ウィーディアの切り込み隊長
夜出歩いた私はアリアにすっごく怒られた。
ご飯抜きにされちゃったけど、ハウマーのことを教えに来てくれたイブに干し肉を貰ったんだ。
硬いお肉をガジガジかじりながら話を聞き、変な研究者の人が関わってるって知ったんだよ。
色々伝え終えたイヴは部屋を去り、代わりにアリアがやってきた。
大きなお肉を飲み込んでちょっと涙目になってる姿を見てクッキーを持って来てくれたんだ。
皆で美味しく食べてシャーンとルシフェリアも来たんだよ。
今日は色々とお休みだ。
お勉強もお手伝いとかもないし、のんびり寝て過ごそう!
私はそう心に誓っていた。
もうフカフカのお布団で御主人と一緒なんだ。
うーん、でもお腹が空いたから一回起きたいかも?
でももうちょっとだけこのままでいたい気持ちもあるし、ちょっと迷っちゃうなー。
そんな天気の良さそうな朝の時間。
私の部屋の近くに人の気配がやってくる。
人数は二人かな。
どちらも感じたことのないものみたい。
まだ静かだから声まで聞こえてきちゃうよ。
「リカルド・アークスあそこか? シャーン王子を救ったりルシフェリア王女の心を解き放ったりした勇者様の部屋ってのは」
「ハッ、私達が遠征中の間に色々と活躍したそうですよ。謀反者の討伐とか、少し前にも凶悪犯の逮捕に貢献したとか。息子も色々と世話になったそうです。その事についてもお礼を言わねばなりません」
「ふーん、立派な人物って感じか? まあ会ってみようぜ」
男の人が私の部屋の前に立ったみたい。
何か用事があるのかな?
そのまま私の部屋の扉がコンコンと扉が叩かれた。
「モモ殿、失礼します。ブレードバード隊より参りました、リカルド・アークスと申します。隊長ベノム・ザッパーも同行しております!」
「おう、色々礼をしたいと思ってよ、ちょっと開けてくれねぇか?」
どうしよう、起きようかなぁ?
お腹が減ってるけれど、何故か起きたい気分じゃなくなっちゃったよ。
やっぱりもうちょっと寝ておこう。
「おい出て来ねぇぞ。もうどっか行っちまったんじゃねぇのか?」
「いえ、そんなはずは。出て行ったという報告もありませんでしたし。……もしやまだ寝てるのでは?」
「わかった、俺がちょっと見てくるぜ。お前はここで待っていてくれ」
「了解しました」
扉の前にあった気配が一つ移動してくる。
これはベノムという男かも。
廊下の窓の辺りをすり抜けてお城の上の方を移動して私の部屋の窓の前に来たみたい。
「やっぱり居るじゃねぇか! おい寝るな、起きろ、起きろおい!」
窓をバンバン叩いてすごくうるさい。
(……んー、なに? お客さん?)
御主人も起きちゃったし、これはもう寝ていられないかも。
私は布団をガバッとどけて、
「もう、眠れないよー!」
窓にいる黒い翼が生えたベノムに文句を言ってからもう一度布団をかぶったのだった。
そういえば何処かで見たことがあるような?
あ、大戦の展示会ってところでみた像にそっくりかも。
うーん、まあ何でもいいや。
「おい待て、起きたんなら話を……あーもう。じゃあまた後で来るからその時はちゃんと起きてろよ!」
ベノムの気配が遠ざかって扉の前に戻ったみたい。
それから何か云っていたみたいだけど、声が小さくなっていて聞き取れなかったよ。
それで気配が離れて行ったんだ。
でも結局眠れなかったから、お着換えして御主人と一緒に朝ご飯を食べに行ったんだよ。
何時も食べてる食堂で、
『あ!』
さっき聞いた声の人達が先に食事をしていたみたい。
(モモ、知ってる人?)
「今日の朝に来たんだよ。でも眠かったから追い払ったんだー」
(そうなんだ、ボーっとしてて気がつかなかったよ)
「よーし、ご飯注文するよー!」
私は早速席に座って注文をしたのだけど、
「ちょっと話がある、同席してもいいか?」
「息子のお礼を言いたいのですが」
その二人が自分の料理を持ってやって来た。
一緒に食べようって気なのかな?
そのぐらいなら別に……やっぱり嫌だなー。
ベノムって人の翼が私を襲ったカラスにそっくりなんだもん。
あんまり近寄りたくないんだよー。
私は二人の料理が置かれた瞬間別の席に移動した。
「おい、何故逃げる?」
「一緒に食べたくないんだもん!」
「待て、俺が何かしたか? もしかしてさっき部屋を覗いたのがダメだったとか。いや、そうだったなら謝るぞ。だからちょっと話を……」
「嫌です、ごめんなさい!」
私は頭を下げてまた別の場所へ。
食堂がザワっとしてベノム隊長がフラれているとか噂が立っているみたい。
「いや違うぞ、俺はそういう感じで声をかけたんじゃなくってだな!」
「ベノム隊長、言い訳しても無駄みたいですよ。ここは大人しく退いた方が良いのかと」
「クッ、仕方ねぇ。おいお前、後で絶対話を聞けよ!」
リカルドがベノムに声をかけ、覚えてろっと去って行く。
これで落ち着いてご飯が食べられそう。
「御主人、ご飯を置いて行っちゃったよ。食べて良いのかな?」
例えカラスが残したものだってご飯に罪はないんだよ。
(まあ、捨てるのも勿体ないし、いいんじゃない? 来た時にまた頼むでしょ。でも注文した分もあるのに食べられるの?)
「大丈夫だよー、私お腹空いてるもん!」
(相変わらずよく食べるよね。あ、丁度来たみたいだよ)
「わーい!」
私は持って来てくれた料理も置いてあった料理も全てぺろりと平らげた。
ちょっと食べ過ぎな感じだけど凄く満足したんだ。
もう一回お部屋に帰ってゴロゴロしようかと思ったんだけど、扉の前にまたあの二人が来たんだよ。
「今度こそ話しを聞いてもらうぜ!」
「別に何かしようって訳ではないですから、少しだけでもお話しを聞いてもらえないでしょうか? 隊長も少し意地になってるみたいで。その、すみません」
話を聞くまで入らせてくれないみたい。
「えー?」
(モモ、聞いてあげたらどう。この人達きっと諦めないよ?)
「うーん、じゃあいいよー」
御主人がそういうのならと私も受け入れることに。
そもそもこの人とあのカラスは別人だし、嫌うのはちょっと違うのかも?
「いよし、じゃあ落ち着いて話せる場所に行くぜ! ついて来い!」
「はーい」
でもそんなに乗り気じゃないし、適当について行ったんだ。
そこは城内にあるブレードバード隊の隊舎みたい。
落ち着いている場所だって云っていたけれど、
「よーし、野郎共、この国の勇者様を連れて来てやったぜ! この俺を崇め奉れ!」
『うおおおおおおお!』
とてもそういう風には見えない騒がしい場所だった。
御主人や私の周りには多くの人達が集まって色々質問してくる。
二十人ぐらいは居るのかも?
前に行ったことのあるブルースの部隊とも違う雰囲気だ。
一斉に喋っているので全然聞き取れないよー。
「おーし、そこまでだ! そろそろ俺の話をさせてもらうぜ! おいお前、このブレードバードに入隊してくれ! 是非頼む!」
ベノムは私の手を掴みキラキラした目で見つめている。
その奥には色々な欲望が隠れてそう。
(だって。どうするのモモ?)
「入隊したらどうなるのー?」
「そりゃあお前、何度も国の危機を救ってくれた勇者様が入隊してくれたらブレードバードの格が上がるじゃねーか! 全開の新人トーナメント優勝者もお前の指導を受けて優勝出来たんだろ? だったら次の新兵トーナメントも優勝間違いなしだしな、わはははは!」
「隊長、本音が駄々洩れです。もう少し隠してください」
「リカルド、下手に良い事ばっかり言ったってバレた時気まずくなるだけじゃねぇか。こういうのは正直にぶつかった方がいいんだよ!」
「そうは思えませんけどね。それでモモ殿、どうされますか? 隊に入るとなれば訓練や規則など守ってもらわなければなりませんけど」
「ごめんなさい!」
私は瞬時に判断してお断りしたんだ。
だってそんなのに入ったら、のんびりする時間が無くなっちゃうんだもん。
「よしわかった、俺の権限で訓練とか全部なしにしてやる! それにお前菓子とか好きなんだろ? お前の為にリカルドが毎日菓子を持って来てやるぜ! 最悪名前だけでもいいから頼むぜおい!」
「お菓子!?」
訓練とかないって云うならすごく楽なのかも?
「あの隊長、モモ殿が乗りかかっているのはいいですが、その代金はちゃんと給料にプラスされるんですよね? タダでやれとか言いませんよね?」
「おう、俺に任せとけ!」
ベノムがドンと胸を叩くけど、
「隊長、何で俺達には無いんですか! 俺達頑張ってるんですよ!」
「そーよそーよ、私だってお菓子食べたいわよ!」
他の皆からブーブーと文句が出てきている。
「あーわかったわかった、お前等にも菓子を持って来てやる。だから全力でこいつを説得しろ! 出来なきゃ無しだ!」
キランと目を光らせた皆が一斉に私の下に駆け寄り、
『モモさん、是非うちの隊に入ってください!』
思う存分説得されちゃって入隊させられちゃったんだよ。
お菓子が食べられるだけだからお得なのかなー?
家猫のモモ
御主人(ヒロ)
王子シャーン
王女ルシフェリア
王女イブレーテ(長女)
シャーンのお母さんテルナ
爺
青鎧のブルース・グライブス
教育係アリア・ファイリーズ
赤髪の槍使い、リーズ・ストライプ(エルフ)
桃髪の魔術師、カリン・ストライプ(エルフ)
ルーカ(孤児)
プラム・オデッセイ(ブルースに頼まれて特訓中)
ジャック・スロー (天狼ジャックスロー隊長、白い狼男)
クロノ・アークス (シャーンとルシフェリアのお友達)
シャルネリア・シャルル・シャリアット(同上)
剣と魔法の世界 ミドレイス
翼の生えた子供 ウリエリア




