怒られちゃった(二章終了)
ハウマーが痛がって倒れている。
ノラが色々と事情を聞こうとしているけど、突然ハウザーの体が割れた。
その中から現れたのは化け物のように変化したハウザーだ。
空中を飛び回りそうとうに戦闘能力が向上しているみたい。
皆を狙われるからちょっと防御にてっしたけれど、御主人が私の為に動いてくれたんだ。
落ちていたキャットスレイヴを持って来てくれたよ。
そのお陰で勝つことが出来たんだ。
でも運ぶのをどうしようかって話になって、なんか私が運ぶことになっちゃった。
アリアや皆に怒られてちょっと悲しかったんだよ。
「――という訳でハウマー・ラグラッシュは徹底的な拷問にかけられ色々なことを白状したそうだ。まあそれは良いとして、モモお前は何をしている?」
私の部屋にやって来たイブがハウマーが捕まってからの事情を説明してくれたんだ。
一緒に戦ったノラは子供達と偉い人に話をしているみたい。
それが終わったら国に連れて帰るんだって。
「私はアリアにいっぱい怒られたんだよー。すっごい謝ったんだけど、ご飯抜きなんだよー!」
それより私はとてもゲッソリしているんだ。
お勉強の代わりに五時間ほど怒られちゃったんだよ。
今日は朝ご飯もお昼ご飯も夜ご飯も抜きなんだって。
もうグーグーにお腹が空いてどうにもならないんだよ。
(勝手に出て行っちゃダメって云われていたからねぇ。これは仕方ないよ)
でも御主人はご飯食べたんだよ。
一緒に我慢するって言ってたけど私が食べて良いよって言ったから。
やっぱり一緒に我慢してもらえばよかったかも。
「なるほど、ならこの携帯食料を……」
ちょっと死にかけの私の前に、イブが懐から何かを取り出そうとしている。
「食べるー!」
私は何かわからないそれに食いついたんだ。
今はパンでもお菓子でも何でもいいよ。
「ほら、これだ」
そんな私が貰ったのはカチカチの干し肉だった。
中々噛みきれないし、すごくしょっぱいけど、ガジガジもぐもぐしていたらちょっとだけお腹が落ち着いたんだ。
(モモ、よかったね)
「うん!」
思ったよりかたいから食べ尽くすにはちょっと時間がかかりそう。
でももうちょっと欲しいなー。
「今回の礼に夜にもパンぐらいなら持って来てやる」
「やったー!」
優しいイブのお陰で夜ご飯の目処がついたんだ。
「食いながら聞け、あの地下室は奴の美術室だったらしい。それを見せたり売ったりしながら金を稼いでいたんだそうだ。当然だが、そんな奴等も全員逮捕するように母様が兵を動かしたぞ。ま、そっちは時間の問題だな」
それから話しの続きをしてくれたよ。
よく分からないけど色々動いてるみたい?
「ふーん、そうなんだー?」
私としてはこの干し肉の方が重大だ。
ガジガジもぐもぐし続けた。
「で、肝心なのはここからだ。奴の体の変化は魔導国家マグナストリスのとある人物が与えた物らしい。そいつの名はグラファア・ズ・ドラグライム。元は我が国の魔導研究者だった男だが、大戦の最中に逃げだし、国の技術を他国に売り渡した愚か者だ。そして何の冗談かは知らんが、今マグナトリスの相談役として認知されているそうだ!」
イブはドンと机を叩き怒りをぶつけている。
やっぱり許せないのかも。
それでもふうっと息を吐き出し落ち着いたみたい。
「だが、今どうにかできるようなことでもない。マグナトリスの庇護下にあるからな。今後奴が尻尾を出す日を待つしかないだろう。その時はお前にも活躍してもらうかもな」
「うん、いいよー!」
その時どういう感じになるか分からないけど、私は出来る限り協力すると約束したんだ。
「じゃあ私は失礼させてもらう。これでも色々忙しいのでな」
「イブ、またねー!」
(またね!)
「ああ、またな」
イブが部屋から去り、私は最後に干し肉を口の中に放り込んだ。
まだ美味しさがあるからカミカミしときたい。
そう思っていたんだけど、
「モモさん、お部屋にいらっしゃいますよね。入りますよ」
アリアがお部屋に来たみたい!?
もうこのお肉は飲み込むしかないよ!
まだ大きくてかたいけど、私ならいけるはず!
ごくんと飲み下すと、喉が痛くて何だか涙が出てきちゃった。
「……モモさん、ご飯が食べられなくてそんなに悲しかったんですか? さっきクッキーを焼いてたのですけど、食べてみませんか? もちろんこれはご飯ではないですから、約束を破ったことにはなりませんからね」
私は返事が出来ずにコクコクと頷いた。
「それじゃあ少し待っていてください。お部屋から取って来ますので」
アリアは部屋を出て行くと直ぐに大きなお皿に山盛りのクッキーとジュースをのせて運んできた。
ちょっと焦げているところもあるけど、それはそれでカリカリしてて美味しそうな感じ。
「アリア、食べていい?」
「ええ、存分に召し上がれ。思う存分食べてくださってもいいのですよ。むしろ残してもらっても困ります」
「わーい、いただきまーす!」
私はクッキーをガバッと掴み取り、お口の中に放り込んだ。
思った以上にザクザクの噛み応え、ほんのり感じる塩け、砂糖の甘さと生地の味。
すっごく美味しい!
続けてもう一掴み、もう一掴み。
全然止まらないよー!
「美味しそうでよかったです。それでは私も一ついただきましょうか」
アリアもクッキーを一つまみ。
「やっぱり美味しいですね」
「うん、美味しいね」
私達はこのクッキーを堪能してたんだよ。
「あ、二人で何か食べてるわシャーン」
「うん、クッキーだね。僕も食べて良い?」
「ええ、もちろん。いっぱい食べてくださいね」
半分ぐらい食べた頃にはルシフェリアとシャーンも合流して一緒に楽しんだんだ。
これからどうなるのか分かんないけど、その時はその時考えよっと。
「モモ、そろそろ私との約束を叶える番じゃない?」
確かにルシフェリアと約束はしたし、叶えてあげたいと思うけれど、それはまだ今じゃない。
だってさっき怒られたばっかりだし。
私はサッと目を逸らしてフルフルと首を振ったのだった。
家猫のモモ
御主人(ヒロ)
王子シャーン
王女ルシフェリア
王女イブレーテ(長女)
シャーンのお母さんテルナ
爺
青鎧のブルース・グライブス
教育係アリア・ファイリーズ
赤髪の槍使い、リーズ・ストライプ(エルフ)
桃髪の魔術師、カリン・ストライプ(エルフ)
ルーカ(孤児)
プラム・オデッセイ(ブルースに頼まれて特訓中)
ジャック・スロー (天狼ジャックスロー隊長、白い狼男)
クロノ・アークス (シャーンとルシフェリアのお友達)
シャルネリア・シャルル・シャリアット(同上)
剣と魔法の世界 ミドレイス
翼の生えた子供 ウリエリア




