ウィーディアに帰るんだよ
クロはハッタリを利かせてアインハルトを追い詰める。
このまま言い逃れを続けるのかと思われたけど、アインハルトの別人格が心の中から現れた。
そいつはドッペルと名乗り、時間を遅らせる魔法を使ったんだ。
クロ達を傷つけようとするから私は宿から飛びだし攻撃を防ぐ。
そのまま対決することになったけど、キャットスレイヴは役立たずだ。
卑怯な手を使って仲間達を巻き込もうとする態度に私の野生が解放される。
ぜーったい許さないって一気に倒したんだ。
そして無事に助かった皆と一緒に火を消すのを手伝った。
戦いを終えてしばらく経つ。
取り調べによりアインハルトは、誘拐された子供達が競売にかけられたことを自白した。
買った人物リストは今も屋敷にあるということなので、クロの部下達が早速向かったんだ。
あとはそれを見て子供達の行方を捜して、酷いことをした人達に不幸を味わわせるんだそうだよ。
でも私達はもう帰らなきゃいけないから、後はこの国の人達が頑張るって。
それから、ノラの親の事件のことは改めて調べ直すって聞いたよ。
ノラは何も云わなかったけれど、きっと感謝しているんじゃないかな。
「モモ、帰る準備はできたかしら」
「ここに置き去りにしたらもう回収できませんからね。最後まで確認を怠らない方が良いですよ。御主人さんなんて小さいですから、気が付いたら居なかったなんてことも……」
(ひぃぃ、それはありそうで怖い)
「大丈夫だよ、私御主人を抱っこして行くもん!」
私は心配する御主人をギュッと抱きしめ頬ずりした。
今日はウィーディアに帰る日。
丁度荷物の整理をしているところだよ。
(嬉しいけど、両手を使ったら帰り支度ができないよ?)
「あ、そっか!」
「まあ三人も居るんだから忘れないわよね。じゃあ早くやっちゃいましょ。グリフ様達も待っているわよ」
「そうですね」
「はーい!」
私達は大きなカバンに服や下着やお土産と食料とかすごくいっぱい詰め込んだ。
ちょっと入らなかった物は食べてしまえば大丈夫。
お腹もいっぱいになって皆で集合場所に向かったの。
もちろん御主人も忘れたりしないよ。
「グリフ、来たよー!」
(グリフさん、お待たせ)
「ちょっと時間がかかっちゃったわ」
「何故かご飯を食べることになりましたからね」
私達はお城の前で待っていたグリフ達に手を振った。
「ふむ、こちらの準備は整っていますぞ。ではレオ様に挨拶をして帰るといたしますか」
「うん、そうするねー!」
お城の入り口に向かおうとしたけど、
「いえ、それには及びませんニャァ。皆様の活躍に心を打たれたということでこの場にお出でになりますニャァ」
クロが私を引き止めた。
じゃあ動かなくてもいいみたい。
「王自らがお出でになるとは光栄なことです。これは身を正してお待ちしなければなりませんな。皆の者、隊列を正すのだ!」
ちょっとだけ気を抜いていた皆もグリフの一言でピシッと背筋を伸ばしている。
リーズとカリンも同じようにしているから私も同じように待ってみた。
するとお城の入り口に前にキャットパラダイスの兵士が左右に並び、中央から神輿のような物に乗ったレオがこちらに向かってくる。
「待たせニャンス。皆この国の為に働いてくれてありがとうニャンス。感謝するニャンス。気を付けて帰るニャンス」
「ハッ、お心遣い感謝いたします。レオ様もお元気で」
と、グリフとレオのやり取りが続く。
形式的なものとか色々あるんだって。
五分、十分と待ってちょっと立ってるのも辛くなってきた。
座ろうかなと思っていると、丁度話が終わったみたい。
そして今度はこちらを向いた。
「さて勇者様、本当にありがとうでニャンス。これで子供達も助けられそうでニャンス」
「うん、がんばってね!」
(こらモモ、王様に向かって失礼な態度はダメだって)
「いやいや、その態度も今や心地よく感じるニャンス。もう無礼講で良いニャンス。そちらの子もありがとでニャンス」
(あ、僕の言葉が分かるんですね。そういえばそんな話を聞いたような)
「うむうむ、王の血筋はそんな能力が備わっているでニャンス。だから勇者様はニャーの遠い親戚かもしれないニャンス。この国は勇者様の故郷として何時でも帰って来ていいでニャンス!」
「うん、またね!」
私は手を振って挨拶した。
「レオ様、名残惜しいですがそろそろ失礼させていただきます」
「うむ、気を付けて帰るニャンス」
グリフはレオに頭を下げ、
「では出立するぞ、全軍進め!」
隊列の先頭が進み始めて、私の乗った馬車もゆっくりと移動を開始した。
町中ではいっぱいの人達に見送られ、
「勇者様、また来てニャウ! ほら、ノラも挨拶するニャウ!」
「おいお前、この礼は必ずしてニャるからな! 絶対覚えていろよ!」
「それじゃあ捨て台詞みたいニャウ、もうちょっとちゃんとしたのを云うニャウ!」
「ああもううるさいニャ、俺には俺のやり方があるんだ!」
途中にはこの町で知り合ったベルやノラにも会ったんだ。
「うん、またねー!」
私はみーんなに手を振ってまた旅が始まったんだよ。
帰るのもすっごく長くなりそうだし、また馬車の中でゆっくり睡眠を楽しもうかな。
でも、何か忘れている気がする?
……あー、匂い石を宿に忘れて来ちゃった!
バイバイしてきたけど、もう一回戻れないかな!?
★
ながーい旅もようやく終わり、私達はウィーディアに戻って来た。
パレードして城に向かい、お城の庭で。
「モモお姉ちゃん、御主人さん、お帰り!」
「おかえりなさいモモ、御主人も、無事に戻ってこれて安心した」
私はすっごい笑顔で走ってくるシャーンとルシフェリア、
「モモさん、御主人さん、お帰りなさい」
それからちょっと泣きそうになっているアリアにギュッとお帰りのハグをされたんだ。
「ただいまー!」
(皆、ただいま!)
私と御主人も、お返しにギュッと抱きしめてあげたよ。
「じゃ、無事に依頼は終了ね。私とカリンはギルドに報告しに行くわ。じゃあまたね、モモ」
「モモさん、またです」
リーズとカリンは仕事を終えたから帰ってしまうみたい。
「リーズ、カリン、またねー!」
「ええ、また一緒に仕事しましょう」
「またの依頼をお待ちしてます!」
別れの挨拶を告げると手を振って去って行く。
「残念ですわ、あの方達ともお友達になれましたらよろしいのに」
「あ、僕もお友達になりたい!」
「じゃあ私も」
三人ともリーズとカリンに興味があるみたい。
「じゃあ今度会ったら一緒に遊ぼうって伝えておくよー!」
私は声をかけることを約束した。
「ええ、是非そうしてくださいませ。それはそれとして、モモさん、旅の間お勉強はしていましたよね?」
「え、してないよー?」
「……ということは一か月間も遊んでいたと?」
笑っているアリアの顔が若干怖くなっていく。
ちょっとだけ逃げたくなった。
「私ね、旅の間に色々やってたんだよー! えっとね、誘拐犯と戦ったり、んとね、色々やったんだよー!」
「ええ、そのお話しは聞かせていただきましょう。ええ、色々とね。ではお部屋に行きましょうモモさん」
アリアは私の手をガシッと掴む。
「あれー? あれー?」
(うーん、ご愁傷様?)
「あ、僕も行くよ!」
「シャーン、大事なお勉強なんだから邪魔しちゃダメ」
と、シャーンとルシフェリアにも助けられず、私はアリアに手を引っ張られて自分の部屋に向かったのだった。
色々説明してわかってもらえたけれど、やっぱりお勉強しなきゃダメだって三時間みっちり特訓されたんだ。
旅よりもこっちの方が疲れたよー。
「さてモモさん、今までの復習も終わりましたから今後は新たなる課題を……」
そしてまた新しい試練が提示されようとしていたのだけれど、
「ここがモモとやらの部屋か! 愛する妹や弟をたぶらかす悪女め、成敗してくれる!」
突然部屋の扉が開けられて女の子が侵入してきた。
シャーンよりは背が高くて少しだけ年上なのかなぁ?
金というよりは茶に近い感じの長い髪の子だ。
よく分からないけど、すごく怒っているみたい。
「イブレーテ様!?」
「えー、誰?」
(モモ、この国の王女様だよ。一番上のさ。ほら、前にアリアに教えてもらったりしたでしょ)
「そうだっけ?」
うーん、全然覚えてない。
本当に教えてもらえてたんだっけ?
思い出せないなー。
「えっと、イブレーテ様、昨日遠征より御帰還されてゆっくりされるとおっしゃられていたのに、何故ここにいらしたのでしょうか?」
「だから言っているだろうが、私の可愛いシャーンとルシフェリアに手を出したと聞いたぞ! あんなに小さくて可愛い子に手を出すなんて、絶対に許さああああん!」
そのイブレーテという王女様は、私の鼻先にビシっと指先をつきつけた。
お勉強で疲れているのに、もう全然訳が分からないよー。
家猫のモモ
御主人(ヒロ)
王子シャーン
シャーンのお母さんテルナ
爺
青鎧のブルース・グライブス
教育係アリア・ファイリーズ
赤髪の槍使い、リーズ・ストライプ(エルフ)
桃髪の魔術師、カリン・ストライプ(エルフ)
ルーカ(孤児)
プラム・オデッセイ(ブルースに頼まれて特訓中)
ジャック・スロー (天狼ジャックスロー隊長、白い狼男)
クロノ・アークス (シャーンとルシフェリアのお友達)
シャルネリア・シャルル・シャリアット(同上)
剣と魔法の世界 ミドレイス
翼の生えた子供 ウリエリア




