兄妹の絆
アリアに勉強を教えてもらっていると、茶色い髪の女の子が部屋に現れた。
その子はイブレーテという名前でこの国の王女様(長女)らしい。
なんかシャーンやルシフェリアと仲がいいのが不服みたいだ。
私に決闘を申し込むけど、王女様を倒したら不味いと御主人に止められてしまった。
じゃあシャーン達のお母さんに相談しに行こうと部屋に向かう。
そして事情を説明すると、私とイブレーテは一週間同居生活をすることになった。
「もう気力もありませんようですし、今日はここまでにしておきましょうか。私は少し用事がありますのでまた明日来させていただきますわ。ではごきげんよう」
アリアが部屋から去り、私とイブレーテがちょっとへばっていると、
「モモお姉ちゃん、遊びに来たよ」
「モモ、勉強は終わったかしら? あら、ダウン中かしら」
シャーンとルシフェリアが私の部屋にやってきた。
(二人ともいらっしゃい)
「シャーン、ルシフェリア、こんにちは!」
私は気を取り直して挨拶した。
「シャーン、ルシフェリア、お姉ちゃんはここだよ! さあ胸に飛び込んでおいで!」
イブレーテも二人の姿を見て元気を取り戻したみたい。
「あ、イブお姉ちゃんも居るんだね。僕達モモお姉ちゃんと遊びに来たんだ」
「イブお姉様、遠征でお疲れでしょ。お部屋でお休みになったら?」
手を広げたイブレーテをスルーして私の下にやってくる。
もうちょっと休んでいたいけれど、折角二人が来てくれたんだから体を動かすのもいいかなー。
「そうだ、イブレーテも一緒に遊ぼうよー」
イブレーテにも声をかけてみるんだけれど、
「……やはりお前は私の敵だ! 二人とも絶対に渡さん!」
シャーンとルシフェリアを両手で抱きしめて遠ざけてしまった。
「えー!」
困った、これじゃあ遊べないよ。
「もう、お姉様ったら寂しがりやね。そんなこと云わないで一緒に遊べばいいでしょ」
「だよね」
ルシフェリアとシャーンのキラキラした瞳に見つめられて、
「……う、うん、そうした方がいいかもな。おい貴様、今回だけは一緒に遊んでやる!」
イブレーテは直ぐに気持ちを変えた感じだ。
「じゃあ遊ぼうねー!」
ちょっと意地悪だったけど、これからはお友達になってくれるかな?
「それじゃあ何して遊ぼうか?」
「そうね、かくれんぼなんてどうかしら」
「うん、僕もそれで良いと思うよ。それじゃあイブお姉ちゃん鬼をやってね」
「範囲はお城の中全部ね。お姉様、私達を見つけられるかしら?」
「……いや、それはいくらなんでも広すぎないか? もうちょっと範囲を狭めないと見つけられないような……」
イブレーテはかなり難しい条件を突きつけられてちょっと困り顔。
「じゃあ私がやってあげてもいいよー」
「そっか、イブお姉ちゃんができないならモモお姉ちゃんにやってもらおうよ」
「仕方ないわね」
「待て待て待て、誰もやらないとは言っていないぞ! いいだろう、例えどれぐらいの広さであろうと、お前達二人ぐらいすぐに見つけ出してやるさ」
「見つけるのは三人だよ?」
「ええ、見つけられ無きゃお姉様の負けよ」
「……分かっている!」
「それじゃあ十分後にスタート」
「え、十分もか!?」
更に時間もすっごく長いみたい。
それだけ時間があったらどこでも隠れ放題だ。
「行こう、モモお姉ちゃん」
「イブレーテ、御主人に手伝ってもらってもいいからね!」
(行ってらっしゃーい)
私はシャーンとルシフェリアに手を引かれて部屋を出て行った。
イブレーテの気配は部屋の中に残っている。
ちゃんとルールを守ってくれているみたい。
「シャーン、ルシフェリア、何処に隠れようか?」
私は歩きながら意見を聞いてみた。
「その前に、モモお姉ちゃんにお話しがあるんだ」
「ええ、イブお姉様と私達のこと」
二人は真面目な顔をしている。
たぶん聞いとかないといけない話だ。
「なにー?」
「じつはお母さんに二人を仲良くさせてほしいって頼まれていたんだ。二人とも仲が悪いのかなって思ったけれど、イブお姉ちゃんが突っかかってただけみたいで安心したよ。でも喧嘩しているうち嫌いになっちゃうかもしれないから、モモお姉ちゃんにもちょっとだけ事情を説明しようかなって思ったんだ」
「ええ、私達の過去を」
「うん、教えてー」
「あのね、僕達兄妹は本当は兄妹じゃないんだ。小さい頃に本当の親に売られてね、人買いのおじさんに酷いことされて、その時にイブお姉ちゃんがずっと慰めてくれてたんだ。これからは僕達七人本当の家族になって、幸せになろうねってずっとね」
「ええ、あの時は本当に地獄だった。何日も、何日も、死にそうなこともあった。でも、イブ姉様がずっと助けてくれて、代わりに痛いことをされたりしてたの。必ずいい日が来るって待ち続けて、そしたらお父さんが助け出してくれた」
「うん、メギドお父さんがね。僕達のお父さんになってくれた人だよ。それから僕達は本当の家族になったんだ。今はすっごく幸せだよ」
「でもイブ姉様は、あの時から完全に抜け出せていないの。私達が一人でも居なくなるのがすごく怖いんだと思う」
「だからね、モモお姉ちゃん」
「モモ」
二人は私の前で立ち止まって、
『イブお姉ちゃん(姉様)を嫌わないでね』
すごく、すごく真剣な目で訴えてくる。
こっちも真剣に応えよう。
「大丈夫だよー! 私、イブレーテと仲良くなりたいもん!」
私は二人に想いを伝えた。
「よかった、じゃあそろそろ隠れようか」
「そうね、じゃあここからは別行動よ。モモ、遊びは遊び、絶対捕まっちゃダメだからね」
「うん、捕まらないよー!」
「でもあんまり遠くに行くとイブお姉ちゃんがどうにもならなくなっちゃうから。モモの部屋の近くだけにしようか」
「ええ、そうしましょう」
私達三人は別々の方向へ走り出した。
イブレーテの意表を突くにはやっぱり部屋のまん前。
廊下の高い天井近くに張り付いてよう。
ここなら絶対みつからないよ!
そんな感じで自信満々だったんだけど、
(あ、あそこにモモが居るよ!)
時間が経って部屋から出て来た御主人に見つかってしまった。
私はシーっと指でやったんだけど、鳴きやんではくれないみたい。
御主人、活躍しすぎだよー!
「なんだ、うるさいな。もしかして餌でも欲しいのか?」
(ちがうって、あそこにモモが居るんだよ!)
「ちょっと待ってろ、部屋に何かないか探してやる」
御主人の言葉が分からないからイブレーテは勘違いして部屋に戻っていく。
食べられるご飯を探すみたい。
御主人に優しくしてくれるからやっぱり良い子だね。
このまま出てくるのをちょっとだけ待っていると、
「こんなものしか無かったけど、食べるのかこれ?」
お菓子を手持ったイブレーテが出て来たみたい。
でもそれは私の、私が大事にとっておいたやつ!
サクサククッキー!
「ほら、食べてみろ。美味いかもしれないぞ」
確かにそれは御主人でも食べられるかもしれない。
でもそれは私のだから!
「食べちゃダメー!」
私はとっさに飛びおりてしまった。
「見つけたぞ愚か者め、この勝負は私の勝ちだ!」
「あー、負けちゃったよー。御主人の意地悪」
私はクッキーを御主人に一枚だけあげると、全部お腹の中にしまいこんだ。
うん、ちゃんと美味しかったよ。
(いやいや、僕のせいじゃないからね。モモのって知ってたから食べる気なかったし)
「何を言い合ってるのかは知らんが、負けたお前は拘束させてもらう! さあ手を出してもらおうか!」
「お前じゃないよ、モモだよー。イブレーテ、名前で呼んで」
「そうかモモ、良いから手を出せ!」
私の手はガッチガチに縛られてしまった。
このまま連れて歩かれるみたい。
「さて、急いで二人を見つけないと寂しがらせてしまうかもしれない。おいモモ、居場所を知っているのなら吐け!」
「えー、言っちゃったら面白くないよー。これは遊びなんだからー」
「……確かに、城の中は安全だ。やはり自分で捜し出す!」
「御主人も忘れないでー」
「一応連れて来てはいるが、こんな猫が何の役に立つというのだ。こんなのはただ可愛いだけではないか!」
イブレーテは御主人の頭を撫でたりして嬉しそう。
「御主人はすごいんだよ。二人の居る場所も分かっちゃうんだから!」
(え、いやまあ何となくは分かるような気がするけど。何となくだよ?)
「御主人、見つけてきてー!」
(うーん、じゃあ試してみるよ)
「バカめ、そんなので見つかる訳がないだろう」
「いいから行こう!」
私はイブレーテの手を強引に引っ張った。
「もし違っていたら二人を待たせてしまうことになる。見つけられなかった時はお前に責任をとってもらうからな!」
「大丈夫だよー!」
(ああ、プレッシャーが)
「御主人、がんばって!」
(間違っても怒らないでね?)
っと、御主人が歩き出した後ろを私とイブレーテが歩いて行く。
(ここ……かなぁ?)
到着したのは私の部屋から三つぐらい隣の部屋だ。
ちゃんとシャーンとルシフェリアの気配もする。
結局同じ場所になっちゃったのかも?
「じゃあ入ろう!」
ガチャッと扉を開けると椅子の下に寝ころんでいた二人を見つけたのだった。
意外と丸見えだったのは難易度を下げてくれたのかな?
家猫のモモ
御主人(ヒロ)
王子シャーン
シャーンのお母さんテルナ
爺
青鎧のブルース・グライブス
教育係アリア・ファイリーズ
赤髪の槍使い、リーズ・ストライプ(エルフ)
桃髪の魔術師、カリン・ストライプ(エルフ)
ルーカ(孤児)
プラム・オデッセイ(ブルースに頼まれて特訓中)
ジャック・スロー (天狼ジャックスロー隊長、白い狼男)
クロノ・アークス (シャーンとルシフェリアのお友達)
シャルネリア・シャルル・シャリアット(同上)
剣と魔法の世界 ミドレイス
翼の生えた子供 ウリエリア




