようか。
うーん、連絡方法が分かんないし、やっぱり黒猫ちゃんかな?
私は攻撃を続けながら心の中に輝きを満たした。
「猫猫召喚、幸福の黒猫ちゃん!」
言葉を唱えると、空中に現れた渦の中から黒猫ちゃんが飛びだしたよ。
グラファアから攻撃されない内に直ぐにパシッと受け止めたの。
「黒猫ちゃん、あいつの弱点を教えて」
ニャーと鳴き返事をすると、黒猫ちゃんはグラファアを見つめているよ。
動きながらだから結構時間が掛かったけれど、ついにその場所を見つけたみたい。
それはあそこ、あの胸に開いた大きな口から少し下、胸とお腹の真ん中辺りが弱点なんだって。
言うことを云って黒猫ちゃんは消えて行ったよ。
それは分かったんだけど、どうやるかだよね。
投てきじゃ当たってもダメージはないし、やっぱりキャットスレイヴを使うしかないかも。
でもどうやって攻撃しよう。
普通に突っ込んでも剣を伸ばしてもシビシビして確実に剣を落としちゃうよ。
ちょっと作戦を考えなきゃ。
うーん、落としても大丈夫な風にすればいいかのかな?
どうなるか分かんないけど、やってみるしかないよね。
私はキャットスレイヴを縮めて石ころのようにしたの。
それをビュっと投げつけたんだ。
「ククク、外れだ。そろそろ体力の限界が来たのか? こちらはまだまだ体力が有り余っているぞおおお!」
その石は、グラファアの頭をかすめて背後に飛んで行く。
でも外したのはワザとだよ。
あのまま剣にして突き刺してもあんまり威力は出なさそうだもん。
だから隙が出来るまで今まで通りの攻撃を続けたの。
もうそろそろ手頃な石が無くなりそうだけど、
「そろそろ飽きて来た。もうチョロチョロ逃げ回れないようにしてやる!」
グラファアは両手を広げて、この洞窟の左右に届くほどの電撃を放ったよ。
それをドンドン私の方へ、押しつぶすような感じで移動してきたの。
でも丁度良いかもしれない。
キャットスレイヴの石は手に届く距離にあるんだから。
私はその石に手を置いて、
「さあ、向こうに届くまで伸びてー!」
一点に集中させるように刃にして伸ばしたの。
私が触れたのは一瞬だけ。
「ガアアアアアア!?」
壁に固定されたキャットスレイヴは威力を落とすことなくグラファアの弱点を貫いたんだ。
倒した、とは思うんだけど、放たれた電撃は止まってないよー!
「にゃあああああ!?」
全身くまなく浴びちゃって体がねじれるような痺れを感じたんだ。
それで私はちょっとだけ動けなくなっちゃったの。
戦いの最中なら致命的な時間でも、もうグラファアは動いていないんだ。
だからじっくり時間をかけて体調を回復させたよ。
「じゃあ帰ろっかなー」
私はこの場所から印をつけた方向に戻って行ったんだ。
それでも出口の場所を探すのに手間取っちゃった。
ちょっと泣きそうになっちゃったけど、無事に宿に帰ったんだよ。
「御主人ただいま、リュネもただいまー!」
(モモ、お帰り)
御主人からは返事を貰えたけれど、リュネからの返事はなかったの。
まだ立ち直れていないみたいだから私はギュッと抱きしめてあげたよ。
(ディズは居ないね。まだ何かしてるの?)
「あ、そうだった。連絡したいんだけど、この水晶玉の使い方が分からないんだよー」
私は持っていた水晶玉を取り出した。
ペシペシ叩いても力を込めてギューって押してみても反応はなかったよ。
(やっぱりあれなんじゃないの。魔法の国なんだからさ、魔法の力を込めたりすれば使えるんじゃない?)
「御主人、どうやって込めるの?」
(いや、分かんないけど。モモは猫ちゃんを呼び出したりしているよね。そういう感じでやってみたらいいんじゃないかな? うーんと通信したい人を思い浮かべたりとかもありかも?)
「そっか、ちょっとやってみるね」
私は御主人に云われた通りにディズの顔なんかを思い浮かべながら水晶玉を持って猫ちゃんを呼び出す感覚を思い出したよ。
ほんのちょっとだけ吸われるような感覚が来て、水晶玉に変化が起こったの。
何か真っ暗な画像が映ってゴソゴソガサガサ聞こえてくる。
ちょっと呼びかけてみようかな?
「ディズ、聞こえるー? 私見つけたよー! グラファア倒したよー! おーい!」
何度か声をかけてみると、
「あー、もううるせぇな。今取り込み中だから後にしてくれ! というか来い、今直ぐ来い、お前なら直ぐ来れるだろうが!」
と音だけ聞こえてプツッと切れちゃった。
もしかして向こうでも何かあったのかも?
よく分からないけど行かなきゃダメな感じかな?
「私ちょっと行ってくるね」
(うん、行ってらっしゃい)
私はほとんど休みもなく宿を飛びだしたんだ。
向かうのは旧魔導研究所、ウォーリア・アントの巣から真逆の方向だよ。
たぶん行けば分かるかな?
部屋から持って来た干し肉をガブっと食べながら走って向かったの。
どんな場所かは知らなかったけど、一目で分かったよ。
他の住宅からは隔離されるように離され、偉い人の屋敷のような感じもなくて、飾りっけもない少しひび割れた感じのする四角がいっぱいある感じの建物だ。
ディズの気配もするからここで間違いないよ。
その近くにはもう一つ大きな気配がある。
きっとそれが慌てていた原因だ。
私は急いでそこに突撃したんだよ。
家猫のモモ
御主人(ヒロ)
王子シャーン
王女ルシフェリア
王女イブレーテ(長女)
シャーンのお母さんテルナ
爺
青鎧のブルース・グライブス
教育係アリア・ファイリーズ
赤髪の槍使い、リーズ・ストライプ(エルフ)
桃髪の魔術師、カリン・ストライプ(エルフ)
ベノム(ブレードバード隊、隊長)
ルーカ(孤児)
プラム・オデッセイ(里帰り中)
ジャック・スロー (天狼ジャックスロー隊長、白い狼男)
クロノ・アークス (シャーンとルシフェリアのお友達)
シャルネリア・シャルル・シャリアット(同上)
剣と魔法の世界 ミドレイス
翼の生えた子供 ウリエリア




