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見つけよう、いなくなったアリア

 私の教育係としてアリア・ファイリーズという女の人が担当してくれることに。

 最初は優しかったのだけど、何故かどんどん狂暴に変化してしまう。

 お勉強やらマナーやらでいっぱいいっぱいになった私は逃げ出すことを決意しお城を飛びだした。

 冒険者ギルドというお料理を出してくれる場所に飛び込み、冒険者のカードを作って料理を食べていると、追いかけて来たアリアが私達を見つけてしまう。

 和解して三人で食事をし、アリアは先に帰って行くが、次の朝、城にアリアは現れず行方不明になっていた。

「御主人、アリア来ないね」


(うん、もしかして寝坊でもしているのかな?)


 私と御主人は全然現れないアリアを部屋で待っている。

 一時間待っても二時間待っても来る気配がない。

 そんな時、部屋の扉がバーンと開けられたんだ。

 現れたのは青い鎧のブルースだったよ。


「モモ殿、アリア殿が家に戻られていないそうだ。まさか昨日の夜、邪魔なアリア殿を始末したのではあるまいな!?」


 何だか私のことを疑っているらしい。


「私そんなことしないよ。ね、御主人」


(うん、しないしない。実際してないしね)


 私はギルドでご飯を食べただけだし、特に何事もなく受け応えた。


「む……まあ確かに、モモ殿は殿下を救われたのだ、そんなことをする吾人ではないな。拙者の早とちりだった、失礼をしたな。しかしそうなると一体どこへ行ったのか。まさか不届き者にさらわれたのでは!?」


 アリアが酷いことをされて居たらどうしよう。

 私悲しい。


「御主人、私、アリアを捜しに行きたい」


(うん、そうしよう。折角仲良くなったのに、もう会えないなんて寂しいからね)


「モモ殿も捜してくれるか。こちらでも引き続き捜査をしよう。何かあったらこちらにも報せてくれ」


「うん!」


 私が返事をするとブルースはこの部屋から走り去ったの。


「御主人、どこから捜せばいいのかな?」


(昨日行ったギルドの辺りから捜してみよう。もしかしたら誰か見ているかもしれないし)


「うん、そうするね」


 私は部屋の大きな窓に手をかけた。


(いや待ってモモ、そっちから行かなくても……ぎゃあああああ!)


 大急ぎでそこから飛びだし、昨日行ったギルドの前に。

 夜とは違い、ボードに張り付けられた紙を見ている人が多いみたい。

 御主人に聞くと、あの紙に書かれた依頼を解決してお金を稼ぐのが冒険者だそうだ。


「アリアいないね」


(うん、ここからどこへ行ったかだね。そうだ、ギルドにも依頼を出すのもいいかも。昨日カードを作った受付カウンターに行ってみよう)


「わかったー!」


 受付は昨日の人ではなかったけれど、ちょっと声をかけてアリアが居なくなったと事情を説明したよ。

 私のたどたどしい説明にも熱心に耳を傾けてくれて、


「なるほど、失せ人の捜索ですか。昨日ここに来た人となるとギルドとしても放ってはおけませんね。もしかしたらギルドを狙ったものの可能性も存在します、依頼料はこちらからも支援いたしましょう」


 色々と気を使ってくれている。

 お金も出してくれる良い人だ。


「うん、ありがとー!」


「それと貴方は昨日カードを作られたモモさんですよね? ギルドシステムの故障の件ですが、そんな物は存在しませんでした。昨日お作りになられたカードを使用して貰っても結構ですよ。猫という職業も、遥か昔にシステム担当した者が故意に作ったものかもしれませんし、もし別の職業になりたければまたお声をかけてください」


(お、それはつまりこのギルドで働いても良いってことだね。早速仲間を募ってアリアを捜しに行こう!)


「うん!」


 ギルドのお姉さんは早速掲示板に依頼書を張りつけた。

 そのままここに居る人達全員に聞こえるように、


「昨日の夜、このギルドを訪れた者が行方不明となっております。これはギルドへの攻撃の可能性もあります。力ある者、勇気ある者はこのモモさんと共に行動してもらえませんでしょうか! ギルドからも報酬は弾みますよ!」


 行動を共にする仲間を募ってくれた。

 それでも依頼料が足りないのか、それとも行方不明なんてものを受けるつもりがないのか、ほとんどの人は興味を持ってくれない。

 その中でたった二人、


「リーズが依頼を受けるわ!」


「カリンもお手伝いします!」


 二人の少女が私に声をかけてくれたの。

 一人目のリーズ・ストライプと名乗り、自分の背丈よりも長い槍を持つ赤髪の少女だ。

 胸には皮の鎧、前に出て戦うのが得意な感じだろう。

 耳が長く、クリッとした目で私を見ている。

 これはエルフという種族かな?

 すごく正義感が強そうだ。


 もう一人は桃色の髪の少女カリン・ストライプ。手には杖、恰好は軽装。

 こちらは少し気が弱そうな感じで魔法とかを使ったりするのかも。

 お勉強はしたけど、見るのは初めてだからちょっと楽しみだ。

 二人とも顔や名前が似ているから姉妹かなにかなのかも。


「私モモ、こっちは御主人だよ、よろしくね」


(よろしく!)


「カリン、御主人さんが可愛いわ」


「うん、すごく可愛いね」


 御主人が可愛がられている。


「私も撫でて」


 私はちょっと羨ましくなって頭を差し出しすと、


「え、いいけど」


「お姉ちゃんも可愛いね」


 二人とも私の頭を撫でてくれたの。

 うん、いい子達だね。


(えっと、モモ、こんなことしている場合じゃないよね)


「はっ、そうだった。アリアを捜さないと!」


「捜すのはいいけれど、私達はアリアって人を知らないわ。モモさん、その人の特徴を教えて。カリンが魔法で探知してくれるかもしれないわ」


「うん、いいよ! アリアはこのぐらいの大きさで、こーんな金髪で――」


 私はアリアが人間の女の子で長い金髪の青目で背の高さや怒りっぽいことを身振りと手ぶりで二人に伝えた。


「金髪で青目で怒りっぽい人、それだけだと情報が足りないよ。この町の中でも何万人も該当しちゃうし。お姉ちゃん、他に特徴はないの?」


「うーん、ない!」


「そう、じゃあ情報で検索をかけてみます。少し待っていてください」


 カリンは杖を天井に掲げている。


「カリン・ストライプがこの地に住む精霊に尋ねる。我の求めし者を陣の中に示せ。マジックサーチ!」


 魔法の力でギルドの天井に町の図形が光りの線で浮かび上がったの。

 その中に黄色い光が灯っていくよ。

 あの地図上の物だけでも百以上は絶対ある。

 たぶんこの光が同じ特徴を持っている人なのかも。


「流石カリンね、完璧だわ」


「モモさん、あの黄色い光がアリアさんの特徴と同じ人がいる場所です。私が念話で指示します、皆さんは手分けしてください」


 カリンはその光を指さしている。


「うん、私捜す!」


 私とリーズは手分けをし、


(モモさん、その建物です)


 カリンの声でその場所へ。

 ここは大きな店で、多くの人が出入りするようなところなの。


「カリン、ここじゃないよ」


 でも中を見ずに別の場所へ移動したの。

 人の気配を感じられるからアリアが居ないということを分かっているからだよ。


(もう良いんですか?)


(え、モモ、まだ中を見てないんだけど)


「御主人、カリン、私、アリアが居ないの分かるから」


(そうなの? まあそうかもしれないね。元猫だもんね)


「御主人は分からないの?」


(うん、全然分かんない)


「そっかー!」


(えっと、次の場所をお伝えしていいんですよね?)


「大丈夫だよ」


(ではそこから東方向に――)


「はーい!」


 私は御主人と一緒に一つ二つと捜し続け、


「あ、ここにアリアがいる!」


 私達はついにその場所を見つけ出したの。

 そこは野良猫がたむろしている様な路地裏。

 マナーにうるさいアリアが訪れそうもない小さな小屋だ。

 他にも気配が多数ある。


 もしかして遊んでいるのではないかと、ちょっと聞き耳を立ててみたよ。

 でもアリアの声は聞こえてこない。

 その代わり複数の男の声が聞こえてきたんだ。


「それにしても上手く行ったぜ、この貴族様を売り飛ばすなりすれば俺達は大金持ちだ」


「そうですね親分、でもその前に頂いちまうのもありなんじゃないですか?」


「そりゃあいいアイディアだ。ぱっと見わかりゃしねぇしな」


「バカ野郎お前等、俺はガキなんて興味ねぇぜ。もうちょっとこうボンと出ていた方が好みなんだよ」


「でも親分、俺我慢できませんぜ」


「お、俺も!」


「じゃあ勝手にしとけよ」


「やったー!」


「流石親分だ!」


 何だか背中がゾワっとして直ぐに入らなければ行けないようなそんな感覚が奔る。


(不味い、アリアを助けなきゃ! 直ぐ行こうモモ!)


「うん!」


 私は直ぐに小屋の扉を開いた。

 その音に反応して振り向くアリア以外の男三人。

 大柄で一番偉そうにしている毛がない奴、細身で眼帯をしている奴、小柄で尖った髪の毛の奴。


「ああん、何だお前。俺らに何か用事かよ!」


「親分、こいつ珍しい姿の獣人ですよ。高く売れるかもしれませんぜ」


「それは良いかもしれねぇな。こいつのついでに売っぱらっちまおうか。それに俺はこいつの方が好みだぜ」


 そいつ等は懐からナイフを取り出し私に向けた。

 アリアは……その三人の下に転がっている。

 その瞳には悔しく悲しい涙が見える。


(こんなの酷い、許せないよ!)


 アリアは私にとって天敵のような存在だけど、でも、それでも私のために行動してくれた恩人だ。

 そんな彼女に酷いことをする奴を許して良い訳がない。

 体毛が逆立つような怒りが……湧き上がる!


「シャアアアアア!」


「そんな怖い顔をしても怖くねーんだよ! おい、お前ら、やっちまえ!」


『へい親分!』


 二人の男が私の前に立ちはだかった。

 手にあるナイフ、私より大きな体、だというのに恐怖心も強敵感も感じない。


(モモ、憎いのは分かるけど殺したらダメだよ!)


 私は御主人の声を無視するように踏み出した。

 両手にはあんなナイフよりも鋭い爪が飛びだしている。

 あの緑色の虫のように切り裂いて……。


(モモ!)


 ダメだ、恩人で転生してまで着いて来てくれた御主人の言葉は聞かないと!


「……蹴り飛ばすよー!」


 私は相手の攻撃を掠りもせず二人の男を蹴り飛ばした。


「ぐはあああ!?」


「ぎゃああああ!?」


 小屋の壁を軽く突き破るぐらいの威力。

 二人の男はそのまま倒れて動かなくなっている。

 残りは一人。

 こいつも倒す!


「待て、動くな! こいつが死ぬぞ!」


 でも私が動く前に、その男はアリアの首筋にナイフの刃を触れさせた。……これは困った。どうすればいいのか分からないよ。


(大丈夫、猫の僕なら警戒されていないから、後ろから引っ掻いてやる。モモはその隙にこいつを倒して)


 御主人は男の後ろから迫っている。


「御主人頑張って!」


 そしてピョ―ンと飛び跳ね、男の頭の上から襲撃したんだ。


「ハァ、何云って……いてえええ!?」


 毛の無い部分にダイレクトに鋭い爪が。

 突然の痛みにアリアの首からナイフが離れた。

 今が飛びだすチャンス!


「にゃあああああ!」


 私は一気に詰め寄り超必殺の猫パンチを放つ。


「ぶはああああ!?」


 見た目以上に早く、予備動作さえない体重の乗った重い一撃は、人さらいの顔面に直撃し、白目をむかせて気を失わせたよ。

 私はそんな奴なんて放っておいて直ぐにアリアの下へ行ったんだ。


「アリア、大丈夫か?」


 縛ってある縄を爪で切り裂き自由にさせると私の胸に飛び込んできた。

 まだ恐怖で涙が止まらず体が震え続けているよ。


「よしよし」


 私はアリアの頭を優しく撫でてやったの。


「カリン、アリアを見つけたよ、手伝ってくれてありがとう!」


(そうですか、それはよかったです。リーズにはこちらから連絡を……)


(モモ、危ない!)


 でも、そんな時に御主人の注意が飛ぶ。

 突然現れた殺意の銀。


「死ねえええ!」


 それは先ほど倒したはずの男から投げられた物だった。

 だけど、いきなりすぎて避けきれない!

 なるべくダメージがないように体を動かすけれど、


「てえええい!」


 別方向から何かが飛び、目の前でギンと火花が弾けた。

 来るはずだったナイフは空中に弾け飛び回転して地面に刺さったよ。


「はぁ、間に合ったわね」


 やったのは小屋の入り口に立っているリーズ。

 長い槍を投げて私を助けてくれたの。


「リーズ、ありがとう!」


「どういたしまして」


「じゃあ私あの人にお仕置きしてくる!」


 私はナイフを投げた男に指をさす。


(モモ、手加減は……まあある程度でいいかな)


「うん、ある程度にするー!」


 そして一気に男の腹の上に飛び乗った。

 さてどう料理してやろう。


「待て、さっきのはほんの冗談、冗談だったんだ! もう反省している。武器だってない。許してください!」


 自分の運命を悟って許しを乞うているけど、


「だめー!」


 全然許せないので御主人に止められるまでパンチを撃ち続けた。

 終わった後、三人とも謝り倒していたから二度と悪いことはしないと思う。

 ……もしもやった場合は、今度こそ本気でやっつけてやろうかな。

家猫のモモ

御主人ごしゅじん(ヒロ)

王子シャーン

シャーンのお母さんテルナ

グリフ・リスマイヤー

青鎧のブルース・グライブス

教育係アリア・ファイリーズ

赤髪の槍使い、リーズ・ストライプ(エルフ)

桃髪の魔術師、カリン・ストライプ(エルフ)


剣と魔法の世界 ミドレイス

翼の生えた子供 ウリエリア

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