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分厚い氷壁

 イブと待ち合わせして隠し通路から町に出た私達。

 誰にも見つからずにギルドに向かいノラと合流した。

 ちょっとしたご飯を食べながら今回向かう相手の情報を聞き、ハウマー・ラグラッシュという男の店に行ってみることに。

 やっぱりもう閉まってたけどそれは関係ない。

 ノラが鍵を開けて入ったんだよ。

 店は何も無かったけれど、地下への隠し通路があって大きな広場に出たんだ。

 そこには氷で閉じ込められた魔物や人間の姿が。

 なんだか背中がゾワゾワする。

「いやニャ予感がするぜ。奥に急ぐぞ!」


「その方がよさそうだ」


「うん、行こう!」


(これは戦闘になりそうな感じかも? モモ、気を付けてね)


 私達は氷の広場を奥へ進む。

 冷たさは鋭く身に刺さり、嫌な気配をビンビンに感じ始める。

 これはハウマーだけじゃない。

 何か巨大なものが居る。


「見つけた!」


 私の視界にハウマー・ラグラッシュ……かもしれないシルクハットとタキシードを着た男と、ストレイキャットの子供達三人を見つけた。

 子供達は声を発さないようにされていて縛られていている。

 恐怖で目には涙が。


 直ぐに助けてあげたいけれど、さっきから感じていた大きな気配が動き出した。

 ぶっとい尻尾と二本脚で立つ青い恐竜みたいな奴が、ギャオンと鳴き声を上げて威嚇してきている。

 この洞窟内に漂う冷気はあいつから発せられているみたい。


「お前がハウマー・ラグラッシュだニャ。その子供達を解放しろ!」


「我が国を汚す悪鬼め、この剣で成敗してくれる!」


 二人ともでっかい恐竜にも怯まずハウマーに怒りを向けている。


「如何にも、わたくしこそがハウマー・ラグラッシュでございます。どなたか存じ上げませんが、招待もしていないのに急なご来店ありがとうございます。今宵はどのようなご用向きで?」


 この男がハウマーで間違いないみたい。


「とぼけんニャ、その子供達を返してもらおうか!」


「この国で人買いは法により固く禁じてある。それに何だこの醜悪な場所は。一体何人を手にかけた!?」


「手にかけたとは失礼な。それにくだらない法律のことなど、わたくしは興味がないのですよ。それにほら、こうして綺麗な彫像になれば延々に美しく飾れるではありませんか」


「ふざけんニャ!」


「もうかける言葉もないな。この剣にて地獄に送りつけてやろう!」


「子供を泣かせるなんて許さないよー!」


「ふぅむ、今宵のショウは行わない予定でしたが、折角のご来店ですのでサービスしてさしあげねばなりませんな。お代は皆様の恐怖と絶望で結構でございます。ブリザードザウルスよ、ショウの幕開せよおおお!」


 ハウマーの声に反応し、巨大な恐竜が近くにある氷の像をバキバキと踏み散らす。

 あの中には人が入っている物もあったりするのに!


 怒った私はキャットスレイヴを剣に変化させたのだけど、攻撃する前に巨大な尻尾が薙ぎ払われた。

 破壊された氷の像がつぶてとなって飛んで来る。

 私とノラは避けられそうだけど、イブにはちょっと辛いかな?

 御主人とイブを掴んでヒョイっと回避した。


「はん、こんニャ大振り当たるかよ!」


 やっぱりノラも大丈夫そう。

 普通に避けられたみたい。


「モモ、あんなもの私でも簡単に避けられたぞ!」


「えー、そうなのー?」


「そうなのだ!」


 私は一度イブを下ろしたけれど、


「おやおや、随分活きのいい獲物だ。それでは動きを鈍らせてしまいましょう」


 ハウマーが指をパチンと鳴らすとブリザードザウルスが大きく息を吸い込んだ。

 私の勘が避けろと叫んでいる。


(モモ、何かヤバいかも。一度避難しよう!)


「うん!」


 さっきイブに怒られたけど、やっぱり一緒に運んでしまおう。

 下ろしたイブをもう一度担いで一気に後ろに退避した。

 安全圏に到着したと同時ぐらい、ブバーッと吐き出された氷のブレスが洞窟内をひんやりさせる。

 もしあれに当たってたら周りと同じ氷の像になっていたかも。


「おい、大丈夫だって言っただろう!」


「大丈夫じゃないよー。ほらあれ見てー」


 私はちょっと遅れてやってきたノラを指さした。


「さみいいいい!?」


 半分ぐらい食らった感じで髪の毛や服がガッチガチに凍り付いてすごく寒そうな感じ。


「ああなっちゃうよー?」


「くっ、どうやら私には荷が重いようだ。お前のお荷物になるぐらいなら退いてやる! 行くぞリッヒスタイナー」


(あ、まあそりゃあそうか。モモに抱えられてたら邪魔だもんね。モモ、がんばってね!)


 イブは私から御主人を奪い去る。


「御主人、後で助けに行くからねー!」


「私を悪人みたいに云うなあああ!」


 私は文句を言いながら逃げるイブを見送り、キャットスレイヴを構え直した。


「ノラはまだいけるのー?」


「当たり前だ。首輪のお陰でそれ以外の選択肢はニャえんだよ。……とはいえだ、奴のブレスはちょっとやっかいだぜ。やっぱり操っているハウマーを倒した方がいいかもな!」


「じゃあ私が相手をしとくよー。ノラは子供達を助けてあげて」


「一人でやれんのかよ?」


「大丈夫だよー!」


「そうかよ、ニャら任せたぜ!」


「うん!」


 ノラは距離を取ってハウマーの居る場所に向かう感じだ。

 ブリザードザウルスがブレスを吐いたりしながら邪魔をしようとしてくるけれど、私がそれをさせてあげない。


「にゃああああ!」


 背後から迫り、キャットスレイヴの超変化で無数に分岐させて上から斬撃を叩き込んだ。

 これで終わり……っと思ったんだけど皮膚に当たるとギャリギャリっと音を立てて少しの傷が出来ただけだった。


 それでも傷みがあるみたいで、ブリザードザウルスは攻撃した私を睨む。

 すごく怖い顔だけど、それでも怯んだりはしないんだよ。

 私はすっごくすっごく怒ってるんだから!


「倒せないんだったら、もっともーっと攻撃しちゃうんだから!」


 分岐した剣がニ十本に、四十本に、ブリザードザウルスを覆うようにして一斉攻撃を開始した。

 ビシバシと無数の傷をつけ続けると、グアアと吠えて息を吸い込んだ。

 これはあの寒いやつだ。

 当たったらカチコチに凍っちゃうし、一度距離を取ろうかな?

 でもイブの方に近づいちゃうから、それよりもっと前に出てしまおう!

 ブバーっと吐いたブレスの一瞬、超速の移動でブリザードザウルスの足元に。

 冷気でちょっと寒いけど、動けば全然大丈夫!

 キャットスレイヴを丁度良い長さの剣に変えてから、


「にゃああああああ!」


 自分の体を使って果てしない連撃を開始したんだ。

 ちゃんと力が籠ってるから、さっきよりも強い攻撃だよ。

 大暴れしたって逃がさない。

 獲物は私じゃなくてお前の方だ!


「最後の……止めえええええ!」


 氷に閉じ込められた皆の想いを剣に込めて、ブリザードザウルスの頭上からズバっと真っ二つ。

 断末魔の悲鳴を上げて倒れていく。

 感じていた気配も小さくなって消えて行った。


 残りはハウマーをなんとかすればいいだけだけど、ノラはどうしたんだろう?

 もう到着しているはずなのに、まだ勝利の報告がない。

 何かあったのかも?

 ちょっと急いで行ってみようと、私は走ってその場所へ。


「ノラ、倒して来たよー!」


「そりゃあ良かったぜ。だがこっちはどうするかって感じだニャ!」


 やっぱりこっちの決着も付いていないみたい。

 ハウマーは子供を盾に、一人を足蹴にし、抱えた一人の首元にナイフを押し当てている。

 だからノラは動けないみたい。


「おや、もう一人はどうしました? 死んじゃいましたかねぇ? これ以上犠牲を出さない為にも、どうでしょう、わたくしの部下になりませんか? 望みの宝石も、旨い食事も、快楽だって与えてあげますよ。ああ、ちなみにお前は要りません。普通に死んでくださいね」


 二体一であの恐竜さえ倒したのに、ハウマーはまだ余裕を見せている。

 人質が居るから大丈夫と思っているのかも。


「誰が死ぬかバカ野郎! 子供を放しやがれ!」


「だから、お前には聞いていないのですよ。で、どうなのですか?」


 ハウマーは私を誘っているみたいだけど、どれだけ美味しいものがあったとしても、こんな酷い奴と一緒にご飯なんて食べたくないもん。


「ぜーったい嫌だもん!」


 嫌な意思全体を押し出して全力でお断りだ。


「ふぅ、仕方ない。折角購入したばかりの物ですが、一人ぐらい見せしめに殺した方がいいのかもしれませんね。もしかしたら気が変わるかもしれませんし」


 ハウマーは嬉々とした表情で抵抗できない子供の首筋にナイフを押し込んだ。

 赤い血が少しだけ流れるけど、まだ死ぬような傷じゃない。


「おいやめろ!」


「ふむ、どうしようかなぁ。それではお嬢さんも武器を捨ててくださいますかねぇ?」


 キャットスレイヴは大事なものだけど、


「……うん、捨てるよ」


 ここは大人しく云うことを聞いておこう。

 私にはまだ爪という武器が残っている。

 いっそ反応出来ないような速度で飛び込んでみようかな?

 やれるとは思うけど、万が一子供が死んじゃったら可哀想だ。

 もうちょっとだけ様子を見てどうにもならなかった時は……あれ、この気配はもしかして……。


(ガブっといっちゃうからね!)


 ハウマーの背後から御主人と。


「ここだ、私が足手纏いになることなんてあり得ない!」


「ですが読んでいました!」


 音を立てないように身軽になったイブが奇襲をしかけた。

 でもハウマーはそれを予想し、盾にしていた一人をドンと後ろに突き飛ばす。


「クッ!」


 二人の奇襲が止まったけれど、視線が私とノラからはずれたよ。

 たった一瞬、ほんの一秒にも満たないけれど、私ならいけるはず。


「たあああああ!」


 振り向くより速いスピードで鋭い爪でハウマーの腕を切り裂いた。

 手首ごとナイフが落ちて、


「ぐああああああ、私の手があああああ!?」


 途轍もない痛みでこの悪人は氷の上に崩れ落ちたんだ。

家猫のモモ

御主人ごしゅじん(ヒロ)

王子シャーン

王女ルシフェリア

王女イブレーテ(長女)

シャーンのお母さんテルナ

グリフ・リスマイヤー

青鎧のブルース・グライブス

教育係アリア・ファイリーズ

赤髪の槍使い、リーズ・ストライプ(エルフ)

桃髪の魔術師、カリン・ストライプ(エルフ)

ルーカ(孤児)

プラム・オデッセイ(ブルースに頼まれて特訓中)

ジャック・スロー (天狼ジャックスロー隊長、白い狼男)

クロノ・アークス (シャーンとルシフェリアのお友達)

シャルネリア・シャルル・シャリアット(同上)


剣と魔法の世界 ミドレイス

翼の生えた子供 ウリエリア

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